EV/PHEV用ワイヤレス給電のためのEMC 対策(月刊EMC)

2019.11.27 更新
EV/PHEV用ワイヤレス給電のためのEMC 対策(月刊EMC)

【4回路系】

 非接触給電技術は、充電ケーブルの着脱作業を不要にすることから利便性が高く、産業⊘ 民生機器への応用が期待されている。携帯電話やスマートフォン等への小容量充電では、15W 以下において既にQi規格が整備され、実用化が進んでいる。電気自動車(Electric Vehicle; EV)やプラグインハイブリッド車(Plug-in Hybrid Vehicle; PHV)等への大容量充電では、3 ~ 11kW 級の製品開発とともに国際標準化に向けた取り組みが国内外で精力的に進められている。近年では、充電インフラ側の一般要件について記述したIEC 61980-1 が2015 年7 月に発行されており、国内電波法関連についても、非接触給電のEMC 許容値に係わる省令改正が2016 年3 月に行われたところである。

 改正された電波法施行規則では、79 ~ 90kHz をEV 用非接触給電の利用周波数帯として認める一方、利用周波数で発生する磁界ノイズに加え、その高調波成分についても許容値を定めている。特に第5高調波までの成分に関しては、CISPR11 におけるクラスB の許容値に対して10dB の緩和を設けており、大出力化に向け磁界ノイズ低減のためのさらなる技術革新が望まれている。高調波成分の低減手段として、ローパスフィルタの挿入が考えられる。しかしながら、kHz 帯のローパスフィルタはサイズや重量が大きく、コストや実装において困難を伴う。一方、環境省の委託事業「平成26 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」では、中型EV バスへの給電のため送電電力22kW のコイル2 枚を駐車スペースへ埋設し、互いに逆相となる送電を行うことで10m 遠方での磁界ノイズを許容値以下に抑えた。しかしながら、コイルの非対称な設置は実装上の制約が大きくなる。さらに、磁界の位相を能動的に制御するため、少なくとも2 系統のインバータシステムが必要となり、コストアップを招く。

 給電用コイルのコンパクト化・長ギャップ化を目指し、これまで送電側と受電側に2 枚ずつ、計4 枚のコイルを用いた双方向非接触給電方式を提案してきた。ここで、前述のローパスフィルタが送受電コイルの外側に接続されており、これが送受電コイルの内側へ移動してきたと考えると、この4 枚のコイル構造そのものがローパスフィルタとしても機能している可能性がある。そうすると、コンパクトな送受電コイル自身が受動的に高調波磁界の打ち消し合いを行うことから、単一のインバータシステムのみでの漏洩磁界低減が期待される。本報では、この構造において考えられる二通りのコイルの接続方法に対し、1kW 給電時における給電効率が最大となる条件の下で漏洩磁界の評価を行った。

続きは『月刊EMC No.375』にて


【月刊EMC No.375 目次情報】

<新製品とEMC>
・室内用可搬型蓄電システム「POWER YIILE 3(パワーイレ・スリー)」
 (エリーパワー(株))

<特集>
◇静電気放電対策:国際規格動向からESD現象測定、保護デバイス評価、ESD対策まで
・静電気放電試験の国際規格IEC 61000-4-2の問題点と最新改正動向
 ((株)ノイズ研究所 石田武志)
・光電界センサ/光電圧プローブによるESD影響の測定
 ((株)精工技研 大沢隆二)
・ESD/EMC対策部品のTLP試験
 (阪和電子工業(株) 澤田真典)
・ESD対策部品の適用
 (パナソニック(株) 徳永英晃)

<Technology>
・5Gを活用した自動運転の展望とEMC
 (情報通信研究機構(NICT) 石津健太郎、表昌佑、村上誉、児島史秀)
・EV/PHEV用ワイヤレス給電のためのEMC対策
 ((一財)電力中央研究所 名雪琢弥)

<New&Now 規格・規制情報>
・TEM導波管による放射エミッション測定及び放射イミュニティ試験方法等
 (東北学院大学 石上忍)
・静電気イミュニティ試験と輻射ノイズ解析実験
 ((株)東陽テクニカ 秋田大地)

<実践講座>
・事例からひもとくEMC設計・対策そして基礎 ⑦
 EMC標準化の意義を考える
 ((株)ノイズ研究所 石田武志)
・パワーエレクトロニクスとノイズ対策 ⑤
 グラウンドに起因するノイズ、コモンモードチョークコイルほか
 (大島研究所 大島正明)

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