1.静電気放電の測定・試験とは、ESD試験とは何か?

  • 帯電した人が製品(EUT)を触った際に発生する静電気をシミュレートする試験
  • 人が直接触れる可能性がある部分に対しては電極を直接接触、それ以外の部分には静電気を印加した電極を放電するまで近づける方法がある
  • 試験電圧:0.2kV~30kV
  • 試験機器:ガン(銃)タイプの試験機が一般的

2.静電気放電(ESD)の試験規格

静電気を原因とした放電(以下ESD)により回路素子の焼損や誤動作を引き起こす現象に対して、国際的な耐性試験方法としてIEC61000-4-2などが規格化されている。
試験による結果の分類は、試験後の試験体が下記4種の状態のどれに当てはまるかで判断する。

  • ① 仕様範囲内の正常動作を維持
  • ② 自己修復可能な一時的な劣化または機能や性能の低下
  • ③ オペレータの介入またはシステムの再起動を必要とする一時的な劣化または機能や性能の低下
  • ④ 機械やソフトウエアの損傷、またはデータの損失による回復不能や劣化や機能の低下

3.静電気放電(ESD)の測定・試験条件の詳細検討必要性

IEC61000-4-2では試験の再現性を確保するため、ESDガンと呼ばれる試験機の性能、特性確認方法、試験装置全体のセットアップ方法、更には試験室の気象条件等の環境規定(周囲温度、相対湿度、気圧など)を設けている。しかしながら実施されている試験時の実際の電界波形や、試験体回路中に印加されるノイズの挙動は複雑であり、更にESDガンから発生されるノイズはメーカ、機種により厳密には異なっており、試験によるノイズが実際の誤動作・焼損に至る過程についての過程については検討が始まったばかりである。

このため、ESDガンから発生する電界/電圧から、回路中のノイズ電圧まで正確にモニタリングすることが非常に重要となる。試験中のESDの電界や試験体の回路内のノイズ電圧を直接計測するため、光電界センサ(例えばES-100)および光電圧プローブ(例えばES-2015)が利用されている(図1)。

図1 光電界センサ/光電圧プローブ
図1 光電界センサ/光電圧プローブ

なお、光電界センサ/光電圧プローブを動作させるためには共通のコントローラ(C5-D1-A)が必要であり、図2の様にコントローラの出力電圧をオシロスコープ、スペクトラムアナライザ等に接続することによって計測される。

図2 光電界センサによる測定風景
図2 光電界センサによる測定風景

4.静電気放電(ESD)による電界の測定・試験

静電気放電(ESD)の電界計測を行うためには広帯域周波数特性と非侵襲性が必要である。静電気放電(ESD)によって発生する電界は基本的には高周波成分を含む第1ピークと中周波成分からなる第2ピークによって構成されており、非常に広い周波数成分を持っているため、それらを測定するためには広帯域の周波数特性を持っている必要がある。

更に、静電気放電(ESD)の電界を測定する場合、電界受信アンテナは試験機の近傍であるため、同軸ケーブルなど金属線を使用すると強大なノイズが直接オシロスコープなどの測定機器を破壊する危険性があるほか、測定波形に不要ノイズとして混入してしまい目的とする測定が行えない。 この点、光電界センサでは100kHz~10GHzの広帯域な周波数特性を持ち、非導電体である光ファイバによる光伝送での測定のため電気的に遮断した測定が可能となる。
図3に金属筐体に対する気中放電のESD電界測定結果を示す。 この際の測定波形は、IEC-61000-4-2で規定されている静電気試験器の接触放電試験モードでの電流波形に近い波形となっている。 しかしながら、別途IEC-61000-4-2で規定されている水平電極に対する気中放電の静電気放電(ESD)電界測定波形を図4に示す。

図3 光電界センサによるESD電界測定波形(1)
図3 光電界センサによるESD電界測定波形(1)
図4 光電界センサによるESD電界測定波形(2)
図4 光電界センサによるESD電界測定波形(2)

図3および図4は立ち上がり時間、立下り時間に違いが見られ、放電対象の状態(インピーダンス、筐体形状)によって試験電界強度、波形が異なっていることがわかる。

5.静電気放電(ESD)による回路ノイズの測定・試験

静電気放電(ESD)によって回路基板に印加されるノイズ電圧を測定するためには、電界計測のための必要条件として挙げた広帯域周波数特性、非侵襲性が同様に求められる。ここで特にノイズ電圧測定における非侵襲性の要件として、高入力インピーダンスおよび低容量がある。

誤動作を引き起こすノイズを測定するため、通常の同軸線からなる市販のプローブを接続するとノイズを注入していないのに誤動作する、またはノイズを注入しても誤動作しないことはしばしば起こる測定の失敗例である。 これはプローブが50Ωなどの低インピーダンスであることや、10pF程度の高容量であること、更に測定対象のIC/LSIなどの入力インピーダンスが高いため、プローブを接続するだけで電圧降下、または波形変化を引き起こすためプロービング前後で状態が変わってしまっていることに起因する。

光電圧プローブは、概ね200MΩ・1pFの高インピーダンス・低容量であり、プロービング前後でのノイズ波形に対する影響は小さいと言う特徴がある。このため、プロービングによる動作状態を変化させることなくノイズ電圧を評価することができる。 図5にノイズ注入によりICが誤動作を発生させるノイズ波形の測定例を示す。

これによって、具体的なノイズ(電圧、パルス時間、周波数など)を数値化することや誤動作を引き起こす境界を明確化することで複数の対策に対する効果の確認が可能になり、真に必要なノイズ対策レベルの数値化により過剰対策を防ぎ、対策の費用対効果まで検討することができる。

図5 ESDによるノイズ電圧(光電圧プローブ)
図5 静電気放電(ESD)によるノイズ電圧(光電圧プローブ)

(著)株式会社 精工技研

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