1.シールドボックス・電波暗箱の概要

電波暗箱とは、外部からの電波の影響を受けず、且つ外部に電波を漏らさないシールド(遮蔽)された空間の内部に、電波を反射させないための電波吸収体を貼った空間(箱)のことである。電波シールドは主に金属等の導電材料を使用する。電波吸収体とは電波がぶつかり熱に変換される材料で、内部での反射を防ぐ役割を担う。電波が反射しない空間(現実には全く反射が無いわけではなく、わずかに反射する)とは、あたかも周囲に物体が無い(遠く離れている)環境を模擬しているといえる。

一般には大型の空間を電波暗室、小型の空間を電波暗箱と呼称している。主に小型の無線機器の評価やEMC計測などに使用する実験設備である。実験目的で電波を発射する場合には、他の電波や無線通信に対して影響を与えず、また、他の電波や無線通信からの影響を受けないように空間を隔離することが望まれる。電波法対策の観点からも有効である。

外部からの電波の遮蔽に特化し、電波吸収体を使用しない空間(箱)をシールドボックスという。

2.シールドボックス・電波暗箱の外部構造

電波シールドを目的として、金属等の導電材料を使用する。
電波暗箱による遮蔽効果はシールド性能で表される。ある強度の電波を送信アンテナから放射し、ある距離での電界強度を受信アンテナで測定することを電波暗箱の有無により行い、次式によりデシベル(dB)単位で表現される。測定には送受信アンテナ、スペクトラムアナライザ、信号発生器またはネットワークアナライザを用いる。

シールド性能(dB)=E0-E1
E0:シールドボックス(電波暗箱)を使わないときの電界強度(dB)
E1:シールドボックス(電波暗箱)内で電波を放射し、電波暗箱外で受信したときの電界強度(dB)

例えば、上式により60dBのシールド性能があるとした場合、電界の強さは1/1000に減衰していることになる。

使用する金属材料は厚みが厚いほどシールド性能は高くなる。またシールド性能は材質により向き不向きがあり、シールドさせたい電波が電界もしくは磁界かによっても異なる。ここでは詳しく述べないが、大まかには電界のシールド性能を高めたい場合は、材料の導電率が高いものを選択し、磁界のシールド性能を高めたい場合は、透磁率が高いものを選択する。例えば、アルミニウムと鉄を比較したとき、電界はアルミニウム、磁界は鉄を使用したほうが良いといえる。

3.シールドボックス・電波暗箱の内部構造

上下左右前後の6面全ての内壁に電波吸収体を取り付けて内部反射を抑制する構造となっている。アンテナの放射パターンを計測するシステムでは、ターンテーブルを内蔵し、被試験物を回転させて計測行う。

電波吸収体そのものは、ウレタンや発泡スチロールに炭素(カーボン)粒子を含浸し導電性を持たせたものやフェライトを用いる。前者は主にGHz帯以上(高周波)に対する効果が高く、後者はMHz帯以下(低周波)に対する効果が高い。また前者は四角錐(ピラミッド)型や平面(フラット)型等の形状があり、扱う電波の周波数や特性・寸法に応じて選択する必要がある。内部に電源や通信インタフェースを引き込むこともできるが、空間が小型であるがゆえ、コネクタ部からの電波漏洩が無視できないため、構造設計は専門性が必要である。

4.シールドボックス・電波暗箱の必要性

昨今、さまざまな"モノ"がネットワークに繋がるIoT(Internet of Things)時代が到来し、多くの電子機器・機械・その他の"モノ"は、無線通信を利用してネットワークに接続されるようになった。IoTデバイス(モノ)は多様化されることから、無線性能の評価にはOTA(Over the Air)試験が必要となる。5G、WiFi、V2X、LPWA等、用途・周波数も様々だ。特に無線通信機器の場合、技術基準適合証明(技適)を取得していない製品は、違法な電波を撒き散らさないためにも電波暗箱を用いることが必要となる。
使い方は蓋を開けて、被試験物を中に入れ、蓋を閉めるだけだ。

5.シールドボックス・電波暗箱の特長

大型の電波暗室と比べて、以下のような優位点がある。

  • 手元でいつでも測定を行えるので、移動時間の短縮や測定の効率化が図れる。
  • 生産ラインの無線系試験工程で、隣接する工程や無線機器との干渉を防ぐ。
  • 室内や机上に設置することができ移動が可能なので、レイアウト変更に柔軟対応できる。
  • 安価、軽量で設置工事が不要(なことが多い)。
  • 維持管理費が軽減できる。

(著)マイクロニクス株式会社