EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

IEC/TC64 国内委員会委員長/一般社団法人 電気設備学会参与
関東学院大学教授
高橋 健彦

平成30年の新年を迎え謹んでお慶び申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。新年にあたり、建築電気設備の直流化の話題を紹介させていただきます。

(一社)電気設備学会では(一社)日本電気協会と共同で国際電気標準に関する事業分野(経産省)の一環として「直流給電システムに関する国際標準化」に関する研究を行っている。平成29年度が最終年である。

本研究の目的及び最終目標を次に示す。分散型エネルギーや蓄電池を用いてマイクログリッド、データセンタ、グリーンビル等を構築する上で、効率的な電力利用として期待される直流給電システムは、市場形成のための国際標準化の開発が課題となっている。

本事業では、本分野に影響を及ぼすIEC直流給電システム評価グループ(SEG4)等へ参画し、その動向を反映しながら、直流給電システムに対応したパワーコンディショナ、アプライアンスカプラ、電気設備保護及び感電保護について、IEC規格の国際標準化提案を行うこととしている。

研究体制としてはシステム規格開発と製品規格開発に大別し、次に示す3つのWGを組織した。

システム規格開発WGはTC64のIEC60364規格群に対応した感電保護等の原案作成を検討している。

電源系製品規格開発WGはSC22Eに関連したパワーコンディショナ等の半導体電力変換装置の接続要件についての原案作成を検討している。

配線器具系製品規格開発WGはTC23に関連したICT機器の電源入力部(アプライアンスカプラ)についての原案作成を検討している。

これらのWGは精力的に活動し、本研究の最終目標であるNP(New work item Proposal)に向けて検討してきた。本稿を執筆している段階で、システム規格開発WGでは次に示すNPを具体化し、2017年11月22日付でIECの中央事務局からNP文書が各国に配布された。

それはIEC60364規格(低圧電気設備)群の第7部である特殊設備又は特殊場所に関する要求事項のひとつとしての“データセンタにおける直流給電システム”の原案である。

規格の骨子は、(1)適用範囲、(2)引用規格、(3)用語及び定義、(4)安全に関する保護①感電保護②熱の影響に対する保護③妨害電圧及び電磁妨害に対する保護、(5)電気機器の選定及び施工①配線設備②断路、開閉及び制御である。

規格の概要はわが国におけるデータセンタの運用事例として、高インピーダンスを介した系統接地であるIT系統とし、感電に関する対策として、直流用の絶縁監視装置および直流用の漏電遮断器を用いること。建築構造体とPE接地間をボンディングすること、構造体に電流が流れ難い接地方式を選択すること等を規定している。

今後、WD→CD→CDVを経て、最終的にはFDISとして投票で承認されれば国際規格となる。遠い道のりではあるが、各国の理解を得て、確実に着実に進むことを願う次第である。

なお、他のWGもNPを検討しており、今年の3月までは所管のSC22E、TC23に提案する予定である。

今回の提案はわが国の低圧直流給電システム開発のポテンシャルが高いことを各国に知らしめることになるであろう。