EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

一般社団法人 日本建築学会 環境工学委員会 電磁環境運営委員会主査
川瀬 隆治

新年、明けましておめでとうございます。2018年度、日本建築学会環境工学委員会電磁環境運営委員会では、次のような取り組みを重点的に進めていく予定です。各方面からのご指導・ご協力をお願い申し上げます。

新しい細分類・細々分類での建築学会大会発表

毎年、夏季に開催される日本建築学会大会での電磁環境分野に関する発表では、昨年より細分類・細々分類の内容が改定され、より広い分野からの投稿が可能となりました。具体的には、細分類に「電気設備」、「電磁波応用技術」が加わり、また細々分類には「ICT/IoT無線通信環境」、「ワイヤレス給電」、「雷害対策」、「放射線環境」、「中間周波数帯利用」などの分野項目が加わっています。

これに伴い、昨年の大会での電磁環境セッションでは、ワイヤレス給電やICT/IoT無線通信、放射線環境などの発表がなされ、活発に質疑のもと、聴講者からの高い関心を惹きました。

今年度も、電磁環境に関連する広い技術分野からのご投稿・ご発表をお願い申し上げます。

電磁環境研究発表会2018の開催

当運営委員会では、その年度の建築学会大会講演における諸発表のうち、話題性や新規性の高い発表や、聴講者からの高い関心を惹いた発表などを中心に演題を選択し、より深い討議や意見交換の場を提供することを目的とした電磁環境研究発表会を毎年開催しています。

今年度は、ワイヤレス給電などに関する発表について詳しく聴講・討議する場を設け、当該分野に関する知見の共有化と議論の活性化、および技術の進展に資する機会を持つことを目的に、今年の2月末に、電磁環境研究発表会2018の開催を予定しています。本会では、上記に加え、工学系学生による研究成果発表、および今年度大会の若手優秀発表賞の受賞記念講演も予定しています。

日本建築学会会員に限らず、どなたでも参加できる技術交流の場となっていますので、多くの方にご参加を賜りますよう、お願い申し上げます。

医療機関の電波利用に配慮した建築指針の検討

近年、各種の医療機関では、電波を利用する機器の普及が拡大しています。しかしながら、医療機関内での電波管理等が適正になされない場合に、医療機器等のトラブルが生じることが危惧されています。

そこで新年度より、医療機関の電波利用に配慮した建築指針を検討するための小委員会を立ち上げ、建築構造や建築設備が医用テレメータに与える影響の調査から進めていく予定です。

本小委員会の活動を通じて、医療機関の電波利用に配慮した建築計画・建築設計・電波環境調査手法に関する技術指針の提案を目指していきます。

電磁環境の各種計測法および評価法の確立と標準化

電磁波ノイズの測定法については引続き学会規準の検討を進め、今年は規準案の完成を目指していきます。

建物の外部から到来する放送波などの電波を活用して、電磁シールド性能を簡易かつ効率的に測定する方法についての学会規準化を推進するとともに、引続き、適用先の検討を行っていきます。

また電磁シールド対策が行われた電磁シールドルームの、空間としての性能を評価する評価法を検討します。従来の材料・部位単体のシールド性能ではなく、より実用性の見込める空間全体としてのシールド性能評価方法について、情報収集と分析を進めていきます。

電磁環境技術の普及促進と学生に向けた教材の作成

建築電磁環境技術の教育と普及を促進するために、教育機関での講義や学会催し物などでの講演を通じて工学系学生向けの専門教育を実施していきます。また講義に用いる教材や資料を更新すると共に、教科書となる教育用教材の執筆を進めていきます。

電気設備周辺の磁気環境に配慮した電気室設計検討

電気室や各種電気設備の配置設計は、事業者により仕様が異なっているのが現状です。磁気の影響を受けやすい電子機器を利用する構造物では、設計の早い段階から配置設計などを含めた配慮をすることが、より経済的な対策を可能にします。そこで各種の電気設備から発生する交流磁界や、周辺で使われる電子機器の磁気耐性などに配慮した電気室の設計方法を検討し、電気室の設計者が拠り所とするために統一された電気室の設計指針を作成していきます。

当運営委員会で予定しておりますこれらの取り組みを通じ、多方面の分野の方々と「これからのEMC」を共有する技術交流を進めて行きたい所存です。今後とも、ご支援・ご指導を賜りますよう、切にお願いし、新年の挨拶とさせていただきます。