車載向けオペアンプによるノイズ対策(月刊EMC)

2020.3.12 更新
車載向けオペアンプによるノイズ対策(月刊EMC)

【オペアンプ採用例】

1.自動車とオペアンプのノイズ耐量の関連
 オペアンプはアナログ電子回路を設計する際には必ずと言っていいほど使用される電子部品である。右図に自動車におけるオペアンプ・コンパレータの採用例を示す。自動車の基幹システムである ECUでの採用例として、センサ信号増幅が挙げられる。自動車には、電流 ( 流量 )、位置情報、温度、気圧などの様々な必要情報を検知するために多数のセンサが搭載されている。センサで検知した情報を基に、人間の頭脳にあたる MCU(マイコン)で全体を制御し、最適な駆動を促す。しかしセンサ出力は微弱であるため、オペアンプによりセンサ出力を増幅し、MCUが処理可能な電圧レベルに変換する。その他の使用例としては、モータ制御ユニット等で使用される、オペアンプと抵抗を組み合わせた電流検出回路である。これは、電流検出抵抗によって変換された電圧値をオペアンプが増幅することで、MCU が認識できるようにする回路である。
 電圧増幅の際に焦点となるのがオペアンプ IC そのもののノイズ耐量である。センサ出力の信号線やオペアンプ IC に外部からノイズが侵入してきたとき、オペアンプIC のノイズ耐量が低いとノイズがそのまま増幅される。その結果 MCU で誤認識または誤動作を引き起こし、システムの誤動作を招く。しかし、オペアンプ IC のノイズ耐量が高い場合はノイズを除去できるため、センサ信号だけを増幅して MCU に送ることができる。これにより、マイコン、システムを正常に動作させることが可能となる。そのため、電子部品の高集積化が進む ECU やインバータにおいてはノイズ耐量の高い電子部品が必要とされる傾向がある。
 
 2.オペアンプ IC のノイズ耐量改善について
 ノイズ耐量の改善が困難であるのはオペアンプ IC においても他の電子部品と同様である。ノイズ対策を行う場合、回路設計はもちろん、素子の配置、電源ライン、グラウンドラインすべてが抵抗、容量、インダクタンスの成分を持った素子として考えなければならない。最近では高性能な高周波シミュレータの開発も進んでいるが、EMC シミュレーションのためのモデリングは困難であり、また単に EMC に対する知識だけではなく、コンピュータや計算手法に対する知識も必要であるため、シミュレータで確度の高いデータを出すのは困難である。さらに、プロセス固有の寄生容量や寄生インダクタンス等の詳細な特性まで網羅するには至らず、結局は設計者の知識と経験、勘によってノイズ耐量の強弱が決まると言える。これらのことがノイズ設計の難しさに拍車をかけている。

続きは『月刊EMC No.380』にて


【月刊EMC No.380 目次情報】

<特集>
◇パワーエレクトロニクス装置とEMC
・電力系統の安定運用に協調する分散電源の制御機能
 ((一財)電気安全環境研究所(JET)篠原裕文)
・無停電電源システム(UPS)の最新技術動向および関連規格
 (東芝三菱電機産業システム(株)森治義)

<新製品とEMC>
・プロジェクター「MP-WU8801BJ」
 (マクセル(株))
・適用EMC関連規格解説
 EN 55032・EN 55035
 マルチメディア機器のEMC規格動向
 (CISPR I 小委員会 国際幹事 堀和行)

<Technology>
・スイッチングノイズを抑制する配線方法
 スイッチング電源のノイズ対策の基本
 (岡山大学 梅谷和弘)
・自動運転・ADASのシステム誤動作防止
 車載向けオペアンプによるノイズ対策
 (ローム(株))
・車載用モータのEMC
 モータ単体を題材にしたエミッション低減の具体策
 ((株)広島テクノプラザ 佐々木圭太、菅崎英雄)  

<New&Now 規格・規制情報>
・CISPR 35が付則で規定している機能別性能判定基準(付則A~付則D)
 (電気通信大学産学官連携センター 雨宮不二雄)

<実践講座>
・電動化とEMC②
 EV、HV車に搭載される車載部品のEMC試験評価方法
 ((株)UL Japan 大水豊)

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