5Gミリ波ビームフォーミングと電波干渉対策(月刊EMC)

2019.11.20 更新
5Gミリ波ビームフォーミングと電波干渉対策(月刊EMC)

【5G ミリ波のユースケースの例】

 移動通信はほぼ10 年周期で世代を進化させており、1980 年代のアナログの第1 世代から始まり、世代を重ね、第5 世代(5G)のサービスが目前に迫っている。5G は第4 世代のサービスに対して10 倍以上の大容量・高速伝送に対応すると共に、低遅延、多接続と様々な要件の通信に対応する。5G では3.7GHz / 4.5GHz のサブ6GHz 帯と、28GHz のミリ波に近い周波数の利用が計画され、特にミリ波は広い周波数帯域を利用することができ、大容量・高速通信に適している。

 ミリ波は電波の減衰が大きく、かつ障害物により電波が遮断されやすい性質を持つ。ミリ波の減衰を補償するために、ビームフォーミングという電波を所望の方向に集中させて減衰をカバーする技術が使われる。ビームフォーミングでは、一般にアレイアンテナという多数のアンテナ素子からなるアンテナで、各アンテナ素子の位相を制御して適応的に所望の方向に電波を集中させてビームを生成する。また、障害物による電波の遮断を回避するため、基地局アンテナを小型・低消費電力化して、見通しが確保できる位置に多数設置することが考えられる。

 5G の要件の1 つである10Gbps の高速・大容量伝送を実現するために、ミリ波による広帯域化に加えて、複数のビームで同時に通信するビーム分割多重という技術が使われる。また、5G ミリ波のユースケースの1つとして、図のように人が多数集まるスタジアムや、繁華街、イベント会場など、これまで容量不足で通信の遅延や接続不良が発生していた環境で快適な通信環境を提供するシーンがあげられる。こうした多数の人がいる状況で快適な通信を提供することを目指して、ビーム分割多重を小型低消費電力で行う技術を開発している。

 本稿では、ミリ波のビーム分割多重方式を簡単に述べ、我々が開発した独自のビーム分割多重技術を説明する。更に、ビーム分割多重を行う際に、伝送速度低下の原因となるビーム間干渉を低減する高精度なビーム生成の方法について述べる。

ミリ波ビーム分割多重

 ミリ波では、電波の減衰を補償するためビームフォーミングが使われる。5G の基地局では図に示すように64 ~ 256 程度の多数のアンテナ素子のアレイアンテナを使い、ビームフォーミングを行うことが想定される。更に10Gbps 以上のセルスループットを目指して、ビームを多重するビーム分割多重が行われる。

 ビーム分割多重には、デジタルで複数のビームを生成するデジタル方式、アナログとデジタルのハイブリッドでビームを生成するハイブリッド方式がある。

続きは『月刊EMC No.379』にて


【月刊EMC No.379 目次情報】

<新製品とEMC>
・プレシジョンパワーアナライザ「WT5000」
 (横河計測(株))
・IEC 61326-1:
 計測・制御および試験室で使用する電気装置ー電磁両立性(EMC)要求事項 第1部 一般要求事項
 ((前)拓殖大学 谷由紀夫)
・IEC 61326-2-1 Ed2:
 計測・制御及び試験室用の電気装置
 ー電磁両立性(EMC)要求ー
 Part 2-1:個別要求ーEMC防護が施されていない感受性の高い試験及び測定装置の試験配置、動作条件及び性能評価基準
 (三菱電機(株) 中野康嗣)

<特集>
◇IoT時代の無線システムのEMC問題と対策
・無線システムのEMC問題の実際
 (NTT 東日本 伊藤秀紀)
・IoT時代の無線環境構築のための周波数選択板(FSS)の設計法と使用法
 (NTT ネットワーク基盤技術研究所 鳥海陽平、伊丹豪、加藤潤)

<Technology>
・携帯電話端末近傍の電力密度評価法に関する標準化動向
 ((株)NTT ドコモ 大西輝夫、(国研)情報通信研究機構 佐々木謙介)
・5Gミリ波ビームフォーミングと電波干渉対策
 ((株)富士通研究所 清水昌彦)
・超伝導マイクロ波回路の高感度かつ低暗計数(低ノイズ)な光子検出への応用
 (東京大学 河野信吾、中村泰信)
・電界結合非接触給電技術を用いた搬送系とEMC
 ((株)ExH 原川健一)

<New&Now 規格・規制情報>
・無線設備の基準認証制度について
 ((一財)テレコムエンジニアリングセンター)
・CISPR 35の適用範囲、イミュニティ要求事項及び一般性能判定基準
 (電気通信大学産学官連携センター 雨宮不二雄)

<実践講座>
・IEC 62153-4シリーズ概要解説⑧
 「アナログ/デジタル通信システム接続機器のEMC特性試験方法」概要解説
 ((株)フジクラ・ダイヤケーブル 小川幸三)
・熱設計技術⑤
 第5章 熱回路網法による熱解析手法
 ー新人社員や初心者のための機器の熱設計対策に関する教育的な講義
 (富山県立大学 石塚勝)

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