超伝導マイクロ波回路の高感度かつ低暗計数(低ノイズ)な光子検出への応用(月刊EMC)

2020.2.17 更新
超伝導マイクロ波回路の高感度かつ低暗計数(低ノイズ)な光子検出への応用(月刊EMC)

ジョセフソン接合の模式図

1.量子コンピュータと超伝導とマイクロ波
 近年、既存のコンピュータを凌駕すると期待される量子コンピュータの研究が世界中で急速に進められている。量子コンピュータは、量子力学の持つ並列性をうまく用いることにより、ある特定の問題に必要な処理数を大幅に削減することができる。以下では、既存のコンピュータと対比して、量子コンピュータについて説明する。
 既存のコンピュータでは、電気信号のオンとオフという確定的な2 つの状態に対して「0」と「1」という情報を割り当てて処理する。一つ一つの処理を正確かつ高速に行うことができるため、日常から産業界に至るまでありとあらゆる場面で活用されている基盤技術である。しかし、ますます情報化社会が加速する現代では取り扱う情報量が膨大化し、確定的な情報に対して一つ一つ処理を行うコンピュータでは、大規模な問題を高速に解くことが困難になりつつある。例えば、既存のコンピュータが苦手な問題として素因数分解が挙げられる。素因数分解とは、与えられた自然数を素数の積に分解する問題である。例えば、問題の自然数に対して2で割って3で割って⋮ を繰り返して割り切れる素数を見つけることにより解くことができる。しかし、自然数が大きくなると候補となる素数の数が増大し、計算に時間がかかってしまう。この問題の難しさは、現在のネットワークの安全性を支えるRSA 暗号に応用されている。このような解の候補が膨大にある問題に対して、現状では、コンピュータの数を増やして並列的に処理することにより高速化を行っている。一方、量子コンピュータは、既存のコンピュータと比べて処理速度が速いというわけではなく、量子力学の性質である重ね合わせ状態をうまく用いることにより問題を並列的に処理して、計算に必要な処理数を削減しようとするものである。スーパーコンピュータでは、計算ユニットを増やすことにより並列性を持たせていたが、量子コンピュータでは、計算を担う物理現象そのものに並列性を持たせるという点で大きく異なる。量子コンピュータが素因数分解を飛躍的に高速に解けることが理論的に証明されたことをきっかけに、解の候補が膨大にある問題を解く上で既存のコンピュータに対して優位性があるという点で量子コンピュータは脚光を浴びている。

続きは『月刊EMC No.379』にて


【月刊EMC No.379 目次情報】

<新製品とEMC>
・プレシジョンパワーアナライザ「WT5000」
 (横河計測(株))
・IEC 61326-1:
 計測・制御および試験室で使用する電気装置ー電磁両立性(EMC)要求事項 第1部 一般要求事項
 ((前)拓殖大学 谷由紀夫)
・IEC 61326-2-1 Ed2:
 計測・制御及び試験室用の電気装置
 ー電磁両立性(EMC)要求ー
 Part 2-1:個別要求ーEMC防護が施されていない感受性の高い試験及び測定装置の試験配置、動作条件及び性能評価基準
 (三菱電機(株) 中野康嗣)

<特集>
◇IoT時代の無線システムのEMC問題と対策
・無線システムのEMC問題の実際
 (NTT 東日本 伊藤秀紀)
・IoT時代の無線環境構築のための周波数選択板(FSS)の設計法と使用法
 (NTT ネットワーク基盤技術研究所 鳥海陽平、伊丹豪、加藤潤)

<Technology>
・携帯電話端末近傍の電力密度評価法に関する標準化動向
 ((株)NTT ドコモ 大西輝夫、(国研)情報通信研究機構 佐々木謙介)
・5Gミリ波ビームフォーミングと電波干渉対策
 ((株)富士通研究所 清水昌彦)
・超伝導マイクロ波回路の高感度かつ低暗計数(低ノイズ)な光子検出への応用
 (東京大学 河野信吾、中村泰信)
・電界結合非接触給電技術を用いた搬送系とEMC
 ((株)ExH 原川健一)

<New&Now 規格・規制情報>
・無線設備の基準認証制度について
 ((一財)テレコムエンジニアリングセンター)
・CISPR 35の適用範囲、イミュニティ要求事項及び一般性能判定基準
 (電気通信大学産学官連携センター 雨宮不二雄)

<実践講座>
・IEC 62153-4シリーズ概要解説⑧
 「アナログ/デジタル通信システム接続機器のEMC特性試験方法」概要解説
 ((株)フジクラ・ダイヤケーブル 小川幸三)
・熱設計技術⑤
 第5章 熱回路網法による熱解析手法
 ー新人社員や初心者のための機器の熱設計対策に関する教育的な講義
 (富山県立大学 石塚勝)

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