1.EMC試験とは・ノイズ試験とは

EMC試験とは、『電磁波によって電気機器、電子機器が誤動作しないか確認する試験』です。試験(EMC TEST)対象の電子機器が他の電子機器の発する電磁波の影響を受けたり、他の電子機器が発生する電磁波による影響を受けたりした場合、その電磁波障害によって誤動作しないかEMC試験によって確認します。これがEMC試験です。

仮にEMC試験(ノイズ試験)で誤動作をしてしまうと、規格をクリアできない、認証を受けられなかったりすることとなり、製品出荷に影響を及ぼす恐れが出てきます。ちなみにここで言う電磁波障害とは、ラジオに雑音が入る、テレビの映像が乱れる、オーディオ機器から無線通信の音声が出る、など、電子機器に外部から他の電子機器から発生する電磁エネルギーが入ることによる問題が起きているというものを示します。

機器外から入射する電磁エネルギーは放送波受信といった無線通信に妨害を与えるだけでなく、自動制御システムなどにも妨害を与えて動作に悪影響をおよぼし、場合によっては大事故を引き起こす要因にもなりうる。

こういった、複数の電子機器が存在するときに、それらが互いに電磁的な影響による問題を起こすことがなく正常に動作するための性能をEMC (Electro Magnetic Compatibility、電磁環境両立性) 性能と呼ぶ。すなわち、電子機器が外部へ電磁的な影響を与えず、かつ、外部からの電磁エネルギーによる影響を受けない性能をさす。

具体的には、機器から発生する電磁エネルギーをあるレベルより低くするためのエミッション(EMI) (Emission または、 EMI: Electro Magnetic Interference) 規制と、機器が外部から電磁エネルギーを受けても正常に動作できるようにするためのイミュニティ(EMS)(Immunity, または、 EMS: Electro Magnetic Susceptibility)規制、双方を満たす能力が必要とされる。

電子機器が発生する電磁波が他の電子機器に影響を与えないか、逆に他の電子機器が発生する電磁波で誤動作することなく機能するかをチェックするEMC試験(ノイズ試験)、EMC TESTとも言われ、

  • 加害者としての振る舞い(EMI )の試験
  • 被害者としての耐性(EMS )の試験
の2つに分類されます。

このEMC性能を電子機器が有しているかどうか確認するための試験が、EMC試験(ノイズ試験)である。エミッション(EMI)については、機器から空中に放射される電磁波の強度を測定し、規定以下であることを確認する放射エミッション試験、電源線や通信線に伝導される高周波を測定して規定以下であることを確認する伝導エミッション試験がEMC試験(ノイズ試験)の項目としてある。

同様にEMC試験の一つであるイミュニティ試験に関しても、外部からある強度の電磁波を照射した際に正常動作を確認する放射イミュニティ試験、電源線や通信線に対する高周波印加や、機器への静電気放電や雷サージを与えた際の正常動作を確認する伝導イミュニティ試験がある。

多くの国・地域ではEMCに関連する規制が定められており、製品を販売する際にはEMC規制を満たすことが必要となる。例えばEUでは、EMC指令でほとんど全ての電子機器や設備に対するエミッション(EMI)イミュニティ(EMS)への要求事項が定められている。アメリカではFCC(Federal Communications Commission: 連邦通信委員会)によるエミッション規制、日本では電気用品安全法による指定機器へのエミッション規制がなされている。

このような国・地域による規制の他、業界団体による自主規制もあり、日本ではVCCI協会(以前の情報処理装置等電波障害自主規制協議会)によって、情報処理機器に対する自主規制が行われている。さらに、納入仕様によってEMC規格に適合することを求められる場合もある。

こういったEMC規制では、認可に必要な手続きも国や規格によって異なる。指定のEMC試験場で認可を得る場合、試験結果(EMC TEST Report)を届ける場合、あるいは自己宣言する場合など様々である。そのため、適用するEMC規格の決定、EMC規格の要求事項の確認、認可に必要な手続き等は事前に十分な調査を行い、計画的に進めることが重要である。



2.EMC試験の必要性と規格

EMC試験の必要性は様々だが、主には規格を満たすために実施されることが多い。EMC試験を実施し、該当の規格を満たすことで製品出荷が可能になることが多いからだ。

もちろん、製品の実力評価などのために実施されることも多いが、近年の世界各国の規制強化によりEMC試験で満たさなければならない規格が増えたことも事実だ

EMC規格の詳細は「EMC規格・規制」を見て頂きたい。

そもそも自然現象を探索するためには、実験的手法と理論的手法が存在するが、新現象を発見するためには、実験的手法が必要不可欠である。これがEMCではEMC試験に当たる。
EMC(電磁両立性)の基礎的な学問である電磁気学でも、クーロンの法則、ビオ・サバールの法則、ファラデーの法則等は、実験的手法で見いだされた法則である。
マックスウェルは、それらの法則を体系化して、さらに変位電流を導入して、マックスウェルの方程式を理論的手法で導出して、電磁波が光速で伝搬することを推論した。
しかし、マックスウェルの推論も、ヘルツによる変位電流と光速の実験的検証によって、ようやく真実として認められたのである。

このように実験的手法は極めて重要な手法であるが、その中で最も重要な作業が、現象を定量的に明らかにする測定、つまりEMC試験である。
これがEMC試験の必要性であり、EMCの分野でも、EUT(被試験器)が規制値、各規格を満足しているかどうかを明らかにする試験・測定、すなわちEMC TESTが極めて重要である。

EMC試験サイト例
EMC試験サイト(EMC試験所)の例

3.EMC試験の準備・必要な物

EMC試験・ノイズ試験の際に準備として必要となる物は、まず、出荷される製品そのものである。適合性の判断は最終的に出荷される製品に対して行われるため、試作品を評価して規格適合であった場合でも、その後に部品を変更した場合は原則として全項目再試験となる。次に、製品が単体で動作しない場合は、動作に必要な周辺機器一式も併せて必要となる。機器の配置や接続法が規定されている場合も多く、事前に調査しておく必要がある。

また、EMC試験の一つであるイミュニティ試験の場合は、動作の正常・異常の判断基準も併せて必要となる。定量化が難しいもの、例えば音声に時々雑音が入る、などの場合は判断が曖昧になる場合があり、注意が必要である。



4.EMC試験の流れ・フロー

EMC試験・ノイズ試験の流れとして、まずは事前にEMC試験場と充分な打合せを行うことが重要である。打合せの際には、初めに、自主測定(立会い試験)、依頼試験(受託試験)、または、出張測定(オンサイト測定)、といった試験場利用方法の希望を伝えるとともに、製品の概要、サイズ・重量、電源条件と消費電力、適用規格と試験項目、試験日程希望を連絡するとスムーズに進行する。試験場によっては申込フォームにこれらの項目を記入して提出する場合もある。これが大まかなEMC試験の流れとなるが、わかりやすく下記にEMC試験一連の流れの図を示す。

試験の流れ
手順1
EMC試験所へお問い合わせ
  • EMC試験所へまずは簡単なご要望を伝えます。
試験の流れ
手順2
EMC試験の詳細打合せ
  • EMC試験の実施方法(自主測定、依頼測定、オンサイトなど)
  • EMC試験対象物の詳細(サイズや重量)
  • EMC試験の条件(電源条件や消費電力)
  • 規格(どんな規格に適合させたいか)
  • 日程(試験実施の日程調整)
試験の流れ
手順3
申請フォームの記載
  • EMC試験所によって異なりますが、所定の内容を記載します。
試験の流れ
手順4
EMC試験費用の見積もり
  • EMC試験費用の概算を見積もってもらい、見積書をもらいます。
試験の流れ
手順5
EMC試験実施
  • 実際にEMC試験を実施します。
試験の流れ
手順6
レポートの発行(EMC TEST Report)
  • EMC試験結果に関して、レポート(EMC TEST Report)を発行してもらいます。
試験の流れ
手順7
再試験の有無
  • 試験結果によっては再試験を行うことになります。
試験の流れ
手順8
対策サービスと認可申請書作成
  • EMC試験所によりますが、ノイズ対策のコンサルティングや各種申請書類の代行を依頼できます。

図.EMC試験の流れ・フロー

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5.EMC試験設備の利用方法

まず、EMC試験設備の利用方法については、移動不能な大型機器や設備が試験品の場合、出張測定を依頼する。一方、EMC試験場に持ち込み可能な機器については、自主測定か依頼試験となる。

1) 自主測定(立会い試験)とは

自主測定とは利用者自身が試験品を設置し、EMC試験場の機器を操作して試験を行う。試作品の評価や認証取得前の予備試験として行うことが多いが、EMC試験設備によっては、規格適合性を自己宣言する場合のデータとして使用することも可能である。

使用機器や計測ソフトの使用方法は担当者から説明を受けられるが、別途講習会を開催している場合もある。無償の場合と有償の場合があるため、事前に確認しておくことが望ましい。

2) 依頼試験(受託試験)とは

依頼試験とは、EMC試験場担当者がEMC試験を行って合否判定を行い、試験成績書を発行するものである。この場合は試験品の設置、動作、使用モード設定などは試験場側で行うため、試験品の取扱い手順書が必要となる。

この際、立ち合い試験も可能である。設置状況、試験手順や結果の確認がその場でできるとともに、別途自主測定を行う際の参考にもなるため、積極的に利用されたい。

6. EMC試験の内容と項目・種類

EMC試験の内容と項目、種類に関しては、「EMC試験の基礎」をご覧下さい。

EMC試験の種類であるイミュニティ試験、EMI試験はもちろん、伝導エミッション試験放射エミッション試験、伝導イミュニティ試験、放射イミュニティ試験、電源高調波、電圧変動&フリッカ、静電気試験、雷サージ試験、電気的ファストトランジェントバースト試験、などに関して、各試験項目を詳細な内容と共に記載しています。



7.EMC試験の費用(料金)

EMC試験(ノイズ試験)の費用は大まかに、設備機器使用料、人件費、書類作成手数料、運送費・旅費、に分けられる。EMC試験における費用である設備機器使用料は試験項目に応じた使用設備とその占有時間から費用計算される。自主測定の場合、占有時間は試験内容を考慮して打合せた後に利用者が決定するが、依頼測定や出張測定の場合には試験場が費用(料金)を見積もる。

この際に重要となる点は、試験品の動作モードの数である。多くのEMC規制では、すべての動作モードで試験を行って規制をクリアすること、となっているため、事前に動作モードの数や1動作あたりに要する時間を漏れなく申告することが、精確な見積もりを得ることに繋がる。占有時間の計上は、公設のEMC試験場の場合1時間単位で利用可能な場合もあるが、商用EMC試験場の場合1日単位での利用となる場合が多い。

人件費は、自主測定の場合は不要なことが多いが依頼測定や出張測定の場合では必要となり、試験時間や内容に応じて費用計算される.書類作成手数料は、試験成績書や試験設備の校正・成績証明書、その他技術文書などを発行する際に必要となる。運送費・旅費は依頼測定時の試験品の送受や出張測定時に必要となる。なお、複数の試験場に見積依頼して比較する際、極端に金額・費用が異なる場合には試験項目や使用時間積算などに相違や見落としがないか、注意する必要がある。

<EMC試験(ノイズ試験)の主な費用項目>

  • 設備機器使用料:利用設備、及び占有時間で費用計算(日数、もしくは時間数)
  • 人件費:主に依頼測定、出張測定の際に費用発生
  • 書類作成手数料:試験結果の成績書(EMC TEST Report)、技術文書などの作成費用
  • 運送費・旅費:試験品の送受費用
  • 認可申請代行費用:認可申請の代行を依頼する場合の費用
  • 対策サービス料:規格を満たせない場合などの対策アドバイス費用

8.対策サービス

その他EMC試験場のサービスとして、EMC規格を満たさない場合の対策技術アドバイスが得られる場合も多い。またEMC規格や対策技術のセミナー・講習会を開催する試験場もある.EMC試験場やその内容によって有償、無償、さまざまであるが、対策に困った場合は適宜利用してスキルアップに繋げたい。

9.認可申請代行・技術文書作成

また、EMC試験後の認可申請代行や、試験品とその販売先に応じたEMC試験規格や試験項目の決定といったコンサルタント業務を行うところもある。EMC試験後には、試験報告書とともに、 規制適合している根拠を示す技術文書を作成して当局に申請・届出を行う必要がある。これに加え、規制適合していることを示すマーキング表示やエンドユーザーに対する注意事項の添付なども適宜必要となる。こういった業務を漏れなく行うために、EMC試験(ノイズ試験)を実施する際には申請代行やコンサルタント業務を利用することも有効であろう。

(著)秋田産業技術センター

10.主要な全国EMC試験所の検索・一覧

全国の主要なEMC試験所を検索されたい場合は下記をご覧下さい。