1.校正とは?
「校正」と「較正」の2つの書き方があり、どちらも校正作業で使用する標準器の正しい値に対し、測定器が示した値との誤差を確認する作業のことです。
「校正」は計量法に基づく誤差の確認や証明として使われるのに対し、「較正」は校正結果がNGの場合に調整を含む作業を指すことが多いです。しかし、最近では「校正」と「較正」を同じ意味で使うことが増えてきました。
2.校正の必要性
「校正はした方がいいですか?」あるいは「校正周期はどれぐらいにすればいいですか?」とご質問をいただくことがあります。そもそもなぜ校正が必要なのでしょうか。
1つは企業の品質管理(QC)活動とそれに伴うISO取得によって、製品に対する安全性や信頼性の向上、お客様への信頼性を高める手段として実施します。近年、企業の品質に関する不祥事が増え、企業規模にかかわらず企業の信頼性の証として校正をすることが求められています。その指標として、ISO 9001やISO/IEC17025などの国際規格が用いられています。その規格を保持している校正機関に校正を依頼することによって、自社製品の信頼瀬を高める狙いなのです。
もう1つは経年劣化によるリスクを早めに発見し対処することです。形あるモノは全て変化していきます。測定器は多くの精密な電子部品を使用して製造されていますので、抵抗やコンデンサなど劣化により性能が悪くなっていきます。悪くなるだけならまだいいですが、劣化により発火すれば測定器だけの被害にとどまらないこともあります。校正によって製品の劣化を早めに発見することで、測定器を長く良い状態で使用することもでき、甚大な被害を防ぐこともできるのです。
では、どれぐらいの周期で校正すればよいのでしょうか。これについては明確な規格はありません。使用頻度や諸経費あるいは監査期間などをもとに各企業で周期を設定してください。参考までに、弊社のお客様は1~2年で校正を実施される場合がほとんどです。
3. 校正サービスの種類・項目
3-1. 一般校正とIEC/ISO17025認定校正
校正には一般校正(メーカー校正を含む)と認定校正の2種類があります。
一般校正は校正機関が独自の校正水準を持ち、不確かさの記述も不要で、自分たちで自社の能力を評価します。「独自」の方法のため、製品を輸出したい場合、認定シンボルがない校正のために評価対象外あるいは輸出不可になる場合もあります。
次に認定校正ですが、EMCの認定校正を例に説明いたします。EMCの校正機関(Calibration Laboratory)の場合、IEC/ISO17025とは、製品を評価する校正機関が厳守すべき一般要求事項を規定した国際規格です。この規格で校正された校正機関の検証、校正結果についての技術的な能力を評価することができ、日本では日本適合性認定協会(JAB)の IEC/ISO17025などが認定シンボル付きの認定書を発行しています。
3-2. 認定シンボル
ここでいう認定シンボルとは、使用測定器(校正原器)を用いて測定、精度をチェックすることができて、機器の性能、校正原器の扱い等を理解して校正を行うことができる組織であるという証であり、シンボルを付けた校正書類を発行できる機関はIEC/ISO17025認定校正機関と呼びます。つまり、品質管理を行う上でのマネジメント力と信頼性のある試験・校正結果を生み出す技術力が国際的に認められていることをアピールしているのです。
たとえば、JABから認定を受けた場合、JABの認定ロゴと、日本と世界の相互認証ロゴを記載することが、その証拠となります。

- ●JAB の認定ロゴ
- RCL00500は当社認定番号

- ●国際相互認証マーク
- 相互認証加盟機関は日本国内外2018年現在〇5万5000機関あり、どこの機関でも世界的に有効となります。
認定には試験/校正認定があり、それぞれ認定取得が難しく、申請内容も規格が変わる度に年々取得が難しくなっています。
~ 試験認定と校正認定の違い ~
- ●試験認定とは(吸収クランプ試験)
- ISO/IEC17025のうち試験認定とは、機器別の製品群に特化した試験を行うための評価方法であり、たとえば吸収クランプを用いた妨害電力測定はCISPR16-1-4の家庭用電子機器、測定法・測定手順が規定されています。つまり、この試験をサイトで実施する場合はCISPR16-1-4という試験規格認定を試験認定として取得すればいいのです。
- ●校正認定とは(吸収クランプ校正)
- 校正認定の場合、吸収クランプはCISPR16-1-3という試験規格で規定されていますが、この場合は認定校正を取得するためには、吸収クランプの特性、材料評価、メーカとしての仕様の確定、評価手法等全てを把握したうえでIEC/ISO17025校正認定を取得しなければなりません。
4. 校正の流れ
4-1. IEC/ISO17025校正認定取得までの流れ
- ●認定の申請と予備審査の実施
- 認定審査は IEC17025の基準を満たしているかの評価、妥当性の確認が必要で、審査員による現地調査を実施し、審査員が最終判断を行います。
- ●確認内容としては以下の項目です。
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- IEC17025要求事項に合致したシステムの構築と内容を文書化している。
- 校正の不確かさが算出され、校正原器、校正対象機器の安定性の確保。
- 校正の妥当性が評価され文書化されている
- 校正手法のプロセスが明確化されている。
- トレーサビリティと不確かさが明確になっている
- 外部技能試験への参加かつ認定取得項目の4年間の品質保証計画を持っている。
- ●認定維持のための審査
- 初回認定の1年後に現地サーベイランス審査があります。抜き打ちで認定範囲のいくつかの項目を確認し、試験所の運営能力が良好であることかどうかを確認します。
4-2. 一般的な校正作業の流れ
- 測定器預かり
- 事前検査
- 校正
- 測定データを記録
- 測定器返却
事前検査では運送による破損はないか、付属品の確認などを行います。この際、電源が入るか、電源を入れた時の動きに問題ないかを確認し、問題があれば校正の前に修理が必要であることをお客様にお伝えします。校正機関は一般的に修理できませんので、製造メーカーに修理を依頼し、修理後に校正を実施します。
校正時にデータに異常があった場合、校正機関で補正できる場合は対応いたしますが、対応できない場合はやはり製造メーカーに修理を依頼することが多いです。
5. 一般的な校正費用
校正費用は、校正基本料金・校正書類費用・返送費用の3つになります。
5-1. 校正基本料金
校正基本料金は、校正機関が提供する周波数・校正ポイント・校正データ項目での校正料金となります。自社で必要な内容になっていない場合には、オプションで校正ポイントを増やしたり、校正項目を追加したりすることができます。オプションは1ポイント単位、1項目単位で価格が決まっているため、あまり多く指定すると基本料金よりも高くなることがあるので注意が必要です。
5-2. 校正書類費用
校正書類費用は、一般校正と認定校正とで価格を分けている校正機関もあります。校正証明書・試験成績書・トレーサビリティチャートの3点セットが基本ですが、校正証明書のみや校正証明書と試験成績書のみなど選択することも可能です。さらに、和文のみ、和文・英文併記、英文のみといった言語サービスや紙書類か電子書類かといった納入形式を選択するサービスもあります。最近はペーパーレス化が進み、電子書類形式が主流で、紙書類は別料金という校正機関があります。紙書類と電子書類両方必要な場合は追加料金が発生することがあります。また、校正費用の中に校正書類費用を含む校正機関もあります。
5-3. 返送費用
返送費用は、文字通り校正品をお客様に返送する際の費用になります。校正機関がチャーター便と契約している場合には、引取費用・返送費用ともに無料なこともあります。宅急便を使用する場合でも、発送払いか着払いかの選択ができたり、あるいは校正機関に直接引取ができたりもします。返送費用を校正費用に含む場合もあります。
費用については校正機関によって異なりますので、校正を依頼する場合には各機関にご確認ください。
(著)株式会社 協立テクノロジー