1.船級機器のEMC試験とノイズ規格

EMC(電磁両立性)の国際規格としてはIEC60945, IEC60533, IACS E10が制定されており、各国がこの規格をもとに規格を制定・運用している。エミッションCISPR16-2-1およびCISPR16-2-3が引用され、イミュニティはIEC 61000-4シリーズが引用される。引用する基本規格によっては配置や試験条件が異なるため、適用する基本規格の年号は試験前に把握することが必要である。他の一般的な製品群規格で要求される、電源周波数磁界試験は規定されていない(電源からの磁界のイミュニティ影響が想定されないため)。

IEC 60945, IEC 60533, IACS E10を構成する主な試験項目
EMI試験(エミッション測定) イミュニティ試験
伝導妨害波測定(電源) CISPR 16-2-1 静電気放電試験 IEC 61000-4-2
放射妨害波測定(電界・磁界)CISPR16-2-3
3m距離で規定されており、 下記の周波数範囲と検波で規定している。
150 kHzから30 MHz:QP検波
30 MHzから1000 MHz:QP検波
1000 MHz から 6000 MHz:AVE検波
  • 救難信号の周波数帯域である154 MHz 165 MHzにおいて許容値が24 dBμV/mと他の帯域より低く設定されている。
放射無線周波電磁界試験 IEC 61000-4-3
電気的ファストトランジェント/バースト試験
IEC 61000-4-4
サージ試験 IEC 61000-4-5
高周波伝導妨害試験 IEC 61000-4-6
低周波伝導妨害試験
  • 一部IEC 61000-4-16を引用している
電圧変動試験

各国規定によっては周波数範囲等異なる条件もあり、厳しい条件で試験することが一般的である。
磁界の許容値など、かつては各国のデビエーションがいくつかあったが、昨今はほぼ統一され、IACS E10の基準とほとんど同一条件とる。船級試験として特有の製品カテゴリや試験項目は下記となる。

2.製品カテゴリ

EMC(電磁両立性)の製品カテゴリとして、2種類に分類される。

1) 船橋や甲板に置かれる機器:
EMIの許容値が厳しい。高周波伝導イミュニティ試験試験において、3Vrms ではなくm10 Vrmsにレベルを上げて、スポット周波数、2,3,4,6.2,8.2,12.6,16.5,18.8,22,25MHzで評価を行う。

2) 船橋や甲板に置かれる機器:
EMIの許容値が上記に比べて緩い。

周波数範囲 船橋や甲板に置かれる機器 船橋や甲板以外に置かれる機器
0.15-0.3 MHz 80-50 dBμV/m 96-50 dBμV/m
0.3-30 MHz 50-34 dBμV/m 60-50 dBμV/m
30 MHz-156 MHz 54 dBμV/m 50 dBμV/m
156 MHz-165 MHz 24 dBμV/m 96-50 dBμV/m
165 MHz-2 GHz 54 dBμV/m 60-50 dBμV/m

3.他の製品群規格とイミュニティ試験の条件の差異

一般的な製品群規格と比べて下記条件がある。

試験全般:ボンディング等必ずアースを取る必要がある

静電気試験:接触放電として、+/-6kV,

ファーストバースト試験:1極性 試験時間が5分

サージ試験:線間が+/-0.5 kV, 対地間が+/-1 kV

4.低周波伝導妨害試験

他の製品群規格にない試験要求として、低周波の伝導妨害試験があり、専用の機材(信号発生器、アンプ、トランス等)を用いて、下記条件で試験を行う。

1) 交流機器
周波数範囲:定格周波数の200次高調波まで
試験電圧(実効値):
15次高調波まで給電電圧の10 %,100次から200次高調波までは給電電圧の 1 %,最大 2 W

2) 直流機器
周波数範囲:50 Hzから10 kHz; 試験電圧(実効値):供給電圧の 10 %,最大 2 W。
規格によって最小は3 Vrms
例えば、24VDC 機器の場合は機器の場合は 3Vrmsで一律の電圧レベルで評価を行う。

5.電圧変動試験

船級試験として、交流、直流それぞれ、電圧及び周波数の変動試験が下記特有のパラメータで規定されている。試験時間は製品の動作サイクルによって決まる。

交流電源
番号 電圧変動 [%] 周波数変動[%]
1 +6 +5
2 +6 -5
3 -10 -5
4 -10 +5
過渡評価 変動時間(1.5秒) [%] 変動時間(5.0秒) [%]
5 +20 +10
6 -20 -10
  • 5,6は電圧変動と周波数変動を一度に行う必要がある。
直流電源
電圧変動許容値 +/-10%
電圧脈動 5%
電圧リップル 10%

充電中の蓄電池に接続 している機器は,+30から?25 %まで,又は充電装置からのリップル電圧を含む充放電特性によって,定めた値。 充電中の蓄電池に接続していない機器は,+20から?25 %までの値

6.環境試験

船級試験としては、振動試験、温度傾斜試験など、EMC試験以外に環境試験が規定されている。

(著)日本品質保証機構