簡易等価回路モデルを活用した車載用インバータの伝導ノイズ解析と対策設計(月刊EMC)

2020.2.6 更新
簡易等価回路モデルを活用した車載用インバータの伝導ノイズ解析と対策設計(月刊EMC)

車両で電磁ノイズが引き起こす問題の一例


1.はじめに
 近年の車両の電動化に伴い、自動車に搭載される パワーエレクトロニクス機器が増加している。パワーエレクトロニクス機器の半導体スイッチングは 電磁ノイズとなって外部に伝播し、他の機器へ妨害を与えることが知られている。例えば、電磁ノイズがラジオのアンテナや受信機に妨害を与えると、オーディオ機器への雑音重畳やラジオ受信障害などの問題が引き起こされる。そのため、設計段階で電磁ノイズの発生量を予測し、対策設計を実現するためのシミュレーション技術がますます重要になってきている。
 電磁ノイズはケーブルなどを伝搬する伝導ノイズと、空間を不要電磁波として伝搬する放射ノイズに大別され、本報告では伝導ノイズに着目する。パワーエレクトロニクス機器の伝導ノイズシミュレーションには、等価回路による回路解析を用いたもの、電磁界解析を用いたもの、あるいはその両者を組み合わせた事例が複数報告されている。これらの手法は伝導ノイズを高精度に予測できる一方で、等価回路モデルや 3 次元モデルが複雑となり、電磁ノイズの発生メカニズムや伝播経路の解明が困難になる課題があった。本報告では車載用インバータを対象に、構成要素を全て等価回路モデル化した従来の「詳細等価回路モデル」ではなく、解析する周波数範囲を限定することで等価回路を簡略化した「簡易等価回路モデル」を提案する。本モデルを用いて伝導ノイズを電流変動起因と電圧変動起因で発生するものに切り分け、それらを数式化することで発生メカニズムを明らかにし、対策手法を検討する。また、伝導ノイズの実測値と解析値の比較を行い、解析結果の妥当性について検討した結果についても述べる。

2.対象とする車載インバータの構成
 負荷モータに接続された 3 相インバータは、平滑コンデンサを介してケーブルと接続されている。直流電力のプラス側はケーブルと疑似電源回路網:LISN(Line Impedance Stabilization Network)を介してバッテリと接続されており、マイナス側が車両のシャシーに相当する接地電位に接続されている。

続きは『月刊EMC No.382』にて


【月刊EMC No.382 目次情報】

<新製品とEMC>
・チルト機能付き電動ベッドフレーム「GR-01F KN-R」
 (フランスベッド(株))
・電気用品安全法技術基準解釈別表第八の概要解説
 ((一財)電気安全環境研究所(JET) 藤倉秀美)

<特集>
◇「基礎講座 EMC設計と シミュレーション」−電磁界シミュレーションの基礎とその応用−
・イントロダクション−EMC設計の基礎−
 (拓殖大学 名誉教授 澁谷昇)
・電磁界シミュレーションの基礎 Sonnetの使い方
 (群馬大学 菊地秀雄)

<Technology>
・パワエレ機器・電源回路における伝導ノイズシミュレーション技術
 (パナソニック㈱ 嶺岸瞳)
・簡易等価回路モデルを活用した車載用インバータの伝導ノイズ解析と対策設計
 (三菱電機㈱ 片桐高大)

<New&Now 規格・規制情報>
・CISPR 35が付則で規定している機能別性能判定基準(付則G)
 (電気通信大学産学官連携センター(前電波利用環境委員会I 作業班主任) 雨宮不二雄)
・電気溶接装置における電磁界の人体ばく露
 (埼玉大学 山根敏)

<Information>
・四半世紀/25年間のEMC環境フォーラムの開催記念表彰
 設計対策技術部門、規制規格部門、フォーラム最多受講者の3部門表彰
 (EMC 環境フォーラム運営委員会)

<実践講座>
・熱設計技術【最終回】
 ペルチェ素子の応用
 ー新人社員や初心者のための機器の熱設計対策に関する教育的な講義
 (富山県立大学 石塚勝)
・EMC測定・試験のポイント−2.EMC測定・試験は何故必要か
 規制の法的枠組みと動向⑫
 米国におけるEMC規制
 (㈱e・オータマ 田路明)
・電動化とEMC③
 電気自動車における給電技術とEMC
 接触式充電からワイヤレス給電、マイクロ波給電まで−上−
 ((元)京都大学 生存圏研究所 横井 行雄)

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