EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

日本信頼性学会
元第一工業大学教授
村岡 哲也

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

1999年に英国のケビン・アシュトンがインターネットによるセンサネットワークをIoT(Internet of Things)と命名してから、20年が経過しました。IoTは情報通信機器だけでなく、モノの全て(Things)がインターネットにつながって日常生活やビジネス、あるいは工場の製造ラインなどにイノベーションを起こす新しいサービスであると定義しています[1]。

昨今「IoTによってビジネスモデルが変わった」とか、「全体の作業工程が2/3まで短縮された」などの記事が雑誌やマスコミを賑わしています。しかし、報道されればされるほど、実態がよく見えてこないのがIoTです。その原因は、モノの定義の曖昧さにあるのではないでしょうか。

たとえば、生活必需品である家庭用電化製品にはワンチップマイコンが内蔵されているので、それを介してインターネットにつながりますが、工場の製造ラインや長距離輸送トラックには通信機材が搭載されていません。しかし、本体に通信機材が搭載されていなくてもWi-Fiルータを仲介させてLANと接続できれば、インターネットにつながります。このように、IoTは「ありとあらゆるモノがインターネットに接続する世界」を表現しているのです[1]。

ビジネスでは、「モノ」がインターネットにつながることで、センサを介して収集された様々な情報が分析され、分析結果がクライアントにフィードバックされることで、新しいビジネスが創造されると信じます[1]。

「ものつくり」に代表される製造企業、およびクラウドコンピュータティングによる情報のストアやAI(Artificial Intelligence)を用いた情報処理などに長けたベンチャー企業などがそれぞれの特徴を生かして交流し、IoTによるイノベーションを図る。そうすることで、生産性の向上、製品の保全、およびシステム制御などの面で新しい技術開発や新たな社会的価値が創造されるのではないでしょうか[1]。

  1. モノからの発信情報をセンサでキャッチする(Sensing)。
  2. インターネット経由でクラウドコンピュータに情報をストアする。
  3. ストアした情報を読み出し,AIで分析する。
  4. 分析結果を評価し,クライアントにフィードバックする。

ここで、AIとは、知的な言語の理解、経験からの学習、および論理的な推論などの脳の機能を代行するコンピュータとソフトウェアによるシステムであると定義されています[1]。そのシステムを用いて、IoTで得られた情報を統計処理し、処理結果をクラウドコンピュータにストアされている対象データと比較して評価することで、新しい市場の創造や付加価値の高い製品開発に役立てられます。さらにもう一つ例示すると、自動車にIoTとAIのシステムを組み合わせて搭載することで、事故の大きい原因となっている人間の「うっかりミス」を未然に防止することが可能になってきます[2]。

IoTのモノから発信する情報の収集には、最適な感度と精度を有するセンサが要求されます。ビジネス情報,および製品やシステムにおける保全や制御の情報など、情報発信する「モノ」によって使用するセンサが様々です。ゆえに、その選別を誤ると、情報の信頼性が急激に低下するので注意が必要です[1]。

【参考文献】
  1. 村岡哲也:“IoTシステムによるモーター設計とローコスト技術”,科学技術情報出版,pp.109-157,2017.
  2. 加藤 晋:“自動車の自動運転システムの研究と現状”,人工知能学会誌,Vol.22(4),pp.510-516,2007.