EMC最新動向2018-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
我が国の無線局数は2億1700万局を超えており、本格的なIoT(Internet of Things)時代の到来に伴い、電波を利用するシステムは、社会・経済基盤として益々重要な役割を果たすようになっています。あらゆる分野での電波利用が急速に進展する中で、電波を安心して安全に利用できる環境を維持しつつ、電波のより一層の利活用を図ることが重要となっています。本稿では、我が国の電波環境行政を担う立場から、最近の取組についてご紹介させていただきます。
1.国際的なEMCの取組について
国際無線障害特別委員会(CISPR)は無線障害の原因となる各種機器からの不要電波に関する許容値等に関する規格を策定しており、多くの国がその規格に基づき国内のEMC関連制度を策定しています。国内では、総務省電波環境課がCISPR国内委員会の事務局を務め、情報通信審議会の電波利用環境委員会(主査:多氣昌生 首都大学 東京大学院教授)及びその下の作業班を通じて、我が国としての対応を行っています。
このCISPRでの規格の策定に関し、我が国は、ISM機器等の分野及びマルチメディア機器の分野で幹事国を務めるなど、大きく貢献しております。特に、電気自動車用ワイヤレス電力伝送システムについては、我が国が世界に先行して制度化したEMC規格と調和する形で、現在、規格の改定作業が進んでおり、併せて、我が国で割り当てている79-90kHzの周波数帯が世界共通で特定されるよう、平成31年に開催される世界無線通信会議(WRC-19)に向けて取り組んでいます。
2.高周波利用設備の利用高度化
高周波電流を用いている設備については、漏洩する電波が空間に輻射され、その漏洩電波が無線局に妨害を与える可能性があることなどから、法令により高周波利用設備の制度が設けられています。IoTの進展により、高周波利用設備にも新たな設備や利用形態が出現しており、こうした時代の流れに即した制度の検討を進めていくことが重要だと考えています。
高周波利用設備の1つである広帯域電力線搬送通信設備(PLC)については、平成18年に屋内での利用を、平成25年に一部屋外での利用を制度化しており、また、実験は屋内外で可能となっています。近年、広帯域PLCの三相三線や屋外利用について技術開発や実験が進んできていることなどを踏まえ、昨年10月より、情報通信審議会電波利用環境委員会高速電力線搬送通信設備作業班において、広帯域PLCの利用高度化に係る技術的条件の検討が進められています。
3.第5世代移動通信(5G)等に対する人体防護のあり方に関する検討
2020年にサービスが開始される5Gをはじめとした新たな電波利用システムの導入に伴い、電波利用環境が大きく変化することが見込まれることから、電波防護指針やその適合性評価方法に関して、その変化に迅速に対応することが重要です。
総務省では、平成28年9月に、生体電磁環境に関する検討会(座長:大久保千代次 電磁界情報センター所長)の下に「先進的な無線システムに関するワーキンググループ」を設置し、新たな無線サービスで用いられる高い周波数帯の人体防護のあり方等について検討しています。本年3月末までに考え方の整理を行い、報告書を公表する予定です。
4.医療機関における安心・安全な電波利用の推進
医療機関においても医用テレメータや無線LAN、携帯電話など電波を利用する機器は増加し続けており、それとともに種々のトラブルも増加しています。このため、総務省では、医療機関において電波を安全に利用いただくための取組を進めています。
具体的には、厚生労働省と連携し、電波環境協議会医療機関における電波利用推進部会(座長:加納隆 滋慶医 療科学大学院大学教授)において、医用テレメータ、無線LANや携帯電話の利用に関するトラブル事例やその対応策についてまとめた「医療機関で安心・安全に電波を利用するための手引き」や、電波を安全に利用するための電波利用ルールのひな形を示した、医療機関における「電波の安全利用規程(例)」を作成し、周知啓発を推進しております。
また、地域に根ざした周知啓発活動を着実に展開するため、昨年9月に設立された11の地域協議会において、医療機関における電波利用のグッドプラクティスやヒヤリハット事例の収集、各地での説明会の開催などの取組が積極的に進められています。
このほか、昨年12月7日には、総務省/電波環境協議会共催による「医療機関における安心・安全な電波利活用促進シンポジウム」を開催し、約400名の参加者を得て、安心・安全な電波管理に向けた具体的アプローチについて議論を行ったところです。本年も、関係者の方々と密に連携し、周知啓発活動を拡充して参ります。
IoTの進展と共に電波利用が拡大し続ける中で、総務省としましては、皆様のご協力・ご理解を賜りながら、今後とも時代に即した電波利用環境の整備を推進して参ります。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。