EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
国際大気電気委員会の委員長を拝命してから、すでに2年が経過しました。委員会の開催、年に2回のニュースレターの発行、4年に一回の国際大会の準備等々、何とか責任を果たしてきたつもりです。今回準備している国際大気電気大会(International Conference on Atmospheric Electricity、ICAE)は今年の6月に奈良で開催することになっており、この大会の宣伝もかねて、ここではICAE2018のいくつかのトピックスを紹介します。
国際大気電気大会は半世紀を超える伝統のある大会で、1954年にアメリカで第一回が開催され、今年の大会が16回目となります。日本での開催は1968年の東京、1996年の大阪に続き、3回目となります。当該分野での日本の貢献が大きいと言えます。
ICAE2018には既に300件弱の投稿が来ており、雷関係の投稿が大半を占めております。「これからEMC」ということもあって、ここでの紹介は雷のトピックスに限ります。
まずは雷が雷雲の中で如何に開始するかの話題です。室内の長ギャップ気中放電から類推して、雷放電もストリーマーもしくはリーダーで開始しているであろうと思われてきましたが、最近の観測では従来のストリーマー、リーダーと比べ、伝搬が速く(3-7×107m/s)、いきなり数百メートルも伸び、さらに、ピーク電流値が大きく(数十キロアンペア)、経路に導電性を殆ど持たず、強いVHF電波放射を伴う、fast positive breakdownとfast negative breakdownと名付けられた現象で始まっていると報告されています。ICAE2018でも大きな話題となると確信しております。
雷放電の放射電波の到達時間差を利用した雷放電の3D動画作成技術がこの数年間で随分進化しました。ごく最近まで雷放電の3D動画の作成にVHF波帯を使う必要がありましたが、今はLF波帯でも雷放電の3D動画ができるようになりました。雷放電のパワーは基本的にLF波帯に集中していますので、VHF動画よりもLF動画の方が雷害対策においてより有用であり、特にLF動画では30m程度の精度で落雷点を特定でき、ICAE2018で話題になるに違いありません。
最後に、最近のニュースにもなっていましたが、落雷によって作られた「反物質」が京都大学の研究グループによって地上で初めて観測されました。その「反物質」はなんと10分間も存在し、その消滅に伴って特有のガンマ線も放出したそうです。我々の身近でも核反応が起こっている、怖い感じもしますが、幸いにそのガンマ線は一瞬にしか出ず、人的な被害を及ぼさないようです。しかし、電子機器にとってはたとえ一瞬でも問題になる恐れもありますので、注意が必要と思います。
なお、ICAE2018専用のホームページhttp://icae2018.saej.jp/index.phpがすでに開設されており、ご興味をお持ちのお方はぜひご覧ください。この大会の確実な成功に向け、ご指導・ご支援をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。