【ポリゴンミラー型LiDAR】
1.はじめに
自動運転を実用化するためには、自車がどの位置にいるのか把握するための自己位置推定技術、測距センサ等を活用し周りの環境を認識するための外界認識技術、自車位置と向き速度等を総合的に判断するための行動計画技術、ステアリングやブレーキの操作を行うための車両制御技術という4大技術が必要である。これらの技術は、近年の運転支援システムの開発や人工知能の発展により実用的なものとなっている。
自己位置推定技術はGPS の精度向上やSLAM(Simultaneous Location and Mapping)技術の進歩により使えるようになり、行動計画や制御技術はACCや自動ブレーキの開発により実用化されている。外界認識技術もACC や自動ブレーキに使われてはいるものの、自動運転レベルの精度はこれまで難しかった。ところが、LiDAR(Light Detection and Rangingあるいは Laser Imaging Detection and Ranging)による自動運転の実証実験が各国で展開されるようになり、外界認識の切り札としてLiDAR が俄然注目され始めた。本稿では自動運転のためのLiDAR を中心とした外界センシング技術について、背景から現状と課題を紹介する。
2.外界センシング技術の変遷
遠方にある自車前方の障害物を検知する方法として、古くから電波レーダとLiDAR が研究開発されていた。実際に車載され販売されたのは、1990 年代初頭で、LiDAR の商品化の方が早かったのである。当時のLiDAR の構造は、レーザダイオードLD を使用してパルス光を発光し、その反射光を飛行時間TOF(Time of Flight)を計測し車間距離を測定していた。投光には3 個のLD を使った固定ビームを3 本使い、スキャニングは行われていなかった。そのため、直線路の自車走行レーン前方車両が対象となっていた。また、レーザ光の反射は、前方走行車の後面に設置されたリフレックス・リフレクタからの反射を想定していた。メルセデスベンツのS クラスにアダプティブ・クルーズ・コントロールACC としてオプション設定され、そのLiDAR はドイツのADC というメーカーが製造していた。この頃、日本でもADC と同様の固定ビームのLiDAR が開発され車載された。その適用システムはトラック用の車間距離警報であった。
ビーム固定方式のLiDAR は、どうしても視野角FOV(field of view)は狭くなってしまう。より広角のFOV を達成するため、固定ビーム方式の次にスキャニング方式のLiDAR が開発された。
続きは『月刊EMC No.386』にて
<新製品とEMC>
・ドライブレコーダー「VREC-DS500DC」
(パイオニア(株))
・CISPR 規格の装置クラス分けと許容値決定の経緯について
~ CISPR/B における検討を一例として~
(NTT ネットワーク基盤技術研究所 秋山佳春)
<特集>
◇車載機器のノイズ/EMC対策
・車載通信におけるEMC・ノイズ対策
(ルネサスエレクトロニクス(株) 長沼健)
・新しい高耐熱電磁波吸収シートの開発と展開
(デュポン帝人アドバンスドペーパー(株) 成瀬新二)
<Technology>
・自動運転へ向けたセンシング技術
LiDAR を中心とするセンシング技術とノイズ付加による性能向上
(芝浦工業大学 伊東敏夫)
・自動運転・車載電子機器の安全性向上
自動車の雷故障対策
(中部大学 山本和男)
・電動化・軽量化におけるシールド効果・電波吸収特性
自動車に用いる材料のシールド試験、電波吸収試験および自動車のEMC試験
(キーコム(株) 鈴木 洋介)
<New&Now 規格・規制情報>
・世界最大級の市場 中国のEMC 規制・CCC 認証
中国におけるEMCに関する認証制度
((株)トーキンEMC エンジニアリング 志田浩義、杉田奈実子)
<Information>
・IEC 62471 Ed. 1.0 概要解説
ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性
((一財)電気安全環境研究所 岡村尚幸)
<実践講座>
・電動化とEMC⑤
車載電子機器のEMC対応設計について[1]
~伝導流入出雑音電流を増大させにくい回路基板設計と金属筐体への装着~
((株)クオルテック 前野剛)
・サプライヤーの実務視点でみた車載電子機器のEMC対策①
車載電子システムとEMC性能要求事項との関係
((株)今仙電機製作所 山野上耕一)
・EMC測定・試験のポイント.2. EMC測定・試験は何故必要か
規制の法的枠組みと動向⑬
自動車のEMC規制(ESA)
((一社)KEC 関西電子工業振興センター 杉本久憲)
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