エミッション試験とは

1.エミッション試験概要

エミッション試験や試験機材に関する国際規格は、CISPR のpublication16(CISPR Pub.16)に記載されているものが代表的な規格である。この規格書には、試験原理、試験場所、試験方法、試験機材、セットアップなどの詳細が記載されており、現在各国が制定しているEMC 規格は、ほぼこの規格を参照している。一方、情報処理装置に対するエミッションレベルに対する限度値はCISPR のpublication22(CISPR Pub.22) において定められている。日本を含む各国EMC 規格もCISPR Pub.22 を参照する場合が多い。

エミッションには図1に示すように、電子機器から電磁ノイズが直接、空間中に放射される放射エミッションと電源線や通信線を介して外部に伝搬する伝導性エミッションに分類できる。

図1.エミッションの種類 図1.エミッションの種類

それぞれは電波の強度を示す電界強度[V/m] と電源端子間の電圧(雑音端子電圧)[V]の単位で規定されている。これは、比較的周波数の高いノイズ(CISPR規格では30MHz 以上)は電磁波となって放射されやすく、周波数の低いノイズ(CISPR 規格では30MHz 以下)はケーブルなどを伝わって伝播しやいと考えられていることによる。

放射エミッションの計測は、広大な平地に基準金属面を敷設したオープンサイト(OATS : Open Area Test Site)、もしくは、床面がグラウンドプレーンとなっている半電波暗室内で行われる。放射エミッション試験では、後で示すように、電子装置から放射される低レベルの電波(30 ~ 47dBμ V/m 以下)を計測する必要があるため、計測場の電磁環境は、限度値より十分低い環境が必要である。

一般に住宅や工業地域では、放送波や無線通信、車両、その他多くの電子機器があり、これらの機器等が発生する電磁波がすでに規制値を上回るため、計測することが困難である。そのため、放射エミッションのEMI 試験を実施する設備であるOATS は、電波環境が良い(すなわち弱電界環境)山間部に多く存在する。しかしながら、近年では広い周波数帯域を有する地上波デジタル放送(470 ~ 770MHz)の普及にともない、オープンサイトの測定環境はさらに悪化している。一方、電波暗室や半電波暗室は、設置場所を問わず建築できる反面、試験コストが高額となる短所をもつ。

2.放射エミッション試験

放射エミッションの測定では被供試機器である電子装置から放射される電磁ノイズを数~数十m(標準的な距離は10m)離れた位置に設置したアンテナで水平、垂直の双方の偏波を測定する。なお、近年、CISPR をはじめ、各国の規格を制定している団体では1GHz を超える放射エミッションに対し、限度値を求める動きが活発になってきている。1GHz 以上の放射エミッションの測定では、床面にも電波吸収体を設置した完全電波暗室が利用される。

規格では、放射エミッション測定の際のアンテナ高は1 ~ 4m の高さで変化させるよう記載されている。これは、供試機器から放射される直接の電磁波とグラウンドプレーンでの反射電磁波を合成により、アンテナで受信する電磁波の振幅が大きく変化するためである。

3.伝導エミッション試験

伝導性エミッション試験は、図5 に示すように、AC 電源と被供試機器を結ぶ電源線に疑似電源回路網(LISN : Line ImpedanceStabilization Network)を挿入し、被供試が発生する高周波(150kHz~ 30MHz)の伝導性のノイズを測定する。

ノイズの測定精度を高めるため、擬似電源回路網はその電源インピーダンスが50Ω に近い値に設定されている。電源ケーブルから流出する伝導ノイズを計測するため、AC 電源のノイズ量は十分低い必要がある。また、外部ノイズの影響を取り除くため、測定はシールドルーム内で実施される。

図
Chapter.5