EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
新年おめでとうございます。
車がネットワークと常につながることによりスマートな移動を可能にしようとするコネクテッドカーおよびナビゲーション技術と先進運転システムが実現される2020年代に向けて受動部品分野にも急速な対応が求められています。これに関連する受動電子部品は、さらに小型化・薄型化することによってICと共生していきます。また、電子機器の小型化に伴って相互干渉を抑制するためのEMI対策部品はますます必要性が高まってきています。
国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission, IEC)のTC51(磁性部品、フェライト及び圧粉磁性材料専門委員会)は、2017年10月にロシアのウラジオストクで国際会議を開催しました。この国際会議で議論された内容も含めて活動状況と今後の活動について報告いたします。
WG10(高周波EMC対策磁性材料及び部品)〔主査:齋藤章彦(大同特殊鋼)〕は、主にノイズ抑制シート(NSS:Noise Suppression Sheet)のIEC規格化を進めております。IEC62333(Noise Suppression Sheet for digital devices and equipment)では、①基本的な用語の定義、②実際のNSSの使用状況を模擬したノイズ抑制効果の測定方法、③NSSの電磁気的特性に関する内容を規格化しています。2015年は、アプリケーションを模擬した、できるだけ実際のNSSの使用に対応した新しい測定手法を提案して国際規格として発行しました。また、NSSを用いたノイズ抑制のために、設計段階から事前にシミュレーションを行って使用効果を予測したいという強いニーズが従来からありました。そこで、シミュレーションに必要なNSSの電磁気特性、特に、複素比透磁率および複素比誘電率の測定について新たな検討を2016年に開始しました。ウラジオストク国際会議でこれらの測定方法と得られた実験結果を報告しました。今後日本がプロジェクトリーダーとなり、2019年12月を目標にテクニカルレポートを作成することが承認されました。
WG9(インダクティブ部品)〔主査:東 貴博(村田製作所)〕は、インダクタに関する規格の開発、審議を行っております。ウラジオストク国際会議では、中国提案のIEC 61007(トランスとインダクタの測定方法)/IEEE389の統合(Dual Logo IEC/IEEE)について審議しました。中国をプロジェクトリーダーとして、まずIEC 61007の改正を行い、その後Dual Logo規格の開発を行うことが合意されました。また、中国提案のIEC 62025-2(高周波インダクタの非電気的特性の試験方法)の改正の方向についても議論した結果、今後の中国からの詳細提案を待つことになりました。日本からは、各メーカーのインダクタの定格電流値が正確に比較できることを目指してIEC 62024-2(DC-DCコンバータ用インダクタの定格電流測定方法)の改正提案を行い、日本がプロジェクトリーダーとなって改正を進めることが合意されました。
WG1(フェライト及び圧粉磁心)〔主査:平塚信之(埼玉大学)、幹事:安倍 健(TDK)〕は、主にソフトフェライトに関する規格の開発、審議を行っております。2017年はフェライト磁心の寸法公差のテクニカルレポートを発行しました。また、ユーザーの利便性を考慮したフェライト磁心の寸法と外観限度の統合規格として、8形状(E、EER、ETD、EFD、EC、EP、RM、PQ)の磁心について日本および中国が主体となって原案を作成し、2018年内の規格発行に向けて審議を進めております。さらに、フェライト磁心に次ぐ規格体系として、金属圧粉磁心の規格2件(通則、リング形状)の開発提案を各国に回付して審議を進めております。ウラジオストク国際会議においては、フェライト磁心の残りの5形状(Ring、PM、Pot、HalfPot、Planar)について2020年内の規格発行の再確認、およびリング形状のフェライト磁心の強度測定方法の規格開発に着手することを決議しました。
次回の国際会議は2019年3月にアメリカで行なうことを決定しました。それに向けての活動を活発に進めていきます。