5Gの超多数接続を低遅延で実現する「STABLE」と干渉抑圧・除去技術（月刊EMC）

　IoT 端末（IoT デバイス）の中で大きな比率を占めるスマートフォンやPC の市場が普及率の拡大から成熟に向かう一方で、通信機能の搭載された自動車（コネクテッドカー）や通信機能の搭載された工場オートメーション（FA）機器などの産業機器におけるIoT 化が着実に進んでおり、今後も特に増加が見込まれている。

　現在、IoT デバイスを収容するためのシステムとして、LPWA（Low Power, Wide Area）と呼ばれる「低消費電力」「広域カバレッジ」「低ビットレート」を特徴とする各種無線アクセスシステムが提案され、一部は既にサービスが開始されている。LPWAの免許不要システム（特定小電力無線）の代表例として、SIGFOX, LoRa, Wi-SUN等がある。一方、免許が必要なシステムとして、携帯電話網（LTEAdvanced）の仕様をベースに、LPWA に適する形に規格化したLTE Cat M1 （eMTC : enhanced Machine-Type Communication）や LTE Cat NB1（NB-IoT:Narrow-Band IoT）がある。さらに、現在、3GPP においては、第5 世代移動通信システム（5G）としてLPWA用に対応するため、超多数接続（mMTC : massive MTC）の利用シナリオにおける要求条件（接続端末密度：100 万台/km²等）を満たす仕様を検討中であり、Release 16 （2020 年3 月）で標準化が完了する予定である。

　上で挙げた各無線システムは、いずれもIoT デバイスからの小容量データを基地局で効率よく収容するために、端末の低消費電力化や広域カバレッジを目指して仕様が設計されているが、データ伝送にかかる通信の「遅延」については、ほとんど考慮されていない。例えば、よく知られている5G の主要な3 つの利用シナリオ（①高速・大容量シナリオ、②超高信頼・低遅延シナリオ、③超多数接続シナリオ）に対する要求条件がまとめられている図を見ると、③超多数接続の利用シナリオにおける遅延に対する要求性能は「低」となっている。具体的には、超多数接続の利用シナリオにおける遅延時間の要求条件は10 秒以下となっている。

　しかし、先述のとおり、今後、急増すると考えられるコネクテッドカーや通信機能付FA 機器などの産業機器においては、その制御情報の伝送等、ミリ秒オーダーの低遅延性が求められる場合があると考えられ、超多数接続と低遅延を両立させる無線システムの実現が必要になる。

　この課題を解決するために、国立研究開発法人情報通信研究機構( 以降, NICTとする）では、空間分割や符号分割による多元接続を用いることなく、同一周波数帯において、複数台の端末を同時に、ミリ秒オーダーの低遅延で収容する新たな無線アクセス技術: STABLE（Simultaneous Transmission Access Boosting Low-latEncy） の研究開発を行っている。

続きは『月刊EMC No.376』にて

【月刊EMC No.376 目次情報】

＜特集＞
◇IoTにおけるEMCへの対応と標準化の動き
・IoTにおける無線通信SUNとEMCへの対応
　（（国研）情報通信研究機構 児島史秀）
・車載受信機から学ぶIoTの自家障害への対応
　（（株）デンソー 中村克己）
・IoTで重要な低圧配電線内の両立性レベルに関するIEC動向
　（（一財）電力中央研究所 岡田有功）

＜新製品とEMC＞
・補聴器「リオネットシリーズ」
　（リオン（株））
・補聴器のEMC規格の概要
　（リオン（株） 藤坂洋一）

＜Technology＞
・5Gの超多数接続を低遅延で実現する「STABLE」と干渉抑圧・除去技術
　（（国研）情報通信研究機構 大堂雅之）
・車載部品評価におけるEMC試験のポイント
　（（株）アイピーエス東海 貝山光雄）
・電磁波の波源分布推定法の最新技術
　（東北大学 今野佳祐、陳強）

＜New&Now 規格・規制情報＞
・公衆低圧供給系統における低周波伝導妨害およびシグナリングの両立性レベル
　（中部電力（株） 中地芳紀）
・低圧電気設備―第4-44部：安全保護―妨害電圧及び電磁妨害に対する保護
　（音羽電機工業（株） 酒井志郎）
・台湾におけるEMC規制の現状概要解説
　（（一社）セーフティグローバル推進機構 梶屋俊幸）
・韓国KCマークとKCsマークの概要
　（SGS ジャパン（株） 軽石隆）

＜実践講座＞
・EMC測定・試験のポイント－1.今更、人に聞けないEMC用語解説
　基本・共通用語⑮
　ループアンテナの実際
　（（国研）情報通信研究機構 藤井勝巳）

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