埋め込み型医療機器の信頼性とEN 45502【EN 45502】(月刊EMC)

2020.8.11 更新
埋め込み型医療機器の信頼性とEN 45502【EN 45502】(月刊EMC)

【植込み型遠心ポンプ式補助人工心臓】

1.はじめに
 医学は進歩しているが、残念ながら人間に寿命がある限り、不可逆的な臓器機能不全により、生命維持が不可能となる患者が減ることはない。予防医療もたいへんに重要であることは事実であるが、重症臓器障害に陥った患者の救命のためには、人工臓器の研究も欠かすことはできない。
 残念ながら高額な医療になるので、特に、高齢者の医療などに対する倫理的な問題を指摘する無責任な意見もインターネットなどでは散見され、SNS では常に炎上しているが、高齢者だけでなく、若い患者さんのためにも、臓器機能の維持は必要であり、例えば心臓なら、たった一個の臓器障害でも、患者さんは命を長らえることはできなくなる。さらに生活の質を維持し、WHO の定義による「身体的にも精神的にも社会的にも健康」な生活を維持するためにも、インプラントの人工臓器の開発は必須である。
 植込み型の医療機器は、人体の生命維持に直接的に関与する部分も多く、高度の信頼性が、様々な観点から求められているのは、内外、どこの国においても同様である。
 特に、植込み型人工心臓のようなデバイスでは、当然ながら、通常の医療機器と比較しても、はるかに高度の安全性が求められる。
 「ものつくり大国」とも呼ばれる日本では、これまでに、数多くの医療機器が開発されてきた。しかし、大きな失敗も、繰り返してきた。
 末期的な循環不全、エンドステージの鬱血性心不全患者の救命のために我が国で開発された日本ゼオン社製の空気圧駆動型補助人工心臓の製品は、早くも1980 年代に臨床応用され、当時、東洋紡社製と、日本ゼオン社製の二機種の製造認可が認められた。これは、世界でも初めて、産業としての人工心臓の製品の認可と言われ、医学の世界で見れば、国際的にも大きく先駆けけたものである。と、当時は、高く評価された。
 ただし、残念ながら、産業としては、壊滅的ともいえる大きな失敗に終わったとの酷評もある。現実に、先に述べた人工心臓は残念ながら現在は販売されていない。当時、空気圧駆動型の人工心臓は世界的に見ても大きな潮流であり、完全置換型の、空気圧駆動型人工心臓ジャービック7も当時の製品である。日本では、この時代の趨勢に合わせるかのように、日本ゼオン型のサック型空気圧駆動補助人工心臓と、東洋紡のダイアフラム型空気圧駆動補助人工心臓の二機種が当時に製品化される認可を得た。
 日本の補助人工心臓開発が、産業として、なぜ失敗してきたのか?

続きは『月刊EMC No.388』にて


【月刊EMC No.388 目次情報】

<新製品とEMC>
・医療向け電動ベッド「アリウスシリーズ」
 (パラマウントベッド(株))
・医用電気機器のEMD規格~適合のための対応~
 ((株)アイピーエス 山口哲志、林武、横山めぐみ)

<特集>
◇高出力/高容量のための新電池材料の特性と開発
・リチウムイオン電池セパレータ膜の成膜および破壊の可視化
 (群馬大学大学院理工学府 河井貴彦)
・マリモカーボン;リチウムイオン電池材料としての電気化学的特性
 (茨城大学 長谷川康太、荒川凌志、江口美佳/東洋大学 蒲生西谷美香/NIMS 安藤寿浩)

<Technology>
・鉄道車両用インバータのラジオノイズ対策
 (三菱電機(株) 東聖)
・フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)
 (日本電気(株) 丸橋建一/サンリツオートメイション(株) 雨海明博/オムロン(株) 米田光宏/富士通(株) 佐藤慎一/(国研)情報通信研究機構 厚東肇)
・設計段階における製品安全とEMCの両立
 (NTT 宇宙環境エネルギー研究所 加藤潤)
・ウェアラブルロボットに対するイミュニティ試験法及び性能向上技術
 (名古屋工業大学 王建青)

<New&Now 規格・規制情報>
・埋め込み型医療機器の信頼性とEN 45502
 (東北大学 山家智之、白石泰之、井上雄介、山田昭博)

<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-2.EMC測定・試験は何故必要か
 規制の法的枠組みと動向⑭
 EMC規格とその体系
 (東京都市大学 徳田正満)

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