光トランシーバでの高速化と低ノイズ(月刊EMC)

2019.2.1 更新
光トランシーバでの高速化と低ノイズ(月刊EMC)

【光通信網の概略図】

 図に光通信網の概略図を示す。光通信網では光ファイバを通して、様々な支線や幹線から集積通信装置に光信号が送られる。例えば、Access 系から光ファイバを通して集線装置と呼ばれる光ルータ/ スイッチ(以下、ネットワーク機器)に信号が送られると、ここで信号の多重化が行われ、長距離幹線系へ送信が行われる。

 または、他の経路(例えば、Enterprise への経路)に光信号が割り当てられ送信される。光トランシーバは、この光通信網の中でネットワーク機器内に用いられ、光ファイバからの光信号を電気信号に変換しネットワーク機器内に電気信号を伝送させる機能と、ネットワーク機器からの電気信号を光信号に変換し光通信網に伝送させる機能を持つ。

 光トランシーバに入ってきた光信号は、光受信モジュール(ROSA:Receiver Optical Sub-Assembly)にて電気信号に変換される。その後、電気信号は、FPC(Flexible Printed Circuit board)やPCB(Printed Circuit Board) を伝送し信号処理IC(Integrated Circuit)を経てネットワーク機器へと伝送される。また、ネットワーク機器からの電気信号は信号処理IC・レーザ駆動IC(LDD:Laser Diode Driver)を伝送し光送信モジュール(TOSA:Transmitter Optical Sub-Assembly)より光信号として出力される。

 以上から分かるように光トランシーバ内部の信号では、ほとんど電気信号が用いられ、上記に挙げた能動素子が代表的な電磁放射ノイズ源として振る舞う。また、微弱な光信号を受信し、電流変換するAPD(Avalanche Photo Diode)を用いたROSA や高密度に配線された線路では外部からの電磁ノイズの影響を受ける恐れもある。

 現在、FPC やPCB を伝送する電気信号は、50Gbit/sから100Gbit/s にも達しつつあり、その信号伝送には、NRZ(Non-Return to Zero)以外にもPAM4(Pulse Amplitude Modulation)と言った振幅変調方式の信号も使われ始め、PCB やFPC には広帯域で低損失な信号品質が要求されていると共に、光トランシーバからの電磁放射ノイズを抑制する周波数は1G ~ 40GHz(例えば、FCC Part 15 要求)となっている。これほどの高速伝送が必要となった経緯には、インターネットの普及によるユーザの増大やハイビジョン動画などのリッチコンテンツの普及、スマートフォンユーザー増加やIoT(Internet of Things)によるトラフィック量の増大が挙げられる。

 2016 ~ 2021 年の世界のトラフィック予測によると、2016 年から2021年までにおける全世界のIP トラフィック総量の年平均成長率は24% となっている。そして、2021 年に予測される全世界のIP トラフィック総量は約3.3ZB(278 エクサバイト/ 月)に達すると予測されており、このトラフィック量は、2016 年の約3 倍と予測されている。このように日本を含め世界のトラフィック量は、年々増大の一途をたどり、その結果、一回の通信で大容量が送れるシステムやより高速な通信システムが必要とされる。

続きは『月刊EMC No.368』にて


【月刊EMC No.368 目次情報】

<新製品とEMC [11]>
・遠隔監視システム「コルソス CSDJ-A」
 (NEC プラットフォームズ(株))
・IEC 62368-1(J 60950-1)オーディオ・ビデオ、情報通信技術機器の安全規格
 ((株)UL Japan 金野郁郎)
・CISPR 32 第2.0版解説
 マルチメディア機器のエミッション規格の解説と今後の動向
 (情報通信審議会情報通信技術分科会 雨宮不二雄)

<特集>
◇基礎講座「EMC設計とシミュレーション」
・モーメント法によるEMCシミュレーションの基礎
 ((株)JSOL 坪井成文)
・イントロダクションーEMC設計の基礎、EMCの規格と規制ー
 (拓殖大学 澁谷昇)

<Technology>
・超広帯域(UWB)無線の電波法最新状況とEMC対策
 (横浜国立大学 河野隆二、小林匠)
・光トランシーバでの高速化と低ノイズ
 (住友電気工業(株) 大森寛康)

<New&Now 規格・規制情報>
・EN 300 328規格の解説
 2.4GHz ISM帯域の無線機器規格
 (コンチネンタル・オートモーティブ(株) 橋本直樹、テュフ ラインランド ジャパン(株) 張品)
・ISO 13482を活用した医療機器のCEマーキング(欧州MDD)の認証
 ((一財)日本品質保証機構 清水雄一郎)
・IEC 62282-3-100/201の概要解説
 燃料電池発電システムにおけるEMC規格
 (田島收技術士事務所 田島收)
・IEC 62920 Ed.1 概要解説
 製品EMC規格 太陽光発電システム用パワーコンバータ
 ((一社)日本電機工業会 出口洋平)

<Information>
・UU数が20万人を突破した、EMCポータルサイト『CEND』で見えるEMC業界
 (月刊EMC 編集部)

<実践講座>
・パワーエレクトロニクスとノイズ対策④
 ディジタル回路のアナログ回路との違い
 ディファレンシャルモードとコモンモード
 (大島研究所 大島正明)

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