電気的ノイズによる通信装置のソフトエラーと対策(月刊EMC)

2020.1.14 更新
電気的ノイズによる通信装置のソフトエラーと対策(月刊EMC)

【ITU-T ソフトエラー勧告の全体像】

 サービスの多様化、利便性の追求により、現代の社会基盤は、デジタルトランスフォーメーションが進んでいます。社会が便利になる一方で、原因の特定が困難な宇宙現象による電子機器のトラブルであるソフトエラーが増えています。

 ソフトエラーは永久的に半導体デバイスが故障するハードエラーとは異なり、電気的ノイズにより発生する一時的な故障(メモリのビット反転)で、半導体デバイスの再起動やデータの上書きで回復可能な故障です。保存データが書き換わり誤動作やシステムダウンを引き起こす可能性がある一方、再起動・上書きで回復するため事象の再現や原因特定が困難です。発生すると利用者に多大な影響を及ぼす可能性があり、また運用者にも原因究明・対策が大きな負担となる場合があります。通信装置ではこの様な故障も想定しサービスに影響を及ぼさないように設計しますが、ソフトエラーの再現が困難であるため、開発段階での十分な検証が出来ませんでした。

 この様な状況に対応するため、最近、一般企業が保有できる数メートル程度の小型加速器中性子源を用いて通信装置のソフトエラーを再現させ、効率的に通信装置のソフトエラーによる影響を測定することができるようになりました。本試験の実施により開発段階でのソフトエラー対策が可能となり大幅な通信品質の向上が図れますが、その手法・評価の指標となる基準が求められていました。

ITU-T ソフトエラー勧告について

 ソフトエラー対策に関する基準を定めるため、2015年8 月に一般社団法人情報通信技術委員会に通信装置のソフトエラー対策に関する標準化Adhoc(以下、SOET_Adhoc:Soft error testing Adhoc) が開設されました。同年10 月にはITU-T SG5(International Tele communic at ion Union Tele communic at ion Standardization Sector Study Group 5)会合にて通信装置のソフトエラー対策に関する検討プログラムの開始が承認され、SOET_Adhoc 委員により勧告草案の作成を行い、これまでに5つの勧告化が実現しました。

 これらの勧告では、ソフトエラー対策に関する設計方法・試験方法・評価方法及び信頼性要求基準を定義しており、求められる信頼性レベルに応じた対策を可能にする指標が示されています。

K.124(概要編)通信装置の粒子放射線影響の概要

 ソフトエラーの発生メカニズムや影響と対策の概要及び標準化の必要性を記載。ソフトエラーが発生する主な要因には、半導体デバイスに微量に含まれる放射性同位元素から生成される􀁟線と、宇宙線によって生成される中性子線があります。

続きは『月刊EMC No.381』にて


【月刊EMC No.381 目次情報】

<特集>
◇これからのEMC
~総務省、経済産業省、国土交通省を始め協議会、委員会、研究機関、規格関連等49団体が執筆~

<新製品とEMC>
・スマート家電リモコン「RS-WFIREX4」
 (ラトックシステム(株))
・CISPR 32クラスB許容値について
 (NTT ネットワーク基盤技術研究所 秋山佳春)

<Technology>
・サージ防護デバイスによる雷害・サージ対策技術
 ((株)ジョブル 池端義和)
・電気的ノイズによる通信装置のソフトエラーと対策
 (NTT ネットワークサービスシステム研究所 舩津玄太郎、岩下秀徳、松村和之)

<New&Now 規格・規制情報>
・CISPR 35が付則で規定している機能別性能判定基準(付則E及び付則F)
 (電気通信大学産学官連携センター 雨宮不二雄)

<実践講座>
・医療におけるワイヤレスの導入と電磁環境④
 医療におけるこれからの無線通信利用 RFIDの活用とEMC
 (佐賀大学 花田英輔)
・パワーエレクトロニクスとノイズ対策⑦
 配線のインピーダンス、配線長と波長
 (大島研究所 大島正明)
・熱設計技術⑥
 熱輸送デバイスとその応用
 ー新人社員や初心者のための機器の熱設計対策に関する教育的な講義
 (富山県立大学 石塚勝)

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