EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

日本医療機器工業会(JAMDI) 安全部会 EMC・安全委員会委員長
平野 知

新年明けましておめでとうございます。

一般社団法人日本医療機器工業会は、一般社団法人日本医療機器産業連合会に加盟する団体で、主に治療用・施設用関連機器を扱う132社の企業及び4つの団体から構成される団体です。治療用機器には人工呼吸器や麻酔器など生命に対してクリティカルな機器も含まれるためEMC問題には特に注意しなければなりません。

(一社)日本医療機器工業会と致しましては、(一社)日本医療機器産業連合会EMC分科会へ委員派遣を行い、医療機器の様々なEMCの課題に対して情報共有、当工業会としての意見具申などの活動を行っております。

以下、業界の状況と協力体制について記します。

JIS T 0601-1-2の改正作業

国内の規制で用いられるEMC規格は主にJIS T 0601-1-2ですが、この規格はIEC 60601-1-2:2001+Amd1.2004がJIS化されたJIS T 0601-1-2:2012規格で、本年4月より新たに製造販売される機器について強制となりました。

しかしながら、国際的に見るとIEC規格は既に2014年版が発行されており、国際整合の面からも最新規格のJIS化が求められています。現時点では、2018年には発行予定の計画で進んでおりますが、移行期間については関係機関との調整が必要になるため現時点では未定となっております。

尚、国際的に見ると、欧州及び米国では2014年版の強制化は2019年1月1日からとなっているため、輸出企業は注意が必要です。

総務省事業への協力

医療機器に関する総務省の事業には3つの事業が ありそれぞれに主な検討課題が有ります。

(1)医療機関における電波利用推進部会
 ①医療機関における電波環境の改善方策。
 ②医療機関における電波環境の管理体制の充実方策。
 ③高度な医療ICTシステムの導入推進方策。

本推進部会では昨年度、指針を作成、発表し総務 大臣賞を受賞しています。本年度はその指針の業界 への普及と、更にいくつかの WG を作成し専門調 査及び教育にあたる取り組みが示されて既に実施されています。

(2)電波の医療機器等への影響に関する調査の有識者会議
  ①スマートフォンを含む携帯通信端末から発射する電波が植込み形心臓ペースメーカ等に与える影響の調査。
  ②携帯通信端末から発射する電波が在宅医療での医療機器へ及ぼす影響調査に向けた基礎調査。
  ③「各種電波利用機器の電波が植込み形医療機器等へ及ぼす影響を防止するための指針の在り方」の検討。
  尚、在宅医療機器に関しては、昨年度基礎調査を行い、本年度正式影響調査を行う計画です。

(3)漏えい電波からの無線設備保護の技術的条件に関する調査検討会
本検討会では、高周波利用設備に対する実態調査と技術基準の見直しの必要性について検討を実施しております。

いずれの事業についても、医療現場での適切な電波利用という観点から重要な活動と捉え、情報共有など協力体制をとっております。

CISPR規格の改正審議協力

IEC 60601-1-2(JIS T 0601-1-2)において、引用される規格に、CISPR11があります。

本規格は、医療機器で水平に展開される規格として全ての医療機器が適用する規格となりますが、現時点での大きなポイントは、in-situにおける測定というポイントになります。

現在の都市環境における医療機関の外来ノイズは既にCISPR11の許容値を超えるケースが存在しており、その中でのin-situ測定の在り方を議論しています。日本からも医療機器企業から国際会議への派遣を行い、改正における問題点が発生しないように慎重に審議を進めています。

最後に

私達医療機器を扱う企業は、日々EMCの課題に対して情報を収集すると共に、急速に進むICT化の現状を把握しながら、常に安全・安心の医療機器を医療現場へ提供することを主眼に置き活動を続けて参ります。