EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

一般財団法人 日本品質保証機構
芝田 侯生

新年を迎え謹んでお慶びを申し上げます。

一般財団法人日本品質保証機構(JQA)は2017年10月に創立60周年を迎えました。1957年に財団法人 日本機械金属検査協会として設立してから60年、皆様のご支援により今日に至っております。これらJQAの活動はひとえに皆様のご支援の賜物であり、心より感謝申し上げます。

最近、お客様との話の中で製品のユーザビリティやソフトウェア評価、リスクアセスメントに関する相談を受ける事が多くなりしました。形式試験を中心とした従来型の取り組みから,製品のライフサイクルプロセスやリスクマネジメントへの対応等、製品の多様化・高度化に合わせ、試験機関へ求められる評価の対象・内容も刻々と変化しているのを実感致します。

リスクアセスメントとEMC

JQAが注力している分野にパーソナルケアロボットの認証があります。パーソナルケアロボットの安全性規格であるISO 13482は、2014年に発行された国際規格です。ISO 13482が想定する範囲は、医療用途で使われるものなどを除き、利用者の生活の質の向上のためにタスクを実行するロボットの安全要求事項、安全関連制御システムに関する要求事項、使用上の情報(マニュアル等)など幅広いものとなっています。ISO 13482の要求事項は、リスクアセスメントを実施することから始まります。その結果、リスク低減が必要な場合、リスク低減プロセスを適用しなければならず、このプロセスにおいて、例えばリスクを低減のための保護方策に制御を使用する場合には、関連する機能安全規格へ適合させる必要があります。

このようにISO13482では最初にリスクアセスメントを実施し、適用したリスク低減のための保護方策の検証のため、必要な評価(試験)を抽出していきます。従来の製品評価でなされてきた「製品が完成してから試験を実施する」という手法と異なり、製品の開発段階からの評価が求められることになります。一方、EMC試験は、リスクアセスメントの過程において安全要求の必要な一部としての電磁両立性(干渉しない/耐性を持つ)の担保であり、実質的に試験の過程でEMCとしてリスクアセスメントが求められる事はありません。完成品に対しての試験という位置付けで、規格要求事項への適合が主たる目的となります。その中でも2014年に発行された医療機器のEMC試験規格IEC60601-1-2(Ed.4)では『合理的に予見可能な電磁妨害によって引き起こされるリスクはリスクマネジメントによって考慮するのが望ましい』となっています。製品が使用される環境下において想定されるリスクを抽出し、それらに対するリスクマネジメントによって、使用環境・試験構成、試験レベル・動作モード・合否判定基準等を決定する事が求められ、規格適合のプロセスとしてそのような活動がなされている事を確認する必要があります。製品の多様化・高度化に合わせて、基準が本質的に求める安全要求の明確化とそれの判断の精密さを求めて、「本質的安全要求+(試験方法・判定基準with/withoutリスクアセスメント)」の組み合わせへ流れる傾向があります。EMC試験においてもそのアプローチは増えてくる事が予想されます。市場への製品リリース迄のリードタイムを考えると、それらを如何にスムーズに出来るか、試験・認証機関に求められる役割は何であるかを意識しながら、これからもお客様をサポートしてまいりたいと考えます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

安全要求 対応すべき危険源(例)
機械的安全性 電源故障、起動・再起動、形状、強度・耐久性、 振動、騒音、動的・静的不安定、可動部との接触
電気的安全性 過充電、感電、漏れ電流、高温、火災
肉体的/精神的ストレス及び姿勢 緊張による苦痛、連続使用、疲労、不快な使用 や姿勢
EMC 電磁妨害、電磁感受性
機能安全 停止機能、速度制御、環境検知、異常検出
情報の提供 取扱説明書、注意喚起表示