1.放射エミッション試験とは何か、と概要

放射エミッションの測定では供試機器(EUT)である電子装置から放射される電磁ノイズを数~数十m(典型的には10m, 3mなど)離れた位置に設置したアンテナで受信し,強度を測定する.代表的EMC規格として,工業,科学及び医療用(ISM)装置向けのCISPR11,家電製品向けのCISPR14,電気照明類向けのCISPR15,マルチメディア機器向けのCISPR32等がある.

測定周波数範囲は30 MHz~1 GHzの場合が多いが規格によって異なる.これより低い周波数の測定を要求される例としてCISPR11 グループ2のISM機器が挙げられる.また,測定上限周波数が1GHzを超える例としてはCISPR32,VCCI,米国FCC Part15 Subpart B等が挙げられる.

特に1 GHz以上の周波数の測定を行う場合,測定上限周波数が供試機器内部の最高動作周波数によって変化する場合も多く,その上,この動作周波数に無線通信で使用する周波数を含む/含まない,など,規格によってさまざまな条件がある.

また,後述する測定操作に関しても,受信アンテナ高さをスキャンする場合や固定する場合など,同一規格であっても規格改定によって変更される場合があり,注意が必要である.

2.放射エミッション試験・測定方法の例

測定環境は測定周波数によって異なり,周波数30MHz~1GHzではオープンサイトや半(5面)電波暗室で,1GHz以上では床面にも電磁波吸収体を敷設した完全(6面)電波暗室で行う.半電波暗室内で卓上機器を測定する場合について,配置模式図を図aに,セットアップ例を図bに示す.

高さ0.8mの非導電性テーブル上に供試機器を設置する.配置の中心点はターンテーブル中心に合わせ,機器背面はテーブル背面に近づける.供試機器が複数のユニットから構成される場合,ユニット間の距離を0.1mとしてユニット間を接続するケーブルはテーブル背後に垂れ下げる.



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この時ケーブル最下点が床面から0.4m以下になる場合は,最下点が0.4mとなるように余分を0.4m 以下の長さで束ねる.電源線はテーブル背面から床まで自然に垂れ下げ,途中で束ねずに電源に接続する.詳細は測定規格の要求事項を参照されたい.

卓上機器の放射エミッション試験の配置模式図
図 a. 卓上機器の放射エミッション試験の配置模式図

これらユニットの配置やケーブルの取り回しが測定結果に影響するため,設置状況を写真等で記録することが重要である.記録に沿って一連の測定を同一配置で行うことにより,測定結果の再現性を確保しやすくなる.

放射エミッション試験セットアップ例
図 b. 放射エミッション試験セットアップ例

受信アンテナは供試機器から規格で定められた距離(10m, 3mなど)に設置する.距離の基準点は規格によって異なり,ターンテーブル中心から測る場合と機器を囲む仮想外周円から測る場合があるため,確認が必要である.アンテナ側はアンテナ校正時の参照点となる.

機器を設置した後,プレスキャン測定を行う.広帯域アンテナおよびスペクトラムアナライザを使用して測定周波数帯域全体を観測する.スペクトラムアナライザをMax Holdモードにセットし,ターンテーブルを0-360度回転,アンテナは高さ1-4mの範囲でステップ移動させて最大値を検出し,エミッションが高い周波数をリストアップする.

測定は水平・垂直それぞれの偏波で行う.代表的な使用状態でケーブルの位置や配置を変えるとともに,機器の動作モードや電源電圧,周波数が複数ある場合はそれらを変え,最大エミッションを生じる状態を決定する.

3.放射エミッション試験の結果と対策

この測定結果より,許容値越え,又はマージンの少ない周波数に対して,規格で定められた検波器(ピーク,QP, 平均値など)を使用して強度を測定する.各周波数でアンテナ高及びターンテーブル角度を連続的に変えて放射が最大となる状態とし,強度を記録して合否判定する.

複数の検波器それぞれで許容値が定められている場合は,すべての検波器でそれに対応した許容値に合格する必要がある.なお,規格によってはディシジョンツリーが定義されており(CISPRなど),測定値と許容値との大小関係によって一部検波器による測定を省略できる場合がある.

(著)秋田県産業技術センター



4.不要輻射試験(放射EMI)試験とは?

  • EUT(供試品)から空中に放出された電磁波の強度をアンテナを使用して測定する試験
  • オープンサイト又は電波暗室を用いる
  • EUT(供試品)を回転させ、アンテナの位置を変えながら最も強い強度を測定する
  • 測定距離は3m、10mが一般的

5.不要輻射試験(放射EMI)試験システム構成

  • 測定周波数帯域:30MHz~1GHz(規格により1GHzを超えます。)
  • 使用機器:EMIレシーバ、スペクトラムアナライザ、アンテナ(バイコニカル/ログペリ/バイログ/ホーン)、アンテナポジショナ、プリアンプ、オープンサイト又は電波暗室
  • 測定単位:dBμV/m

6.放射エミッションと伝導エミッション

放射エミッションに対して、伝導エミッションも存在するが、伝導エミッションに関しては「伝導エミッションとは」で別途解説します。



7.放射エミッションの規格

放射エミッションの規格に関しては「EMC規格・規制」をご覧下さい。