EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-年頭所感

経済産業省 産業保安グループ 製品安全課長
和田 恭

新年、明けましておめでとうございます。平成三十年の年頭にあたり、ご挨拶申し上げます。

今日、インターネット・IoT技術の普及やモバイルシフトが製品安全にも大きく影響を及ぼし始めています。これらの技術・社会状況の変化に対応しつつ、製品安全を文化として根付かせていくことがより一層重要になってきております。経済産業省としては、消費者や事業者皆様のご協力をいただきながら、引き続き製品安全行政を積極的に推進してまいります。

第一に、時流の変化や要請に対応した製品安全に係る規制体系の見直しや、IoT等の技術を活用した製品安全の確保の取組を検討してまいります。特に、IoT化に伴い電波を介して様々な機器やセンサーが繋がっていくことからクリーンな電波環境の整備が、今後ますます求められています。電気用品安全法では、電気用品による電波障害を防止することを目的としており、電気用品が発する電波雑音について基準値や試験方法を定めていますが、一方で、市場のグローバル化に伴い、IECやCISPR等の国際規格への迅速な整合化が求められています。このため、経済産業省では、基準値や試験方法といった技術基準について性能規定化を行い、国際規格に準拠したJIS等公的規格の積極的な採用を進めているところ、EMC分野についてはCISPRJ電波雑音委員会(事務局:VCCI協会)を設置し、総務省情報通信審議会答申を踏まえ策定した 2 規格:CISPRJ15(電気照明及び類似機器の無線妨害波特性の許容値及び測定法)及びCISPRJ32(マルチメディア機器の電磁両立性-エミッション要求事項)をCISPR規格に準拠した公的規格として、昨年、電気用品安全法の技術基準に採用したところです。

また、インターネット上で取引される製品安全関連四法違反製品の件数は増加の一途を辿っております。インターネット取引における製品の安全性を確保するための対応策と論点について、有識者、消費者団体、事業者等からなる検討会を立ち上げ、昨年8月に報告書として公開致しました。引き続きインターネットモール事業者との連絡会合を開く等、対策を検討してまいります。更に、今般リチウムイオンバッテリー機器等の発火事故が増えており、モバイルバッテリーを電気用品安全法の対象とするなど安全確保に向けた検討を進めてまいります。その他、欧米の規制機関との情報交換を進め、急速に発展する新技術・新製品に迅速に対応可能な規制体系の構築に努めてまいります。

製品事故の削減に関しては、製品起因による事故の約半数がリコール中の製品による事故であり、リコールの周知をより効率的に行うことが求められます。消費者が保有する製品のトレーサビリティを確保するため、IoT活用の可能性を追求してまいります。製品の市場流通や使用実態を適切に把握し、効果的なリコール対策を検討してまいります。

第二に、消費生活用製品安全法、電気用品安全法などの製品安全関連四法に基づき、製品安全規制を適切に実施してまいります。技術基準を満たした安全な製品が供給されるよう、市場監視に努めると共に、事業者の皆様に引き続きご協力をお願いしてまいります。

また、「重大製品事故報告・公表制度」による重大製品事故情報の収集・公表、製品事故の原因究明調査を行います。調査結果は、製品使用上の注意喚起や事業者の皆様のより安全な製品開発にご活用いただいております。製品の経年劣化事故を防止するための石油給湯器やガス湯沸器等9品目を対象とした「長期使用製品安全点検制度」は、今年、制度創設後9年目を迎え、同制度開始頃に購入された機器の法定点検が本格化してまいります。引き続き、着実に法定点検を進めていくと共に、同制度に基づく所有者票の登録率の向上、制度定着に向けた取組を進めてまいります。

第三に、製品安全に関する周知の更なる強化に努めてまいります。製品安全の向上は、より安全な製品開発・供給と適切な使用により達成されるものです。子どもや高齢者の行動ビッグデータを活用し、より安全な製品・サービス開発に繋げる試み等、製品安全文化の醸成のための事業者・消費者等との対話を進めてまいります。最近では、家電等の製品のサプライチェーン複雑化に伴い、生産が継続する中で発注者が気がつかないうちに使用部材が切り替えられている事例(サイレントチェンジ)等が見られておりますが、業界団体を通じた事業者の自主点検の加速等の業界への対応要請や、事業者への周知・対応を徹底してまいります。

本年も製品安全行政の推進、製品安全文化の醸成に絶え間ない努力を続けてまいります。引き続き皆様のより一層のご理解とご協力を賜りますよう、お願い申しあげ、新年の御挨拶とさせていただきます。