はじめに
マルチメディア機器のイミュニティ規格であるCISPR 35 は、2001 年に当時のCISPR E 小委員会とCISPR G 小委員会を統合して設立されたCISPR I 小委員会で検討が開始され、一度のステージゼロ及びCISPR 35 初版の発行に向けたFDIS(最終国際規格案)の否決という紆余曲折を経て、検討開始以来15 年の歳月をかけて2016 年8 月に初版が発行された。
マルチメディア機器(MME:Multimedia Equipment)の分野は日進月歩が激しいため、CISPR 35 の運用が本格化するとともに、CISPR 35 のベースとなっているCISPR 20 およびCISPR 24 の最新版の修正・改定に向けた検討で先送りされた案件や、Internet of Things(IoT)並びに第5 世代移動通信システム(5G)の本格導入に呼応した新たな検討課題が顕在化してきている。そこで、CISPR I 小委員会(SC-I)では、これまでCISPR 35 のメンテナンスを担当してきたSC-I の第4 作業班(I/WG4)を受け継ぐ形で2017 年10 月に設立された第8 メンテナンスチーム(MT8)において、CISPR 35 初版の修正に向けた課題を抽出・整理し、これらの課題を担当する幾つかのタスクフォース(TF)を設立して、CISPR 35 初版の修正に向けた検討を進めている。
本稿では、先に「その1」で、CISPR 35 の適用範囲、イミュニティ要求事項及び一般性能判定基準を、また、「その2」~「その5」でMME のイミュニティの性能判定基準を機能単位で規定した付則A ~付則J で規定している内容を詳しく紹介し、併せて規定内容を解説してきたが、今回、CISPR 35 の解説と今後の動向の締めくくりとして、CISPR 35 初版の修正・改定に向けた課題とその検討状況の概要を「その6 今後の動向」として紹介する。
1.マルチメディア機器のイミュニティ規格(CISPR 35)の本文について
CISPR 35 初版の本文では、適用範囲と目的、引用規格、用語の定義と略号、要求事項、イミュニティ要求事項、文書、試験構成、一般性能判定基準、本規格の適合性及び試験の不確かさの各項についての規定等を記述している。
これらの各項のそれぞれについては、先に本稿の「その1CISPR 35 の適用範囲、イミュニティ要求事項及び一般性能判定基準」(2019 年11 月発行No.379)で紹介済であり、詳細はそちらを参照されたい。
2.CISPR 35 初版のAnnex(付則)について
CISPR 35 初版では表1に示すように付則A ~付則J までの10 件の付則を規定している。これらの付則のうち、付則A、B、C、D、E、F、G、H はNormative(規定)であり、付則I とJ はInformative(情報)である。
続きは『月刊EMC No.384』にて
<特集>
◇材料技術の進歩とEMC
・GaNパワーデバイスとEMC
(パナソニック(株) 上田哲三)
・5G携帯電話基地局向けGaNトランジスタとEMC
(住友電気工業(株) 志村竜宏)
・カーボンナノチューブを用いた電磁波遮蔽
((国研)産業技術総合研究所 堀部雅弘)
<新製品とEMC>
・デジタルカメラ「PowerShot G7 X Mark III」
(キヤノン(株))
・静電気放電試験の国際規格 IEC 61000-4-2の問題点と最新改正動向
((株)ノイズ研究所 石田武志)
・CISPR 32クラスB許容値について
(NTT ネットワーク基盤技術研究所 秋山佳春)
<Technology>
・IoT、繋がる世界でのEMCの必要性
5G・IoTで身近になる民生機器の近接EMC試験法
((株)ノイズ研究所 久保崇将)
<New&Now 規格・規制情報>
・マルチメディア機器のイミュニティ規格(CISPR 35)の解説と今後の動向(その6)
今後の動向
(電気通信大学産学官連携センター(前電波利用環境委員会I 作業班主任) 雨宮不二雄)
・「EN ISO 13766:2018」の解説
建設機械の電磁両立性(EMC)要求
(コマツ 吉田克美)
<実践講座>
・事例からひもとくEMC設計・対策、そして基礎⑧
第8章
電波吸収体と電波暗室(その1)
(TDK(株) 栗原弘)
・電動化とEMC④
電気自動車における給電技術とEMC
接触式充電からワイヤレス給電、マイクロ波給電まで-下-
((公社)自動車技術会 横井行雄)
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