マルチメディア機器 適用範囲、イミュニティ要求事項及び一般性能判定基準【CISPR 35】(月刊EMC)

2020.5.26 更新
マルチメディア機器のイミュニティ規格 適用範囲、イミュニティ要求事項及び一般性能判定基準【CISPR 35】(月刊EMC)

【(CISPR 24 と対比して示す)CISPR 35 のポートの例】

 マルチメディア機器のイミュニティ規格であるCISPR 35 は、2001 年に当時のCISPR E 小委員会(音声及びテレビジョン放送受信機ならびに関連機器を所掌)とCISPR G 小委員会(情報技術装置を所掌)を統合して設立されたCISPR I 小委員会(放送受信機、マルチメディア機器及びIT 機器を所掌)で、エミッション規格であるCISPR 32 と並行して検討が開始され、一度のステージゼロ及びCISPR 35 初版の発行に向けたFDIS(最終国際規格案)の否決という紆余曲折を経て、検討開始以来15 年の歳月をかけて2016 年8 月に初版が発行された。

 マルチメディア機器(MME:Multimedia Equipment)の分野は日進月歩が激しいため、CISPR 35 の運用が本格化するとともに、CISPR 20 およびCISPR 24 の最新版の修正・改定に向けた検討で先送りされた案件や、Internet of Things(IoT)並びに第5 世代移動通信システム(5G)の本格導入に呼応した新たな検討課題が顕在化してきた。そこで、CISPR I 小委員会(SC-I)のメンテナンスチーム8(MT8:本チームは、これまでCISPR 35 のメンテナンスを担当してきたSC-I の第4 作業班を受け継ぐ形で2017 年10 月のSC-I ウラジオストク会議で設立された)では、CISPR 35 初版の修正に向けた課題を抽出・整理し、これらの課題を担当する幾つかのタスクフォース(TF)を設立して、CISPR 35 初版の修正に向けた検討を開始した。

 本稿では、最初にCISPR 35 初版の主要な内容について解説し、次いで初版の修正に向けて整理された課題の概要と検討状況ならびに今後の動向を紹介する。

規格の概要と特徴

 これまで音声とテレビジョン放送受信機及び関連機器のイミュニティ規格についてはCISPR 20 が、また情報技術装置(ITE)のイミュニティ規格についてはCISPR 24 が適用されてきているが、これらの機器を複合化した機器の場合には同一の目的で両規格に基づくイミュニティ試験を二重に実施する必要があり、両者を統合した規格の制定が求められていた。

 CISPR 35 はこのような背景の下で検討が開始され、ITE、音響機器、映像機器、放送用受信機器、娯楽用照明制御機器及びこれらの機器の組み合わせ機器と定義されているMME の、イミュニティ限度値と試験法等に関する要求条件を規定した国際規格である。

 CISPR 35 初版の主な特徴を以下に示す。

① CISPR 24 を基本とし、これにCISPR 20 で規定していた放送用受信機とその関連機器に固有な要求条件を取り込むとともに、新たにイミュニティ限度値と試験法に関する幾つかの技術的な修正を加えた規格となっている。

② イミュニティ限度値は、全てのMME が通常の使用環境で最低限満足する必要がある値として単一の限度値を採用している。

続きは『月刊EMC No.379』にて


【月刊EMC No.379 目次情報】

<新製品とEMC>
・プレシジョンパワーアナライザ「WT5000」
 (横河計測(株))
・IEC 61326-1:
 計測・制御および試験室で使用する電気装置ー電磁両立性(EMC)要求事項 第1部 一般要求事項
 ((前)拓殖大学 谷由紀夫)
・IEC 61326-2-1 Ed2:
 計測・制御及び試験室用の電気装置
 ー電磁両立性(EMC)要求ー
 Part 2-1:個別要求ーEMC防護が施されていない感受性の高い試験及び測定装置の試験配置、動作条件及び性能評価基準
 (三菱電機(株) 中野康嗣)

<特集>
◇IoT時代の無線システムのEMC問題と対策
・無線システムのEMC問題の実際
 (NTT 東日本 伊藤秀紀)
・IoT時代の無線環境構築のための周波数選択板(FSS)の設計法と使用法
 (NTT ネットワーク基盤技術研究所 鳥海陽平、伊丹豪、加藤潤)

<Technology>
・携帯電話端末近傍の電力密度評価法に関する標準化動向
 ((株)NTT ドコモ 大西輝夫、(国研)情報通信研究機構 佐々木謙介)
・5Gミリ波ビームフォーミングと電波干渉対策
 ((株)富士通研究所 清水昌彦)
・超伝導マイクロ波回路の高感度かつ低暗計数(低ノイズ)な光子検出への応用
 (東京大学 河野信吾、中村泰信)
・電界結合非接触給電技術を用いた搬送系とEMC
 ((株)ExH 原川健一)

<New&Now 規格・規制情報>
・無線設備の基準認証制度について
 ((一財)テレコムエンジニアリングセンター)
・CISPR 35の適用範囲、イミュニティ要求事項及び一般性能判定基準
 (電気通信大学産学官連携センター 雨宮不二雄)

<実践講座>
・IEC 62153-4シリーズ概要解説⑧
 「アナログ/デジタル通信システム接続機器のEMC特性試験方法」概要解説
 ((株)フジクラ・ダイヤケーブル 小川幸三)
・熱設計技術⑤
 第5章 熱回路網法による熱解析手法
 ー新人社員や初心者のための機器の熱設計対策に関する教育的な講義
 (富山県立大学 石塚勝)

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