EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

消費者庁 消費者安全課 事故調査室長
尾﨑 真美子

平成30年の新春を迎え、謹んでお喜び申し上げます。

消費者安全調査委員会(以下「調査委員会」といいます。)は、昨年10月に設立から5年が経過しました。この調査委員会は、「事故から教訓を得て、繰り返さない」を常に念頭に置きつつ、生命身体被害に係る消費者事故の原因を究明し、再発・拡大の防止につなげることを目的とし、これまで、11事案についての報告書等を公表し、関係行政機関に対し、事故の再発防止に向けた意見を出しています。

以下では、昨年公表した調査報告書のうち、「玩具による乳幼児の気道閉塞事故」について、内容をご紹介したいと思います。

調査委員会は、今回、どのような月年齢の子供が、どのような玩具を誤嚥しているかについての情報を幅広く入手するため、保護者等へのアンケート調査を行いました。アンケートからは、6ヶ月から1歳6ヶ月未満で玩具の誤嚥事故が多く発生していること、大きさは、6mmから20mmが多いことが見て取れました。こうした情報を基に、何らかの事情により乳幼児の口に入った玩具がどのように気道を閉塞して、窒息に至るのか、またどのような玩具が窒息のリスクが大きいのか、更には、窒息を防ぐため、玩具にできる工夫はないか、という観点から、コンピューター上で気道閉塞シミュレーション及び気流シミュレーションを行いました。気道閉塞シミュレーションには、Swallow Vision® を用いました。このSwallow Vision® は、嚥下と誤嚥のメカニズム解明のために開発された嚥下シミュレーターです。

今回は、9ヶ月の健常な男児のCT画像や造影画像を用いて嚥下運動をモデル化し、玩具の形状や大きさを変更した気道閉塞シミュレーションを48件実施しました。この結果、球形、半球形、楕円体、直方体、立方体、ブロック玩具において、気道を閉塞し、窒息のリスクが大きいことが分かりました。また、一見大きさや形状からは、のどの閉塞が発生するとは考えにくい玩具が、離乳食や唾液など粘度の高い液体等と入り混じって、窒息が発生する恐れがあることもシミュレーションの結果として示されました。

次に、気流シミュレーションを行い、球形の玩具に中心位置でつながるように多方向に穴を開けて、複数の流路を作っておくことよって空気が通ることも示され、これについては、玩具を製造する際の工夫として活用されることが期待されます。

このように、実際の事故の情報を用いてシミュレーションを行うことによって、新たな知見を得ることができ、こうした知見が広まることによって、事故の再発防止につながるという循環を作り出せるような活動を引き続き行ってまいります。

その他、昨年3月以降、調査委員会の新たな試みとして、従来の調査報告書よりも短いレポートの公表を始めました。このレポートは、消費者安全調査委員会への申出を端緒として収集した情報のうち、消費者安全確保の見地から、有益な情報をまとめたものです。

調査委員会では、不幸にも起きてしまった事故の調査分析によって、最終的には、幅広い事故の防止に応用できる普遍性のある知見を引き出し、更に、それを社会で共有することが必要だと考えています。

このためには、調査委員会の審議状況や報告書について多くの方々にご覧頂きたいと思います。調査委員会の活動は、ホームページで公表していますので、是非御参照ください。
http://www.caa.go.jp/csic/index.html

最後となりますが、読者の皆様の御健勝を祈念いたしまして、新年の御挨拶とさせていただきます。