EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

公益財団法人 日本適合性認定協会
佐々波 浩一

平成30年の新春を迎え謹んでお慶びを申し上げます。

公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)は日本工業標準調査会の提言を受け、1996年に試験所認定制度を立ち上げました。現在、ISO/IEC 17025に基づくJAB認定基準を公表し、この基準に基づいて審査を行い、適合者を認定・登録し、公表しています。昨年11月27日現在で合計328件の試験所・校正機関がJABの認定を受けていて、このうちEMCの試験所としては、25の試験所が認定を受けています。

最近の話題としては、ISO/IEC 17025の改定があります。昨年11月29日にISO/IEC 17025:2017が発行されました。この改定版ISO/IEC 17025への移行期間は3年間とされていますので、認定試験所は審査を受けて2020年11月29日までに移行を完了させなければなりません。改定版ISO/IEC 17025の主な変更点を説明させていただきます。

まず試験所は公平性のリスクを識別し、それを除去又は最小化できることを示さねばなりません。メーカー試験所はこれに対応する必要があります。また組織についてはISO/IEC 17025の適用範囲の決定が要求されました。要員については新たに力量基準の文書化が要求されました。設備については要求が減り、校正ラベルは校正日がなくても校正期限だけあればよくなりました。設備管理台帳についても次回校正期限に代えて校正間隔を書いてもよくなりました。サービス及び供給品と下請負の要求事項が統一され、これらの受け入れ基準の作成が要求されました。試験報告書について厳しくなった点は発行日の記載が義務付けされたこと、試験所所在地と同じでも試験場所を記載しなければならなくなったこと、及び顧客提供の情報を識別記載してそれが結果の有効性に影響する場合は結果が無効である旨記載しなければならないことです。逆に緩くなった点は発行権限者の署名は要求されないこと、報告書の簡略化についての顧客の同意に書面は要求されないこと、顧客の住所がなくてもコンタクト情報があればよいことです。ただ、適合性の表明については、その決定ルールを文書化し、報告書に記載しなければなりません。報告書の修正についても修正個所の明確な識別が要求されました。苦情については要求が厳しくなり、苦情処理手順を要求に応じて開示することと、苦情対処方法についての相手との折衝は当事者以外であることが要求されました。文書管理については緩和され、ページ番号付け、終わりを示す記号及び発行権限者の名前の記載は要求されなくなりました。予防処置に代わってリスクと機会が入り、考慮することが要求されましたが、これについては何をどこまでやればよいのか課題です。内部監査では、監査基準と監査範囲の明確化が要求されましたが、マネジメントシステムの全要素を監査することと品質管理者の責任はなくなりました。マネジメントレビューのインプットには前回のマネジメントレビューの処置状況が新たに加わりましたが、逆にマネジメントレビューの処置を取り決め期間内に実行する要求はなくなりました。

以上、改定版ISO/IEC 17025の主な変更点を述べましたが試験所認定に関心のある方のご参考になれば幸いです。