EMC規格(イミュニティ規格・EMI規格)とは
EMC規格とは、EMCに関して守るべき規格(ルール)のことを示します。
EMC規格には、イミュニティに関して定めたイミュニティ規格、エミッションに関して定めたEMI規格(エミッション規格)があります。
※エミッション(EMI)とイミュニティ(EMS)に関しては、下記のページをご覧下さい。
- エミッション:「エミッション(EMI)とは」をご覧下さい。
- イミュニティ:「イミュニティ(EMS)とは」をご覧下さい。
また、国際的に定められた国際規格と、各国が定めた国内規格が存在し、各国へ製品出荷などを行う場合に必要な規格を満たさなければなりません。
そのために規格を満たすためのEMC試験(エミッション試験・イミュニティ試験)実施が必要となりますが、ここではそれぞれの規格に関して一覧形式を交え説明します。
EMC国際規格の解説(国際ルールで定めたイミュニティ規格・EMI規格)
EMI規格(エミッション規格)・イミュニティ規格(EMS規格)<1>EMC国際規格の概要と一覧
電気・電子機器の国際標準化機関としてIEC(国際電気標準会議)が存在する。
EMC関連の主要な水平委員会としてTC77とCISPR(国際無線障害特別委員会)が存在しており、EMCに関連する基本規格や共通規格を作成している。それに対して、TC22(パワーエレクトロニクス)、TC62(医療機器)、TC65(工業プロセス計測制御機器)等の製品委員会が存在し、EMC関連の製品群・製品規格を作成している。
TC77とCISPRの所掌範囲を調整すると共に、製品TCとの関係を調整する機関として、ACEC(電磁両立性諮問委員会)がIECのSMB(標準管理評議会)の下に組織されている。
IEC以外の国際標準化機関としては、自動車(TC22)や航空機(TC20)等の規格を作成しているISO(国際標準化機構)と、電気通信設備の規格を作成しているITU-T(電気通信標準化セクタ)がある。ITU-Tは国際連合の一組織であるITU(国際電気通信連合)の常設機関であり、SG5(通信設備の電磁防護)がEMC関連の規格(ノイズ規格)を作成している。
詳細は『EMC電磁環境学ハンドブック』をご覧ください。
- IEC(国際電気標準会議)
- SMB(標準管理評議会)
- SMB 諮問委員会
- ACEC(電磁両立性諮問委員会)
- ACOS(安全性諮問委員会)
- ACEA(環境諮問委員会)
- TC(専門委員会)
- TC77(EMC)
- SC77A(低周波EMC)
- SC77B(高周波EMC)
- SC77C(高電磁界過渡現象)
- TC22 (パワーエレクトロニクス)
- TC48 (機械的構造)
- TC51 (磁性部品およびフェライト材料)
- TC62 (医療機器)
- TC64 (電気設備と感電保護)
- TC65 (工業プロセス計測制御機器)
- TC81 (雷保護)
- TC101(静電気)
- TC106(人体ばく露に関する電磁界測定装置及び測定方法)
- CISPR(国際無線障害特別委員会)
- CISPR運営委員会
- SC(小委員会)
- SC-A(基本的測定法)
- SC-B(工業・科学・医用装置)
- SC-D(自動車)
- SC-F(家電機器・照明機器)
- SC-I(マルチメディア機器)
- SC-H(エミッション共通規格等)
EMI規格(エミッション規格)・イミュニティ規格(EMS規格)<2>IECにおけるEMC規格の種類一覧
IECでは、EMC規格の作成に当たり下記のようなIECガイド107(EMC規格作成ガイド)を定めているので一覧表を記載する。
① 基本規格 | 用語、電磁環境分類、EMCレベルの仕様、電磁エミッション(EMI)・イミュニティ(EMS)の一般的要求事項、共通的測定・試験法などを規定 |
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② 共通規格 | 住宅、商業、工業等の特定の環境において、全ての製品を対象にした電磁エミッション(EMI)・イミュニティ(EMS)に関する規定値を規定している。 |
③ 製品群規格 | 情報技術装置、家電機器等の特定の製品群に関して、製品群固有のEMC試験法及び限度値を規定している。 |
④ 製品規格 | 特定の製品に関する固有のEMC試験法及び限度値を規定している。 |
EMC規格(ノイズ規格)は、当該機器から放出された妨害波が他の機器に影響を及ぼすのを規制するエミッション規格(EMI規格)と、他の機器からの妨害波によって、当該機器が性能低下や誤作動するのを規制するイミュニティ規格(EMS規格)に分類される。
EMC規格(ノイズ規格)の基本規格に関しては、低周波現象は、エミッション規格(EMI規格)もイミュニティ規格(EMS規格)もTC77の小委員会であるSC77Aが担当している。それに対して高周波現象に関しては、エミッション規格(EMI規格)がCISPRの小委員会であるSC-Aが担当し、イミュニティ規格(EMS規格)がTC77の小委員会であるSC77Bが担当している。一方、共通規格に関しては、低周波と高周波の区別はなく、全周波数をカバーすることとなっており、エミッション規格(EMI規格)はCISPRの小委員会であるSC-Hが担当し、イミュニティ規格(EMS規格)はTC77の親委員会が担当している。
EMC規格(ノイズ規格)の種類 | 電磁現象 | エミッション規格(EMI規格) | イミュニティ規格(EMS規格) |
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基本規格 | 低周波(9kHz以下) | SC77A | SC77A |
IEC61000-4-7(電源高調波) IEC61000-4-15(電圧変動・フリッカ) |
IEC61000-4-11(電圧ディップ) IEC61000-4-13(電源高調波) |
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高周波(9kHz超え) | CISPR/SC-A | SC77B | |
CISPR16-1-1(妨害波試験器) CISPR16-2-1(妨害波試験法) |
IEC61000-4-2(静電気放電) IEC61000-4-3(高周波電磁界) |
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共通規格 | 全周波数 | CISPR/SC-H | TC77 |
IEC61000-6-3(住宅・商業等) IEC61000-6-4(工業) |
IEC61000-6-1(住宅。商業等) IEC61000-6-2(工業) |
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製品群・製品規格 | 低周波(9kHz以下) | SC77A | |
IEC61000-3-2(電源高調波) IEC61000-3-3(電圧変動・フリッカ) |
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高周波(9kHz超え) | CISPR/SC-B・D・F・I | CISPR/SC-F・I | |
SC-B:CISPR11(ISM装置) SC-D:CISPR12(自動車) SC-F:CISPR14-1(家電製品) SC-I:CISPR13(放送受信機) SC-I:CISPR22(情報技術装置) |
SC-F:CISPR14-2(家電製品) SC-I:CISPR20(放送受信機) SC-I:CISPR24(情報技術装置) |
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全周波数 | 製品委員会(TC17,TC18,TC22,TC62,TC65等) | ||
SC17B:IEC60947-2(低圧開閉装置及び制御装置) TC18:IEC60533(船用電気設備及び電子機器) SC22H:IEC62040-2(無停電電源装置) SC62A:IEC60601-1-2(医用電気機器) SC65A:IEC61326-1(工業用プロセス計測制御) |
上の表一覧の通り、TC77とCISPRは、基本規格や共通規格以外に製品群規格も作成している。
低周波現象のエミッション規格(EMI規格)はSC77Aが担当しており、IEC61000-3-2(電源高調波)やIEC61000-3-3(電圧変動・フリッカ)が主要な規格として存在する。高周波現象のエミッション規格(EMS規格)は、CISPRの各小委員会が作成しており、CISPR(ISM装置)、CISPR12(自動車)、CISPR13(放送受信機)、CISPR14-1(家電製品)、CISPR22(情報技術装置)等が主要な規格として挙げられる。一方高周波現象のイミュニティ規格(EMS規格)も、CISPRの各小委員会が作成しており、CISPR14-2(家電製品)、CISPR20(放送受信機)、CISPR24(情報技術装置)等が主要な規格として存在する。
詳細は『EMC電磁環境学ハンドブック』をご覧ください。
<3>TC77が作成する規格IEC61000シリーズの構成一覧
TC77が作成する規格には、IEC61000シリーズの番号が付与される。
IEC61000-1は、EMC用語や安全性などの一般的な事項を規定した規格で構成されており、基本規格という位置づけである。IEC61000-2は、電磁環境の実態や分類、EMCレベルなどを規定した規格で構成されており、基本規格という位置づけである。それに対して、IEC61000-3は、限度値を規定することになっているが、SC77Aで作成されている電源高調波や電圧変動の限度値が規定された規格のみになっており、製品群規格という位置づけになっている。
IEC61000-4は、EMC試験法(エミッション試験・イミュニティ試験)や測定法を規定した規格で構成されており、静電気放電や無線周波電磁界などのイミュニティ試験(EMS試験)法や、電源高調波や電圧変動などの EMI試験(エミッション試験)法などが、代表的な試験法である。
IEC61000-5は、機器の設置法やEMC対策法を規定する規格で構成されており、SC77Cで作成されている規格が多く存在する。SC77Cは当初高々度の核爆発で発生する電磁パルスHEMPに関する試験法や対策法を主に検討していたが、100V/m以上の通常の電磁パルスHPEMに拡張するに伴って、SC77Bで検討していたIEC61000-5-6(外部的影響(フィルター、シールド、サージ防護)も取り込むようになった。
IEC61000-6は、共通規格で構成されている。イミュニティ規格はTC77で作成されているが、エミッション規格はCISPR/Hで作成されている。
詳細は『EMC電磁環境学ハンドブック』をご覧ください。
EMC国内規格・規制の解説(各国で定めたイミュニティ規格・EMI規格)
ここでは日本国内の規格・規制に関して記述します。
<1>日本の国内規格:JIS
日本の工業標準化制度は、工業標準化法、同施行規則、調査会規則等に規定された手続きに従って、国家行政組織法第8条による審議会である日本工業標準調査会(JISC)による調査審議を経て制定される「日本工業規格(JIS)」、及び当該JISへの適合性を評価して証明する制度である「新JISマーク」の二本柱で構成されている。日本工業標準調査会(JISC)の事務局は、経済産業省に置かれている。
JISは、鉱工業品の品質の改善、生産能率の増進、生産の合理化、取引の単純公正化、仕様、消費の合理化を図る等を目的として、鉱工業品の種類、形式、形状、寸法、構造、品質等の要素、また、鉱工業品の生産方法、設計方法、使用方法等の方法、もしくは試験、検査等の方法その他について規定した技術文書として、工業標準化法に基づく手続きによって制定される。
基本規格一覧 | 用語、記号、単位、標準数などの共通事項を規定したもの |
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方法規格 | 試験、分析、検査及び測定の方法、作業標準などを規定したもの |
製品規格 | 製品の形状、寸法、材質、品質、性能、機能などを規定したもの |
▽認証の対象となるJIS
JISのうち、製品に対する品質要求事項、品質確認のための試験方法、表示に関する事項が完備されたものは原則JISマークの対象となる。一部の事項しか定めていない規格、例えば寸法のみしか規定されてない規格は、JIS認証の対象とならない。
▽認証取得の手順一覧
- ① 登録認証機関の選択
- ② 認証の申請
- ③ 品質管理体制の審査及び製品試験
- ④ 登録認証機関による認証可否の判定
- ⑤ 登録認証機関と申請事業者との間で認証契約の締結
- ⑥ 製品へのJISマークの表示
- ⑦ 認証維持審査の受審
詳細は『EMC電磁環境学ハンドブック』をご覧ください。
<2>日本の自主規制制度:VCCI
VCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)は、ラジオ、テレビ等の受信機に障害を与えないよう、情報処理装置および電子事務用機器等の情報技術装置から発生する妨害波に対する自主規制措置を設け、日本国内の健全な情報化社会の発展に貢献することを目的とした協議会である。
自主規制措置の対象は、日本国内に出荷される情報技術装置(ITE)となる。
VCCI自体は会員制度で運用され、協議会の目的に賛同し、自主規制への参加、協力を希望する企業、団体は日本国内、国外を問わず加入できる。
▽自主規制の実施方法
「情報処理および電子事務用等の情報技術装置から発生する妨害波の許容値及び、測定法」に基づき、VCCIが制定した「技術基準」により、会員が自社のITEに対して、日本国内への出荷に先立ち自主的に妨害波の規制を実施する。
①VCCIが規定する情報技術装置(ITE)の区分一覧
クラスB情報技術装置 | クラスB情報技術装置の妨害波許容値を満たす装置。 クラスB情報技術装置は、主に家庭環境で使用されることを意図した装置。 |
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クラスA情報技術装置 | クラスA情報装置の妨害許容値を満たすが、クラスB情報技術装置の妨害許容値を満たさない全ての情報技術装置。 |
②適合確認
VCCI会員は技術基準へのEMC試験(エミッション試験・イミュニティ試験)などによる適合確認及び届け出を行わなければならない。
- (a)技術基準への適合確認
- (b)適合確認の届け出
③表示
VCCI会員が適合確認届出を行ったITEについて、クラスA装置はラベル、クラスB装置はマークをそれぞれ表示する。
詳細は『EMC電磁環境学ハンドブック』をご覧ください。