【送信機近傍の電界距離特性】
はじめに
IoT, 5G など、新しい通信技術や通信インフラの登場によって、家電やマルチメディア機器を含む多くの電子機器が無線通信によって‘繋がる世界’が到来する。また、可搬型送信機の代表となるスマートフォンも、今や生活には欠かせない機器となり数多く普及している。一方、これらを EMC の目線に置き換えると、多くの送信機、可搬型送信機が他の電子機器に近接するケースが増えることになり、5Gに適用される新たな周波数帯の無線通信も開始され、電磁干渉のリスクが懸念される。実際に、スマートフォンや携帯電話の発する電波に関して、医療機器に対する電磁干渉評価を行った貴重なレポートも有り、参照されたい。
このような背景の元、近接する送信機に対する電磁耐性試験法として、2017 年には民生機器向けの基本規格となる IEC 61000-4-39が初版として発行され、EMC における近接照射法の認知も高まってきている。本稿では、今後必要性が増すであろう、近接照射法の特徴、IEC 61000-4-39 で規定されているTEM ホーンアンテナの特性について解説する。
1.近接照射法の必要性
可搬型送信機に利用される電力は小さいが、近接することで強い電界が発生する。この点が、遠方界での試験が基本となる従来の試験法に対し、新たに近接照射法が必要となる最たる理由である。民生機器向け放射イミュニティの基本規格となる IEC 61000-4-3 3) の試験レベルが 1 V/m ~ 30 V/m(Level X除く)に対し、近接照射法となる IEC 61000-4-39 では 10 V/m ~ 300 V/m と 10 倍の試験レベルが規定されている。実際の試験レベルは対象となる製品規格、製品群規格、想定される送信機からの距離等を考慮したリスクマネジメントによって決定されるが、近接送信機に対して高い試験レベルが要求されていることが分かる。ここで、近接距離での電界変化を知る為に、送信機近傍における電界強度の距離特性の評価を行った。車両・車載機器向け近接照射アンテナとして開発された、700 MHz ~ 3.2 GHz の帯域でVSWR が 2 以下となる広帯域スリーブアンテナを送信源として 1 W を入力した。送信源から 10 mm ~100 mm の位置における電界強度を小型の光電界センサで計測した 。
続きは『月刊EMC No.384』にて
<特集>
◇材料技術の進歩とEMC
(総合司会 次世代EMC研究会 会長、(公財)鉄道総合技術研究所 会長、東京大学 名誉教授 正田 英介)
・第1講演
GaNパワーデバイスとEMC
(パナソニック(株)上田 哲三)
・第2講演
5G携帯電話基地局向けGaNトランジスタとEMC
(住友電気工業(株)志村 竜宏)
・第3講演
カーボンナノチューブを用いた電磁波遮蔽
((国研)産業技術総合研究所 堀部 雅弘)
<新製品とEMC>
・デジタルカメラ
「PowerShot G7 X Mark III」
キヤノン(株)
・適用EMC関連規格解説・情報
静電気放電試験の国際規格
IEC 61000-4-2の問題点と最新改正動向
((株)ノイズ研究所 石田 武志)
・適用EMC関連規格解説・情報
CISPR 32クラスB許容値について
(NTT ネットワーク基盤技術研究所 秋山 佳春)
<Technology>
・IoT、繋がる世界でのEMCの必要性
5G・IoTで身近になる民生機器の近接EMC試験法
((株)ノイズ研究所 久保 崇将)
<New&Now 規格・規制情報>
・マルチメディア機器のイミュニティ規格(CISPR 35)の解説と今後の動向(その6)
今後の動向
(電気通信大学産学官連携センター(前電波利用環境委員会I 作業班主任)雨宮 不二雄)
・「EN ISO 13766:2018」の解説
建設機械の電磁両立性(EMC)要求
(コマツ 吉田 克美)
<実践講座>
・事例からひもとくEMC設計・対策、そして基礎
第8章
電波吸収体と電波暗室(その1)
(TDK(株)栗原 弘)
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