1.HEMPの概要

HEMPはHigh-Altitude Electromagnetic Pulseの略で、数十km 以上の上空における核爆発により地上に放射される電磁パルスを示しており、NEMP(Nuclear ElectroMagnetic Pulse)と呼ばれる場合もある。
HEMP(高高度核爆発電磁パルス)による電子・電気機器への影響が初めて観測されたのは、1950 年代に行われた核実験の時である。
特に1962 年7 月に太平洋上400km 上空で行われた1.44M トンのStarfish Prime と呼ばれる実験では、1445km 離れたハワイ島において、300 個の街灯を消し、防犯アラーム等、無線システム、電力システム、通信システム等へ影響を与えた。このことにより多くの人がHEMP の影響を知ることになり電磁的特性や対策についての検討が進んだのである。

最近では、スマートグリッドやIoT( Internet of Things)と呼ばれる電子的な制御が多く導入されており、それらの電力システムや社会システムへの影響について、研究や標準化が進められてきた。

2.HEMP 現象の概要

HEMP(高高度核爆発電磁パルス)による電磁波は、大きさ・高度などにより異なっており、非常に複雑なパルス波形であるが、長年の研究の結果、国際電気標準会議(IEC: International Electrotechnical Commission) で定義されており、電磁波の発生機構と電磁波が伝播する時間によりE1(Early time HEMP)、E2(Intermediate time HEMP)、E3(Late time HEMP)の3 つに区分されている。

3.E1パルス(Early time HEMP)

E1 パルスは、もっとも初期に広範囲に伝搬する急峻で強力な電磁波パルスであり、電気・電子機器へは電線を通して印加されるだけでなく、波長が短いため直接、影響を与える。核爆発により放出されるγ線が、コンプトン効果によって、大気中の分子から飛び出した電子が地球の磁場( 磁界) により偏向することによって、地上に生成する大電力電磁波パルスである。

4.E2パルス(Intermediate time HEMP)

E2 パルスは、雷によって発生する電磁波パルスに似た特性をもち、影響を与える範囲は、ほぼE1 パルスと同等である。
ただし、E1 パルスを印加された後に連続してE2 パルスが来ることを考慮しておく必要がある。

5.E3パルス(Late time HEMP)

E3 パルスは、核爆発による火球によって生じ、地球の磁界( 磁場) を振動させて、磁気パルスが発生し、その磁気パルスにより、電力線や通信線などの比較的長いケーブルへ1/50sec 程度の長い誘導電流パルスが発生する現象である。
E2 パルス同様に、E1 パルス、E2 パルスに連続してE3 パルスが印加されるという点には留意が必要である。

6.HEMP 対策における設置場所のクラス分け

HEMP(高高度核爆発電磁パルス) の影響は広範囲にわたるため、さまざまな設置場所に置かれた電子・電気機器への対応が必要である。
屋外や遮蔽効果がないコンセプトレベル1 から80dB 以上の遮蔽効果が期待されるコンセプトレベル6 まで6 段階の設置場所を想定している。

7.HEMP試験

機器に対するHEMP の試験方法は、国際的にはIECで規定されているが、米国軍規格であるMILおよび国内防衛省規格NDSでは、実戦闘を考慮しIECをベースとした試験規格を制定している。
世界の国々では高高度核爆発による電子機器への影響を配慮しHEMP 試験設備が整備されている。
図1は基本的な試験システム例である。