1. 電磁界シミュレーションソフトとは何か

電磁界シミュレーションソフトとは、電磁界解析を行うシミュレーションソフトのことです。つまりEMC分野におけるシミュレーションソフトウェアは、EMI(Electro Magnetic Interference)や EMS(Electro Magnetic Susceptibility)のようなノイズ現象や伝送線路の伝搬特性の模擬や解析などに用いられるソフトウェアのことです。

EMIEMSの「EM」はElectro Magneticの頭文字であるように、これらは電磁界現象に関する特性です。電磁界現象とは、プリント板や筐体またはワイヤなどに電流が流れた場合、誘導により別の場所に電流が誘起されたり、電磁界放射や入射により誘導電流が発生する現象で、スイッチングノイズや静電ノイズなどが電磁界結合により様々に誘導されます。

電磁界問題は大きく2つのカテゴリに分けられます。1つはプリント基板問題に代表される2.5次元と呼ばれる層構造のものを解析する場合と、筐体やケーブルなどの3次元構造物を解析する場合です。さらにプリント基板問題は、全電磁界成分を計算する手法と、基板内で支配的な成分のみを解析する手法に分けられます。

前者は主に高精度を必要とするマイクロ波回路や高速伝送の解析などに用いられます。全電磁界成分を計算すると、高精度な解は得られますが、大規模なプリント基板は、現実的な解析時間やコンピュータリソースでは厳しくなります。一方電磁界成分を限定して計算する手法の場合、精度は下がりますが、基板全体のような大規模領域まで解析が可能になります。

静電ノイズやRFノイズでは、ノイズ成分の基板全体への広がりを解析する必要があるため後者の手法が多く用いられます。SI問題などの高速信号伝送問題などでは、全電磁界成分が関与することが多くなりますので、前者の手法を用いてプリント基板の一部を抜き出して高精度な解析を行います。

また、ノイズ問題の要因となるものはスイッチング信号などの回路動作に起因するものも多く、このためEMCに関する多くの電磁界シミュレーションでは、種々の電磁界解析手法とさらに回路解析を連携してノイズに関する現象を解析することが多くなります。

2. 電磁界シミュレーションソフト(EMCシミュレーションソフト)の使い方

電子機器におけるノイズ特性は、プリント板のパターンやワイヤや筐体の構造に依存するので、本来はこれらをすべて含めて解析を行うことが理想ですが、現在の一般的なコンピュータの処理能力では現実的な解析時間では難しい場合が多いため、プリント板部分の電磁界シミュレーションと、ワイヤや筐体など3次元的な電磁界シミュレーションを分ける場合が多くなっています。

1)プリント板に関する電磁界シミュレーションでは、2種類の使い方があります。1つは、電源-グランド間のプレーン共振を電磁界シミュレーションソフトで計算する場合、もう一つは、信号ラインなどの伝送特性を電磁界シミュレーションソフトで計算する場合です。前者は基板の放射特性や静電ノイズ特性などの解析に必要で、対向面の検討やパスコンの位置の検討などに用います。

また後者は全電磁界成分を解析可能な高精度の多層基板解析ツールを用いて、信号の伝送特性やクロストークなどの解析を行い、ミックスドモードSパラメータなどから特性インピーダンスや差動線路の位相ずれの検討などを行います。またEMCの解析で重要な点は、回路素子をプラスし実装状態でプリント板全体の特性をシミュレーションすることです。例えば、基板内でのスイッチング動作などはノイズの伝搬の解析には非常に重要な要素になります。

2)筐体やワイヤに関する電磁界シミュレーションは、3次元構造であるために、完全な3次元電磁界解析が必要になります。一般的に入力は、機構設計CADの3次元データを使用します。3次元電磁界で得られる結果は、近傍電磁界特性や遠方における電界強度などですので、筐体のスリットからの放射や、ケーブルからの放射特性などがわかります。これらの結果から、 フェライトなどの対策部品の追加や筐体構造やワイヤ長を変更した場合の放射特性の検討などに用いることができます。

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3. 電磁界シミュレーションソフト(EMCシミュレーションソフト)を使うタイミング

電磁界シミュレーションソフトを用いるタイミングは、電子機器の設計時と完成後のノイズ対策時があります。設計時においては、部分的なプリントパターンの特性解析に用いることが多く、電源-GNDパターンの共振周波数やパターン間のクロストーク特性、放射特性などの初期解析に用いられます。

機器完成後の用途としては、例えば、放射ノイズや伝導ノイズを抑えるために、実装状態の基板全体の解析を行い対策部品やパターン変更によるノイズ抑圧効果などをシミュレーションします。昨今の電子機器は、小型でプリント基板も多層高密度化されており、アンテナや高周波回路も多数内蔵されていますので、シミュレータを用いずにはノイズ現象の把握が困難になってきています。

今後は5G機器などに対応するために、3次元電磁界をフル活用したミリ波帯域までの解析の必要性も多くなると考えられます。

図a)共振特性の解析例
図b)伝送線路解析例
図c)3次元電磁界解析例

(著)株式会社エム・イー・エル

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