1.通信機器のEMC試験とノイズ規格
有線機器における電磁両立性EMCの国際規格としては、CISPR32(エミッション)、CISPR35( イミュニティ)が適用される。ただし、過電圧保護規格として、ITU-T Kシリーズ(通信センタ:K.20、ユーザビル・宅内:K.21、アクセス系:K.45)に準拠した各国規格が規定されており、試験レベルは各国基準で異なる。また欧州ではEMC規格としてEN300 386などが制定されている。
EN 300 386を構成する主な試験項目 | |
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EMI試験(エミッション測定) | イミュニティ試験 |
伝導妨害波測定 EN 55032 | 静電気放電試験 EN 61000-4-2 |
放射妨害波測定 EN 55032 | 放射無線周波電磁界試験 EN 61000-4-3 |
電源高調波測定 EN 61000-3-2 | 電気的ファストトランジェント/バースト試験 EN 61000-4-4 |
電圧変動・フリッカ測定 EN 61000-3-3 | サージ試験 EN 61000-4-5 |
伝導妨害試験 EN 61000-4-6 | |
電圧ディップ・瞬断試験 EN 61000-4-11 |
無線機器としては、日本国内では電波法となり、欧州ではRE指令に従って、EN300 328やEN300 220など独自の無線規格があり、EMC規格としてはEN301 489シリーズが制定されている。EN301 489-1を基本とし、製品の種類によって、-3,-9,-17など個別要件が規定され、RE指令としては、人体暴露のEMF規格や安全規格も要求がある。また、欧州の規格を国内規格として準用している国も複数存在する。
EN 301 489シリーズを構成する主な試験項目 | |
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EMI試験(エミッション測定) | イミュニティ試験 |
伝導妨害波測定 CISPR 32 車載機器などDC機器はCISPR 25のAMNを用いる。 |
静電気放電試験 IEC 61000-4-2 |
放射妨害波測定 CISPR 32 製品によって測定周波数/許容値が異なる。 また、放射妨害測定は補助機器に対してのみ適用される。 |
放射無線周波電磁界試験 IEC 61000-4-3 |
電源高調波測定 IEC 61000-3-2 | 電気的ファストトランジェント/バースト試験 IEC 61000-4-4 |
電圧変動・フリッカ測定 IEC 61000-3-3 | サージ試験 IEC 61000-4-5 |
伝導妨害試験 IEC 61000-4-6 | |
電圧ディップ・瞬断試験 IEC 61000-4-11 | |
過渡サージ ISO 7637-2 |
EN301 489は製品クラスとして、固定して使用する機器、ポータブル機器、車載機器の3つがあり、クラスごとに適用される試験項目が異なる。 EN301 489シリーズのイミュニティ試験においては、試験ごとに要求される基準となる判定があり、それらを確認維持しながら試験を行う為、対向装置、信号レベル、方式などを定めて試験を行う必要があり、試験前に性能判定基準を決定する必要がある。
また、イミュニティの試験条件として、無線機器のスタンバイ動作での試験と判定が要求されており、例えば携帯の機内モードといった、無線通信を停止した状態で意図しない発信を行わないかを確認することが要求され、試験前に試験品の設定をあらかじめ決めておく必要がある。EN301 489-3/-17など個別規定には除外規定など特有の試験条件が規定され、試験内容が変わってくるため、個別規定がどれが適用されるのか、確認する必要がある。
EN 301 489シリーズの主な除外帯域と特有試験条件 | ||
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シリーズ | 除外帯域 | 特有の試験条件 |
EN 301 489-1 | チャンネル幅の250% | - |
EN 301 489-3 |
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放射無線周波電磁界試験 (IEC 61000-4-3)の試験周波数を変更 -1 : 80-6000 MHz -3 : 80-2700 MHz |
EN 301 489-17 |
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試験条件や判定基準を追加で規定 |
EN 301 489-19 | 受信帯域の±5% | 放射無線周波電磁界試験 (IEC 61000-4-3)にスポット周波数でのパルス変調の印加試験を追加 |
EN301 489シリーズは、発行される版によって参照規格の年版が異なっている。例えば、過渡サージISO 7637-2はEN301 489の発行版によっては参照が異なり、印可する条件が変わってしまうため、適用する版には注意が必要である。
(著)日本品質保証機構