EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
平成30年の新年を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
昨年は、3月にドイツで開催された国際情報通信技術見本市(CeBIT2017)初日に、安倍首相・メルケル首相により、先進的テクノロジーでイノベーションを起こし経済成長していくことを両国で協力して進めることが発表され、世界的に注目を集めて幕開けた年であった。開幕に先立ち両政府が結んだハノーバー宣言の柱は、IoTなどに関わる国際規格作りの日独協調であり、規格の標準化・統一なくして、これからの社会は成り立たないことが強調された。
3月20日には、経済産業省により日本の産業が目指す姿を示すコンセプトとして「Connected Industries(つながる産業)」が発表され、さらには6月以降3回に渡る経済産業省主催、ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)共催の「Connected Industriesシンポジウム」の開催と、11月の国際シンポジウムの開催により、世界へ向けて日本のメッセージ発信が強力に行われた。
国際標準化においては、一昨年6月にIEC(国際電気標準会議)SMB(標準管理評議会)により設置されたシステム評価グループSEG7:Smart Manufacturingにおいて、スマートマニュファクチャリング領域における複数の技術領域を総括するSystem Committee(SyC)の必要性が確認され、ISO(国際標準化機構)、IEEE(米国電気電子学会)など他団体との連携の評価、SyC設立の準備などが行われてきた。SEG7の日本代表は、TC65[工業プロセス計測・制御・オートメーション]国内委員会委員が務めている。また、IEC TC65と協力関係にあるISO TC184[オートメーションシステムとインテグレーション]とは、Smart Manufacturing参照モデルに関する合同委員会ISO/IEC JWG21を設立し、第1回会合が9月にフランスで開催された。
EMC(環境電磁工学)は統一的電磁両立性の「場」の概念の確立から、個別製品への展開、製品・システム安全との関わり合いなど、ほぼIECで取り扱う製品の全てに関連する水平規格となっている。そのため、様々なセンサや機器がInternetなどのネットワークを介してつながるIoT社会においては、広範なレベルでの安全が要求されるため、EMC規格の重要性はさらに高くなっている。これは,EMC技術が単に電気電子情報機器単体の性能を担保するだけなく,社会基盤やシステム全体を支える重要な要素となっているためである。
IEC TC65では、SC65A/WG4においてEMC規格(IEC 61326[計測、制御及び試験室用の電気装置-電磁両立性要求事項])を取り扱っている。その中でIEC 61326-1[一般要求事項]及びIEC 61326-2[製品個別要求事項]に関しては、今冬の会議においてCD(委員会原案)作成を目指して改訂に関するコメント募集が各国国内委員会に対して行われ、またIEC 61326-3[EMCと機能安全]に関しては、5月に改定版が国際規格として発行されるなど、改定作業が進んだ。
TC77[EMC電磁場両立性]においては、IEC 61326シリーズと関連深いイミュニティ関連規格のIEC 61000-6-1[軽工業環境]、IEC 61000-6-2[工業環境]が、昨年改定され国際標準となり、またCISPR[国際無線障害特別委員会]においては、CIS/H[H小委員会:無線通信保護のための妨害波許容値]においてエミッション関連規格のIEC 61000-6-3[軽工業環境]及びIEC 61000-6-4[工業環境]の改定作業が行われている。
TC65国内委員会は、工業プロセスにおける「安全」・「安心」に関する規格化を進めているが、EMCは安全確保に関連する重要な規格であり、国内委員会事務局を受託している日本電気計測器工業会(JEMIMA)の「製品安全・EMC委員会」と連携して活動し、またTC77及びTC66[製品安全]国内委員会とも連携して活動している。
最後になりますが、本年も皆様のご指導、ご支援をいただきながら、日本の計測・制御・オートメーション業界の国際的競争力強化と新たな経済発展に貢献できますよう、一同、継続して努力いたす所存です。皆様の一層のご活躍とご健康を心から祈念申し上げ、結びといたします。