EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

IEC/TC77国際議長
東京大学教授
大崎 博之

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

昨年は、TC77と傘下の各SC、およびTC77CAGの会議を9月25日~29日の期間、千葉県柏市の柏の葉カンファレンスセンターで開催しました。日本でのTC77会議の開催は、1997年に福岡で開催して以来、20年ぶりでした。無事に開催できましたことを、TC77と各SCの国内委員会メンバの皆様、ご支援をいただきました関係団体・企業の皆様に心より御礼申し上げます。

9月29日に開催しましたTC77会議には17カ国からの参加がありました。前回のイタリア・ストレーザ会議が19カ国でしたので、地理的な条件等を考えると前回並みと考えています。TC77が担当する規格のメンテナンスは、現在、比較的落ち着いた時期にあります。例えば、最近2、3年でEMC共通規格である3規格の制定あるいはメンテナンスが完了し、また、電磁環境の分類に関するEMC基本規格IEC TR 61000-2-5は2017年1月に第3版が発行されました。今後は、1990年代に発行されたままとなっているIEC TR 61000-1-1第1版、IEC TR 61000-5-1 第 1 版、IEC TR 61000-5-2第1版などのメンテナンスを進めていくことになります。

ここ数年様々な議論が行われてきました2~150kHzの周波数領域の非意図的なエミッション(ディファレンシャルモード)に対する両立性レベルについては以下のような状況にあります。2~30kHzの両立性レベルについては、IEC 61000-2-2第2版(一般低電圧電源系統における低周波伝導妨害及び信号発生の両立性レベル)のAmendment1として2017年6月に発行されました。一方、30~150kHzについてはIEC 61000-2-2のAmendment2としてCDVの段階に至っていて、2018年2月2日が投票〆切になっています。このように、両立性レベルについては目処が立ってきましたので、次はエミッションレベルの議論に移ることになります。特に9-150kHzのエミッションレベルについてはCISPRとの合同作業グループを構成して議論を進めることになります。

9月25日と29日に、TC77CAG(Chair's Advisory Group)の会合を開催しましたが、その中で、SC77Bの議長、幹事らがGood Working Practice(GWP)の文書を準備しているという報告がありました。これは、委員会の議長・幹事、WG主査、MT主査の間のコミュニケーションのとり方、円滑に業務を遂行する手順、各組織の役割、国際規格、技術仕様書、技術報告書等の起草の仕方などについて、これまでの実績に基づき、共通化した手順等をとることを促進するように文書として詳述したものです。議論の結果、これをSC77Bだけではなく、TC77、SC77A、SC77Cでも共通に使える文書にすることで合意し、SC77B議長、幹事を中心にまずGWP文書ドラフトを作成し、CAGメンバで引き続き議論することになりました。

柏の葉カンファレンスセンターでの全ての会議が終了した後、9月29日夕方、Dr.William Radaskyらを講師に招いて、高出力電磁パルスの国際規格と防護に関するワークショップが同会場で開催されました。昨今の東アジア情勢を反映して、各方面から多くの聴衆の参加がありました。

次回のTC77会議は2年後の2019年9月または10月に開催する予定ですが、場所については未定です。今後も皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。