EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
新年あけましておめでとうございます。当委員会では、IEC/TC106(人体ばく露に関する電界、磁界、及び電磁界の評価方法)における高周波領域(おおむね100kHz以上)の標準化を担当しております。本稿では、例年同様、本委員会が担当している標準化活動状況について紹介させていただきます。
IEC/TC106のMT1(メンテナンスチーム1)では、2017年1月に公開仕様書PAS63083(LTE端末のSAR測定手順)が発行されました。また、62209-2(人体側頭部以外使用の携帯無線端末SAR測定法)の修正案のCD文書が回付されましたが、修正の根拠が明確でないとして、我が国としては反対のコメントを送付しています。さらに、MT1が所掌する62209-1と62209-2を合体したunified standardを作成するために、2017年10月のIEC TC106総会においてIEEEとのJoint WG(JWG13)が設置されました。MT1にはNTTドコモの大西氏とNICTの浜田氏・長岡氏がエキスパートとして参加しており、JWG13にも参加を予定しております。
PT62209-3では、ベクトル測定に基づく比吸収率の高速測定方法を策定しており、2017年9月にDPASが承認されました。今後はCDV文書を作成し2018年後半にIS化される見込みです。同プロジェクトチームにはNTTドコモの大西氏とNICTの浜田氏・長岡氏がエキスパートとして参加しております。
IEC/TC106のPT62704では、数値計算による無線通信機器のSAR計算法についての標準化が進められております。62704-1(FDTD法計算の一般事項)、62704-2(FDTD法計算による車載アンテナ評価方法)、62704-3(FDTD法計算による携帯電話評価方法)については2017年にそれぞれ第1版が発行されました。62704-4(有限要素法計算の一般事項)についても、今年CDを回付するべく作業が進められています。PT62704は、IEEEと共同で規格策定作業を行っており、規格発行時にはIEEEとのduallogoとなっております。PT62704-1標準化には大西氏とNICTの浜田氏・長岡氏がエキスパートとして参加しております。
IEC/TC106のMT3においては、62232(携帯電話基地局からの電磁界評価方法)の改訂第2版が2017年8月に発行されました。今後、MT3では5Gシステム等も含む評価事例技術資料(TR62669)の改定作業を進める予定です。本標準化作業に対しては、高周波委員会配下の基地局WG(主任:小林岳彦 東京電機大教授)のもとで国内意見を集約し、NTTドコモの井山氏と浜田氏がエキスパートとして参加し、我が国の意見の反映に努めております。
5Gシステム等の人体防護評価を視野に入れたAHG10が2016年に設置され、我が国のエキスパート(NTTドコモの大西氏とNICTの佐々木氏)等の積極的な関与により、2017年にTR投票案が完成し、現在DTRが回付されております。これによりAHG10は2017年のIECTC106総会で廃止となり、IEEEと共同で、新たにミリ波帯の電力密度評価の国際規格策定を目的としたJWGが設置されました。JWG11では計算方法を対象とし、JWG12では測定方法を対象としております。JWG12の共同コンビナーにはNTTドコモの大西氏が就任しました。引き続き、高周波委員会配下の電力密度評価法(旧5G)WG(主任:NTTドコモ大西氏)のもとで国内意見を集約し、国際エキスパートを通じて当該国際規格の策定に積極的に貢献していく所存です。
関連の国際標準の動向として、ITU-T/SG5においても、人体防護に関する勧告の策定作業が進められております。ITU-T/SG5とIEC/TC106ではリエゾンを介して連携を図っており、日本からも、国内規制との整合の観点から意見を提出しております。
最後に、2017年にNTTドコモの大西氏がIEC1906賞を、NICTの浜田氏が経済産業省工業標準化事業表彰を受賞しました。いずれも、長年にわたり国内外のIEC TC106国際標準化活動への貢献が高く評価されたものであり、関係者にとっても励みとなる受賞でした。
本年もひきつづいてのご指導・ご支援をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。