EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
電気用品安全法は、平成25年7月に性能規定化された改正技術基準省令が公布され、平成26年1月に施行された。この改正では、改正前の技術基準省令を改正技術基準省令の解釈とし、国際規格等に準拠した基準である別表第十二に採用される規格として、今後は、JIS等の公的な規格を整合規格として整備していくことになった。原則として、個別の安全に関する整合規格は、民間又は国がJISを作成し、それが採用されることで整合規格となるが、電波雑音などについては、民間の規格作成団体が作成するJIS以外の民間基準を整合規格として採用することになっている。この基準を作成する目的で、CISPR小委員会(仮称)〔委員長:筆者、副委員長:(一財)電気用品安全研究所(JET)山下洋治氏、事務局:(一財)VCCI協会〕が設立され、第1回の会議は、平成28年9月に開催された。委員として20以上の工業会代表が参加している。また、経済産業省、総務省及び(一社)日本電気協会にも参加いただいている。平成28年12月に第2回の会議が開催され、仮称になっていた委員会の名称をCISPRJ電波雑音委員会とすることが決定された。今後、本委員会では、情報通信審議会国内答申に準拠した整合規格案を作成し、電気用品調査委員会より国に提案することになる。最初に、CISPR15(照明機器からのエミッション規格)とCISPR32(マルチメディア機器のエミッション規格)の整合規格を審議することとし、それぞれCISPRJ15:2017とCISPRJ32:2017を電気用品安全法の技術基準の解釈別表第十二に提案することを平成29年1月に開催されたCISPRJ電波雑音委員会で決定した。それらの規格案は、解釈検討第2部会での審議を経て、平成29年3月に開催された電気用品調査委員会に提案された。その委員会でのコメントを反映した修正案は、平成29年7月に開催された電気用品調査委員会で承認された。平成29年9月に、産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会製品安全小委員会電気用品整合規格WGで了承された。平成29年12月に、電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈が一部改正され、上記2つの規格が正式に整合規格として採用された。CISPRJ電波雑音委員会は、今後も国際規格に準拠した整合規格の作成に取り組んでいく予定である。
地球温暖化を防止する有力な方法として、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーを導入したスマートグリッドが国際的に注目されているが、スマートグリッドでは、電気エネルギーを発電・伝送・貯蔵する設備が存在するため、それらの設備からの電磁放射、すなわちエミッションの問題が存在する。一方、スマートグリッドを構成する設備は様々な電磁環境に曝されているため、電磁妨害波によってそれらの設備が誤動作する可能性があり、最悪の場合は、スマートグリッド内の送電が停止する可能性もある。このように、エミッションとイミュニティの両方を包含したEMCに関する問題を検討するため、平成23年4月に電気学会の基礎・材料・共通部門(A部門)に所属する電磁環境技術委員会の中に「スマートグリッドとEMC調査専門委員会(委員長:筆者)」を設置し、その調査報告書を「スマートグリッドとEMC -電力システムの電磁環境設計技術-」というタイトルの単行本として、科学情報出版㈱から平成29年1月に発行した。その継続委員会として「スマートグリッド・コミュニティのEMC問題調査専門委員会」(委員長:筆者)が平成26年10月に設置された。今度の委員会では、(1)スマートメータ用電力通信のEMC問題に関するCENELEC(欧州におけるIEC関連標準化組織)報告書、(2)2kHz~150kHzのEMC問題、(3)V2H(自動車からホーム)におけるEMC問題、(4)自動車におけるWPT(ワイヤレス電力伝送)問題、(5)家電情報機器のWPT問題、(6)雷障害/雷保護問題、(7)スマートEMC(欧州の高速電力線通信で用いられているコグニティブ無線等)、を検討するWGを設置して推進した結果、当初の目標を達成したため、平成29年9月に解散し、現在調査報告書を作成している。