トポロジカル相からカオスへの転移を発見~非線形トポロジカル物質の原理の解明と応用に向けて~(JST)

2025.2.3更新

ポイント

  • 非線形なトポロジカル物質において、非線形性が強い領域でトポロジカル相がカオスへと転移し、バルクエッジ対応が破れることを明らかにした。
  • トポロジカル物理と非線形力学系の理論を掛け合わせ、非線形トポロジカル物質を解析するための新たな理論的枠組みを提案した。
  • 非線形デバイスにおいて、トポロジーやカオスの効果を活用した設計原理につながることが期待される。
  • <概要>

    筑波大学 数理物質系物理学域の曽根 和樹 助教(研究当時:東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻 大学院生)、東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻の江澤 雅彦 講師、ゴン・ゾンピン 准教授、澤田 太郎 大学院生、沙川 貴大 教授、および同大学 素粒子物理国際研究センターの吉岡 信行 准教授(研究当時:大学院工学系研究科 物理工学専攻 助教)らによる研究グループは、非線形なトポロジカル物質を理論的に解析することで、それがトポロジカル相からカオスへの転移を起こすことを明らかにしました。このカオスへの転移は、バルクエッジ対応と呼ばれるトポロジカル物質の基本原理の破れを非線形系で引き起こします。本研究は、これまで主に線形系で研究されてきたトポロジカル物質の理論を非線形系へ拡張するための手法として、力学系理論と組み合わせた理論的枠組みを提案しました。さらに今後、本研究で開発した理論的手法を用いることで、トポロジーやカオスの効果を活用した非線形デバイスの設計につながることが期待されます。
    本研究成果は、2025年1月29日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されます。
    本研究は、科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」(プログラムディレクター:北川 勝浩 大阪大学 量子情報・量子生命研究センター センター長) 研究開発プロジェクト「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発(JPMJMS2064)」(プロジェクトマネージャー(PM):古澤 明 東京大学 大学院工学系研究科 教授)による支援を受けて行われました。

    本研究は、JST ERATO「沙川情報エネルギー変換プロジェクト(課題番号:JPMJER2302)」、JST CREST「電気回路によるトポロジカル量子計算方法の創生」(課題番号:JPMJCR20T2)、JST CREST「非古典スピン集積システム」(課題番号:JPMJCR20C1)、JSPS 科学研究費助成事業 新学術領域(研究領域提案型)「情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理」の計画研究班「情報熱力学による生体情報処理の理論研究」(課題番号:JP19H05796)、JSPS 科学研究費助成事業 基盤研究(A)「トポロジカルMEMS工学の創生」(課題番号:23H00171)、JSPS 特別研究員奨励費「アクティブマターにおけるトポロジカル現象の研究」(課題番号:21J20199)、東京大学 統合物質・情報国際卓越大学院(MERIT-WINGS)、東京大学 卓越研究員制度、東京大学 Beyond AI研究推進機構の支援により実施されました。


    <プレスリリース資料>

    本文PDF(597KB)


    <論文タイトル>

    “Transition from the topological to the chaotic in the nonlinear Su-Schrieffer-Heeger model”

    DOI:10.1038/s41467-024-55237-3


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