EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
IEC/TC106国内委員会(多氣昌生委員長・首都大学東京)では、人体ばく露に関連する電磁界の評価方法の標準化を扱っており、下位に周波数別に高周波と低周波の2つの委員会が設けられています。低周波委員会は、筆者が委員長を務め、電気事業連合会の諏訪三千男氏および日本電機工業会の井上博史氏に幹事を務めていただいております。本稿では、低周波(おおむね100kHz以下)ならびに低周波から高周波にまたがる活動について、2017年の活動状況を報告いたします。
電磁界中に置かれた物体に接触した際に人体を流れる「接触電流(contact current)」について、その評価方法の標準化の必要性について、2015年のIEC/TC106ストレーザ総会において日本から提案しWG8が設立されました。筆者がコンビーナを務め、TechnicalReport原案(DTR)の作成が行われ、1月5日締め切りで投票が行われています。電磁界の人体防護の分野における接触電流は、感電(痛みを伴う電撃)を回避しようとするもので、電気安全(感電保護)の考え方との整合が必要になるため、事前にDC(Document for Comments)文書の発行を行い、電気安全に関連するTCへも回覧が行われました。
近年関心が高い、非接触電力伝送(WPT:wireless power transfer)装置周辺のばく露評価についても、その方法の標準化の必要性について2015年のIEC/TC106総会において日本から提案し、WG9が設立されました。このWGのコンビーナをNTTドコモの大西輝夫氏が務め、また情報通信研究機構(NICT)の和氣加奈子氏、トヨタ自動車の野島昭彦氏、名古屋工業大学の平田晃正教授、多氣委員長もエキスパートメンバーとして参画され、日本主導でTechnical Reportの作成が行われました。2017年10月にIEC TR 62905として可決され、今後、国際規格化を目指したプロジェクトチームが作られる方針が、2017年のIEC/TC106メルボルン総会において確認されました。
IEC 61786シリーズ(人体ばく露に関する電磁界測定器の要求仕様)については、測定器の要求事項、(IEC 61786-1、2013年)と測定手順(IEC61786-2、2014年)の2冊に分割されて改正発行されておりました。これを受け、国内での対応JIS(JIS C1910、2004年)の改正作業が、2015年度より進められ、2017年10月に、JISC1910-1およびJIS C1910-2として改正発行されました。
IEC 62311(電磁界評価方法に関する共通規格)については、評価の基準となる低周波ICNIRPガイドラインの2010年の改正を受け、見直しの作業が進められており、現在、CDVの準備がなされています。日本からは、日立製作所の横田等氏がエキスパートメンバーとして活動されています。
電気自動車(EV)や充電装置など自動車の電気・電子機器から生じる電磁界の測定手順を定めるプロジェクトチーム(PT62764-1)では、現在2rdCDへのコメント対応の段階ですが、規定の期限が迫っているため、今後の進め方について議論がなされています。日本からは、トヨタ自動車の野島昭彦氏、および日産自動車の塚原仁氏がエキスパートメンバーとして活動されています。
電磁界の人体ばく露に関する評価方法の規格を作成する際に参照されることを意図した「EMFガイド文書」を作成するad hocグループ(AHG6)の活動が進められています。日本からは、多氣委員長、NICTの浜田リラ氏および筆者がエキスパートメンバーを務めています。原案の完成までには、いましばらく時間がかかる見込みですが、本ガイド文書は、TC106の文書ではなく、ACEC(電磁気両立性諮問委員会)の文書として発行を目指すことになります。
これらの活動におきましては、日頃の関係各位のご尽力・ご協力を賜っており、紙面を借りまして感謝申し上げます。今後とも、ご指導・ご支援をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。