工業環境のエミッション共通規格の勘所【IEC 61000-6-4】(月刊EMC)

2020.9.15 更新
工業環境のエミッション共通規格の勘所【IEC 61000-6-4】(月刊EMC)

1.規格の概要
 工業環境のエミッション規格であるIEC 61000-6-4の3 版が2018 年2 月7 日に発行された。本規格は工業環境、CISPR 11 などで分類されるいわゆるクラスA 環境において、屋内および屋外で使用される電気・電子機器に適用される。製品規格または製品群規格の適用範囲に含まれない製品に適用する。近年ではまだ個別規格が存在しないAI 自走ロボットや介護機器などで本規格を選択する製造者が増えているため注目度が高くなっている規格である。
 なお、住居、商業および軽工業環境に代表されるいわゆるクラスB 環境で使用する機器はIEC 61000-6-3 が適用される。エミッションと対になるイミュニティ試験の規格はIEC 61000-6-2 となる。
 このほか、IEC 61000-6 シリーズは下記規格があり、商業・軽工業環境において業務装置に限定した規格IEC 61000-6-8 も規格化される予定である。
 IEC/TS 61000-6-5: 発電所・変電所環境におけるイミュニティ
 IEC 61000-6-6: 屋内機器のおけるHEMP イミュニティ
 IEC 61000-6-7: 工業環境において機能安全性に関連する装置・システムに対するイミュニティ要求
 工業環境と家庭・軽工業環境の境目はどこか?という質問は試験の際にもよく頂く。総務省のCISPR規格国内答申IEC 61000-6-4(1997) には下記のように記載があるので参考にされたい。

  5. 工業地域
  工業地域は、以下の条件の一つ又は 複数で特徴づけられる地域である。
  - 工業、科学及び医療用(ISM)設備(引用規格(3)で定義されるクラスAの設備)が存在する
  - 大容量の誘導又は容量性負荷が頻繁に切り替わる
  - 電流が大きく、それに伴う磁界が強い
  これらは工業地域の電磁環境を形成する主な要因であり、工業環境を他の環境と区別する特徴である。
  注) 我が国の都市計画法に基づく工業地域の指定は、上記の条件と異なる。

 また、機器の動作条件は試験に携わる者にとっては特筆することはないと思われる。しかし和文かつ分かりやすい文章であるので同文書から引用する。

  6. 測定条件
  機器の通常の使用状態において、発生する電磁妨害波が測定周波数範囲で最大になる動作モードで測定を行うこと。
  電磁妨害波が最大になるように、引用規格に従って供試機器の配置及び動作モードを変えること。
  機器がシステムの一部であるか又は周辺機器を接続できる場合は、引用規格(5)に従って各ポートを試験するのに必要な最小のシステム構成で周辺機器を接続し、試験を行うこと。
  測定時の機器の構成・配置と動作モードは、試験報告書に正確に記述すること。

続きは『月刊EMC No.389』にて


【月刊EMC No.389 目次情報】

<特集>
◇2020年版 国内主要EMC試験・校正所一覧

<New&Now 規格・規制情報>
・IEC 61000-6-4 工業環境のエミッション共通規格の勘所
 ((一財)日本品質保証機構 北山洋平)

・CISPR F小委員会 上海会議報告
 家電・電動工具及び類似機器と照明機器
 ((一財)電気安全環境研究所 山下洋治)
・CISPR 16-1-1 第5版における変更点
 無線周波妨害波及びイミュニティ測定装置の技術的条件―測定装置―
 (ローデシュワルツジャパン㈱ 吉本修)

<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-3.EMC基本規格で規定された測定・試験法②
 周波数30MHz‒1000MHzにおける放射エミッションの測定法
 ((一社)KEC 関西電子工業振興センター 峯松育弥)
・熱設計技術②
 IoTシステムの熱課題に対処するための伝熱工学とエクセル解析の基礎
 (元 熊本大学大学院 富村寿夫)

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