EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画--「対策」から「推進」へ-

電波環境協議会(EMCC)会長
首都大学東京 名誉教授
福地 一

新年あけましておめでとうございます。皆さまからの、日頃の電波環境協議会(EMCC)への御支援、御協力に対して御礼を申し上げます。

2018年は、ヘルツの電波の発見(1888年)から130年の年にあたります。マックスウエルによる電波の予言(1864年)から、電波の発見、弱冠21歳のマルコーニによる電波を利用した無線電信の実用化(1895年)を経て、今日の電波利用の隆盛をみていることは皆様のご承知のとおりです。この電波利用の発展にはEMCへの配慮が不可欠であり、電波利用の急速な多様化ととともに、ますますEMCの重要性が増していると思います。そのEMCの意義についても、これまでは無線通信機器への影響緩和といった「対策」的な性格が強かったと思いますが、今後はより高度で安心な電波利用の「推進」的な役割が求められているように感じます。EMCCでは今後も電磁環境へ配慮した電磁波の利用推進を通じて豊かな社会構築に貢献していく所存でございます。以下では、EMCCの最近の活動とともに、EMCの「推進」的な観点からいくつかの最近の話題について私見を述べさせていただきます。

【EMCC近況】

EMCCは、1987年9月に「不要電波問題対策協議会」として設立され、2002年に現在の「電波環境協議会」に名称変更し、昨年30周年を迎えることができました。この間、会員機関様の協力を得て、EMCに係る調査研究の実施と公開、その成果の国際審議機関CISPRへの寄与などの活動をしてまいりました。特に昨年は、前会長で現顧問の上芳夫先生(電気通信大学名誉教授)の強力な指導のもとで後述する医療機関における安心・安全な電波利用推進に係る取組みや「微弱無線設備登録制度(ELPマーク)」の運用を実現することができました。

【医療機関における安心・安全な電波利用推進】

近年の医療現場では多種多様な電波利用機器が、患者様のバイタル情報のモニター、カルテ情報の記録・共有、治療のために使われています。また、病院内の患者、見舞い者、医療従事者の使用する携帯電話、スマートフォンも飛躍的に増えつつあります。かつては治療機器への電波の影響を考慮し、病院内での携帯電話を前面禁止とした病院も多くありました。しかし、携帯電話も第二世代から第三世代と進展するに伴って送信電力の低減が図られ、医療機器への影響も軽減されています。むしろ入院患者のご家族への連絡やインターネットへのアクセスは、病院内での利便性、QoLを高めると考えられ、治療効果の向上も期待されています。そこで、EMCCでは総務省、厚生労働省の指導のもと「医療機関における電波利用推進部会」を設け、病院でのICTの推進の観点から「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」を作成いたしました。

【無線電力伝送(WPT)】

電波による無線電力伝送(WPT)は利便性を飛躍的に向上させる反面、車などへの電力伝送のように大電力伝送の場合にはEMCの配慮が特に重要です。現在、ITU-R、CISPRなどの国際機関で活発な議論がなされていますが、日本として、安心・安全なWPT伝送技術を自ら開発し、安全性の検証をすることが重要であると思います。

【日本のEMC技術の国際貢献】

日本のEMC推進活動は、CISPR等の国際審議機関で高く評価されています。今後も、種々の調査研究結果の国際機関への寄与を通じて日本のプレゼンスを維持向上させることが重要です。また、国際貢献の観点から、米、仏に続き、4回目のCISPR会議の日本での開催も期待されています。