1.医療機器(医用機器)のEMC試験とノイズ規格一覧・ノイズ対策
医療機器(医用機器)のEMC(電磁両立性)の国際規格としてはIEC 60601-1-2が制定されており、各国がこの規格をもとに採用し、運用している。他のEMC規格と異なり、性能判定基準や試験条件を決めるには、リスクマネジメントの構築が必要となる。試験項目としては下記のとおり、 エミッションはCISPR11およびIEC 61000-3-2, IEC61000-3-3が引用され、 イミュニティはIEC61000-4シリーズが引用される。
IEC60601-1-2を構成する主なEMC試験項目一覧 | |
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EMI試験(エミッション測定) | イミュニティ試験 |
伝導妨害波測定(電源) CISPR 11 |
静電気放電イミュニティ試験 IEC 61000-4-2
試験レベル:接触 +/-8kV, 気中 +/-15kV
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放射妨害波測定(電界・磁界)CISPR 11 |
製品によって測定周波数/許容値が異なる。 放射無線周波電磁界試験 IEC 61000-4-3
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電源高調波測定 IEC 61000-3-2
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電気的ファストトランジェント/バースト試験 IEC 61000-4-4 |
電圧変動・フリッカ測定 IEC 61000-3-3 | サージ試験 IEC 61000-4-5 |
伝導妨害試験 IEC 61000-4-6 | |
電源周波数磁界試験 IEC 61000-4-8 | |
電圧ディップ・瞬断試験 IEC 61000-4-11 | |
注:医療機器の特性に合わせて一部、車載機器を意図した試験規格、航空機を意図した試験規格等も記載されている。 |
特色として、電源ポート、信号入出力部ポートの他に、患者結合ポートが試験条件として規定されている。個別規格のIEC60601-2シリーズではEMC試験・ノイズ試験レベルや試験配置など固有の規定が制定されている。個別規定で分類される機器はこれらのシリーズの規格に合致してEMC試験・ノイズ試験を行う必要がある。
関連する全ての電極を刺激装置から0.4m以内の位置で0.9 %食塩水1 Lを満たしたファントムに接続して行う。
放射妨害波測定(電界・磁界)CISPR11 のグループとクラス分けは以下の一覧通りとなる。
使用される環境下および、機器の特性により分類され、それぞれ、適用される許容値が異なる。
グループ | クラス | ||
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グループ 1 | グループ 2 | クラス A | クラス B |
この規格の適用範囲内でグループ2装置として区分されない全ての装置を含む。 | 材料の処理、検査又は分析の目的で、電磁放射、誘導性結合及び/又は容量性結合の形で周波数範囲 9kHzから400GHz の無線周波数エネルギーを意図的に発生して使用、又は使用のみを行う全てのISM RF装置を含む | 家庭用の施設及び住居用に使用する目的の建造物に給電する低電圧電力系統に直接接続する施設以外の全ての施設での使用に適した装置。 | 家庭用の施設及び住居用に使用する目的の建造物に給電する低電圧電力系統に直接接続する施設での使用に適した装置。 |
RF電磁エネルギーを意図的に与えない医療機器も含む
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電気メスは治療中に高周波エネルギーを与えるのでグループ2に分類 |
在宅用医療機器、住宅地域にある診療所向け医療機器はクラスBの適用が望ましい。 |
イミュニティに関しては、試験条件や印加レベルが、きょう体ポート、交流・直流流入力電源ポート、患者結合ポート、信号入出力ポートで規定されている。他の製品群規格と比べ、最大の特色のひとつとして、製造業者は,リスクマネジメントに基づいて試験条件および、性能判定基準を設ける必要があることがあげられる。例えば、放射エミッション試験においては、最小分離距離を考慮する必要があり、使用環境下によって、次式によって、印加レベルが設定される。
2.リスクマネジメントについて
EMI試験(エミッション測定)においては、ME機器又はMEシステムはエミッションが最大となるモードで試験を行うが、動作モード(アクティブモード)でのEMI試験(エミッション測定)に加えて、待機モード(スタンバイモード)での試験も考慮することが望ましい。 イミュニティ試験においては、受容できないリスクを最も生じさせそうなモード及び設定で試験で行いリスク分析、経験、工学的分析、予備試験等で決定する。
(著)日本品質保証機構