1.伝導エミッション試験とは何か、と概要

伝導エミッションの測定では供試機器(EUT)である電子装置から電源線や通信線を介して外部に伝播するエミッションの電圧を測定する.代表的EMC規格として,工業,科学及び医療用(ISM)装置向けのCISPR11,家電製品向けのCISPR14,電気照明類向けのCISPR15,マルチメディア機器向けのCISPR32等がある.

測定周波数範囲は150 kHz~30 MHzの場合が多いが規格によって異なり,CISPR15の電源線では9kHz~30MHz,電気用品安全法(PSE)省令第1項では526.5kHz~30MHzといった場合もある.

測定は接地面上に供試機器および雑音電圧測定用の回路網を配置して行う.電源線に重畳されるエミッションを測定する場合は疑似電源回路網(AMN,別名ラインインピーダンス安定化回路網: LISN)を,通信線に重畳されるエミッションを測定する場合は非対称疑似回路網(AAN,別名インピーダンス安定化回路網: ISN)を使用する.

これら回路網によって電圧測定時の高周波インピーダンスが規定される.インピーダンスが異なると測定される電圧が変化するため,規格で定められたインピーダンスをもつ回路網を使用する必要がある.

測定は,外来ノイズの影響を低減するため,シールドルームや電波暗室内で行うことが望ましい.測定に使用する機器を規格に従って配置する際には,垂直基準接地面,水平基準接地面,2種類の異なる基準接地面の取り方がある.これらの測定結果は一般に異なるため,異なる試験場での測定値を比較する場合は特に注意が必要である.

2.伝導エミッション試験・測定方法の例

水平基準接地面上で卓上機器を測定する場合について,配置模式図を図c に,実際のセットアップを図d に示す.

卓上機器の伝導エミッション試験の配置模式図
図 c. 卓上機器の伝導エミッション試験の配置模式図

2m×2m以上の大きさの金属面を水平基準接地面とし,基準接地面から高さ0.4mの非導電性テーブル上にEUTを設置する.EUTの動作やモニターに必要な関連機器(AE)があれば,併せてテーブル上に設置する.接地面以外の金属物はEUTから0.8m以上離す必要がある.AMNはEUT/AEから0.8mの距離となるように基準接地面上に設置する.

EUTからの電源ケーブルを一つのAMNに接続し,それ以外のAE等の電源ケーブルは別のAMNに接続する.電源ケーブルに余分がある場合は,0.4m未満の長さで束ねる.詳細は測定規格の要求事項を参照されたい.

これらユニットの配置やケーブルの束ね方,ケーブルと基準面との間隔などが測定結果に影響するため,設置状況を写真等で記録することが重要である.記録に沿って一連の測定を同一配置で行うことにより,測定結果の再現性を確保しやすくなる.

伝導エミッション試験セットアップ例
図 d.伝導エミッション試験セットアップ例

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3.伝導エミッション試験の結果

機器を設置した後,プレスキャン測定を行う.EUTに接続したAMNの信号出力をスペクトラムアナライザに入力して測定周波数帯域全体を観測する.電源線は単相の場合2本あるため,それぞれの線( Neutral / LineまたはVA/VB)についてAMNのスイッチを切り替えて測定を行う.

代表的な使用状態で機器の動作モードや電源電圧,周波数が複数ある場合はそれらを変え,最大エミッションを生じる状態を決定する.この時,測定周波数帯域外の信号からの影響についても注意が必要である.帯域外の周波数(低い周波数の場合が多い)で非常に強いノイズが発生し,この成分によってスペクトラムアナライザが歪んで正確に測定できない場合がある.

スペクトラムアナライザの過入力表示に注意するとともに帯域外の周波数も観察し,過入力の場合はAMNの信号出力に減衰器を付加する等の対策を行う.

この測定結果より,許容値越え,又はマージンの少ない周波数に対して,規格で定められた検波器(ピーク,QP, 平均値など)を使用して強度を記録して合否判定する.複数の検波器それぞれで許容値が定められている場合は,すべての検波器でそれに対応した許容値に合格する必要がある.

(著)秋田県産業技術センター

4.雑音端子電圧(伝導EMI)試験とは?

  • ケーブルを伝播してくる電磁波を測定する試験
  • 擬似電源回路網(LISN)を使用し、EUT(供試品)から電源線に流れる高周波電圧を測定

5.雑音端子電圧(伝導EMI)試験システム構成

  • 測定周波数帯域:150kHz~30MHz
  • 使用機器:EMIレシーバ、スペクトラムアナライザ、疑似電源回路網(LISN/Line Impedance Netw バンドパスフィルタ、パルスリミッター、グランドプレーン、シールドルーム
  • 測定単位:dBμV


6.妨害電力(伝導EMI)試験とは?

  • 吸収クランプ(Absorbing Clamp)を使用してEUT(供試品)から電源線に流れ、その電源線から空中に放射される高周波雑音を電力値として測定する試験

7.妨害電力(伝導EMI)試験構成

  • 測定周波数帯域:30MHz~300MHz
  • 使用機器:EMIレシーバ、スペクトラムアナライザ、吸収クランプ、補助クランプ、クランプレール、シールドルーム
  • 測定単位:dBμV


8.伝導エミッションと放射エミッションの違い

伝導エミッションに対して、放射エミッションも存在するが、放射エミッションに関しては「放射エミッションとは」で別途解説します。こちらで伝導エミッションと放射エミッションの違いを比較して欲しい。

9.伝導エミッションの規格

伝導エミッションの規格に関しては「EMC規格・規制」をご覧下さい。