パワエレ機器・電源回路における伝導ノイズシミュレーション技術(月刊EMC)

2020.7.3 更新
パワエレ機器・電源回路における伝導ノイズシミュレーション技術(月刊EMC)

【伝導ノイズシミュレーションの算出フロー】

1.はじめに
 近年、家庭用電気機器の省エネルギー設計が必須となっている。それに伴いエネルギー効率を高めるため、電源回路に高速スイッチ制御が多く採用され、SiC やGaN 等の新材料を用いたデバイスによる更なる高速化・高効率化の研究開発が盛んに行われている。
 しかしながら、このような高速スイッチング回路動作に起因する電磁ノイズの増加、広帯域化が進み、機器の誤動作やEMC 規格(ノイズ電力の規制値)違反等の、EMC 対策の問題が顕在化している。
 このような伝導ノイズに関して法規規格(IEC61851-21,CISPR14-1 ClassB)が定められており、これらの規格に対応するための対策部品や設計変更により設計期間や対策部品のコストが増大してしまうという課題があった。
 そこで初期の回路や基板設計の段階で、ノイズ電力を予測、発生メカニズムの分析、対策実施を行うことができれば、EMC (Electro Magnetic Compatibility)対策に要するコスト低減ができる。これを実現するための電源回路ノイズシミュレーション手法に関しては複数、提案されている。しかしながら、冷暖房機器や加熱機器など大型筺体や放熱機構などを有する場合には、そのままでは解析することが難しい。
 本稿では、それらの課題を解決するために、シミュレーションで伝導ノイズの定量的な予測、対策立案を可能にする手法として、高精度等価回路モデル用いた解析手法とその適用事例について紹介する。

2.伝導ノイズの解析手法
 ノイズを広帯域な回路現象として捉え、ノイズの発生源とその伝搬経路を広帯域な回路モデル化することで、回路解析上でノイズ予測が可能となる。それにより、デバイスや構造、制御の影響を考慮した、伝導ノイズ解析が実現できる。
 モデル化の基本的な考え方は、電源回路におけるノイズ源を、スイッチ素子のオンオフ動作で発生する過渡的な高周波電圧及び電流として捉えている。また、伝導経路は、配線を含む回路部だけではなく筺体を含む構造体までを考えている。これらを詳細にモデル化することで、ノイズ発生源から電源系統への伝導ノイズ伝搬が再現できる。

続きは『月刊EMC No.382』にて


【月刊EMC No.382 目次情報】

<新製品とEMC>
・チルト機能付き電動ベッドフレーム「GR-01F KN-R」
 (フランスベッド(株))
・電気用品安全法技術基準解釈別表第八の概要解説
 ((一財)電気安全環境研究所(JET) 藤倉秀美)

<特集>
◇「基礎講座 EMC設計と シミュレーション」−電磁界シミュレーションの基礎とその応用−
・イントロダクション−EMC設計の基礎−
 (拓殖大学 名誉教授 澁谷昇)
・電磁界シミュレーションの基礎 Sonnetの使い方
 (群馬大学 菊地秀雄)

<Technology>
・パワエレ機器・電源回路における伝導ノイズシミュレーション技術
 (パナソニック㈱ 嶺岸瞳)
・簡易等価回路モデルを活用した車載用インバータの伝導ノイズ解析と対策設計
 (三菱電機㈱ 片桐高大)

<New&Now 規格・規制情報>
・CISPR 35が付則で規定している機能別性能判定基準(付則G)
 (電気通信大学産学官連携センター(前電波利用環境委員会I 作業班主任) 雨宮不二雄)
・電気溶接装置における電磁界の人体ばく露
 (埼玉大学 山根敏)

<Information>
・四半世紀/25年間のEMC環境フォーラムの開催記念表彰
 設計対策技術部門、規制規格部門、フォーラム最多受講者の3部門表彰
 (EMC 環境フォーラム運営委員会)

<実践講座>
・熱設計技術【最終回】
 ペルチェ素子の応用
 ー新人社員や初心者のための機器の熱設計対策に関する教育的な講義
 (富山県立大学 石塚勝)
・EMC測定・試験のポイント−2.EMC測定・試験は何故必要か
 規制の法的枠組みと動向⑫
 米国におけるEMC規制
 (㈱e・オータマ 田路明)
・電動化とEMC③
 電気自動車における給電技術とEMC
 接触式充電からワイヤレス給電、マイクロ波給電まで−上−
 ((元)京都大学 生存圏研究所 横井 行雄)

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